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超近接戦

突然行うことになったイータとの試合だったが難なく勝利することができた。ステージ上のグレンがおれに声をかける。


「君の温情も虚しくまさかあそこで反撃してくるとはな。」


おれはステージ上に落とした木刀を拾いながら頷く。


「うん、ちょっとびっくりしたよ。」


「まぁそう考えると、受験資格の剥奪は、その意味でも間違ってなかったのかもしれないな。何はともあれ、今回は協力ありがとう、助かったよ。これで彼も少し懲りてくれるといいんだけどね。」


「どうだろうね、まぁそんな素直な性格だったらこんなことになってない気もするけどね。」


おれが笑いながら言うと、グレンは違いない、と言って頷く。


「さぁ、次の試合もまた君の試合なんだけど、連戦大丈夫かい?順番を変えるくらいの配慮はできるけど。」


おれはかぶりを振るとグレンは頷き、次の試合を告げる。


「準決勝を始める。対戦相手はそれぞれステージへあがってくれ。」


おれはそのままステージで待っていると、スラリと長身で、その目が開いてるか開いてないかわからない細目の優男が現れる。その出で立ちは隙がありそうで隙がない。そして、相手は丸腰だった。おそらく武道家的なスタイルなのだろう。


「さっきの試合は見させてもらいました。流石グレイブ様に認められるだけのことはあります。どうかお手柔らかにお願いします。」


そう言って優男はおれに手を差し出すのでおれもその手を握り返す。


「ぼくはゼラス=アルフレッド、君とは長い付き合いになりそうですね。」


「ショウ=フレデリック。こちらこそ。」


得体の知れない奴だが、たしかに奴の言う通りここで戦った相手とは騎士になった時にいつか一緒に仕事をすることがあるかもしれない。そう考えると、この準決勝であたる相手とかであれば、長い付き合いになる可能性は大いにある。イータみたいなやつもいるがきっと転移前のコウみたいに、腐れ縁みたいなやつもでてくるだろう。そういえば、コウは今頃なにをやっているんだろうか。そんなことを考えて一瞬上の空になっていると、グレンから声がかかる。


「ショウくん、始めるけどいいかな?」


おれは慌てて答える。


「あ、あぁ、ごめん!うん、はじめよう!」


おれの返事を確認すると頷き、グレンは開始を告げた。


「それでは準決勝、はじめ!」


グレンの開始の合図と同時にゼラスの全身が青白く輝くのが見える。もしや、こいつ身体強化タイプか。


そう思ったと同時におれの目の前に現れ牽制の突きを入れてくる。うん、速い。おれはその突きを横に躱すが、そのままゼラスはおれの避けた方向に肘打ちをで追い討ちをかける。おれがさっきイータにやったことと同じで、おれに剣の間合いを取らせないつもりだろう。


おれはバックステップを踏みながらゼラスに向かって剣を振るい距離を取ろうとするがそれを掻い潜りながらゼラスはまたおれとの間合いを詰め、攻められ続ける。お互い攻撃が当たらない決め手にかける試合であるが高速で動いているため、何をしているか見えないやつらには見えないだろう。でもだんだん目が慣れてきた。


「フッ!」


おれはゼラスの踏み込みに合わせ、さらにもう一歩近づき、カウンター気味に木刀を振るう。ゼラスはこの間合いからさらに近づかれて剣を振るわれるとは思っていなかったようで、一瞬反応が遅れてバランスを崩す。


実はおれのこの攻撃にはカラクリがあった。ゼラスの読み通り、本来この間合いではおれは攻撃ができない。しかし、木刀を短く持つことでおれは間合いを狭め、そして攻撃をすることができた。今度はおれから攻撃を仕掛ける番だ。


本当はアキラとの試合まで短刀での戦いは見せたくなかったが、あいつとの試合は二刀流だ。これくらいは見られても問題ないだろう。


これでお互いの間合いがほぼ同じになった。今までは剣を振るタイミングがなかったが、剣の長さがこの長さならこの超近距離でも十分攻撃ができる。今まではおれが攻撃できていなかったから向こうも好きに攻めることができたが、それができなくなった分、ゼラスからの攻撃は少なくなっていた。そして、少しずつだがおれの攻撃がゼラスをかすめ始める。


おれの攻撃がゼラスの脇腹をかすめ、よろめいた瞬間、おれは好機と判断し、剣を瞬時に元の長さに持ち替え、ゼラスに向かって振り下ろそうと思ったとき、おれは背筋に寒気が走り本能的に後ろに飛び退いた。するとおれの頭があった辺りに超高速の突きが繰り出されていた。


「よく避けましたね。」


そう言うゼラスを見ると先ほどの青白い光を更に強く光らせ、そこに立っていた。おれがディーナに教えてもらったように、どうやらゼラスも身体強化にいくつかの段階があるようだ。


そして、その状態のままゼラスは地面を蹴っておれに怒涛のラッシュを浴びせる。おれはなんとか致命傷を躱しながら攻撃を受け流しているが、正直攻撃を躱すことしかできない。今後のことを考えると、あまり使いたくないが、おれも強化魔法を使って対抗しないと負けるかもしれない。そんなことを考えてながら避けていると、いつのまにかおれはステージの外周部に追い込まれていた。


やばい、逃げ場がなくなった。


そう思った瞬間ゼラスの躱しようがない蹴りがおれに放たれる。咄嗟におれは木刀で受けるとその衝撃で木刀は折れ、さらにステージの外に吹き飛ばされた。木刀は折れてしまったが、この一撃をまともに食らっていたらおそらく試合継続は不可能だっただろう。やむを得まい。


「危なかった。」


おれは立ち上がり、ステージの下からゼラスの方を見上げる。さて、どうやって武器無しでゼラスと戦おうか、そう考えていたところ、


「うん、ぼくの負けですね。」


ゼラスの言葉におれは耳を疑う。しかし、改めてゼラスを見ると先ほどまでの強化魔法の光は無くなっていた。そう、魔素切れである。状況を理解したグレンは勝者を告げる。


「勝者、ショウ!」


おれは再びステージに戻ると、ゼラスが近づきおれの前に手を差し出す。準決勝に相応しい試合だったのだろう、観客席から拍手があがっている。


「久しぶりにワクワクする試合でした、またやりましょう。」


おれは手を握り答える。


「あぁ、純粋な体術で同世代の人に追い詰められるとは思わなかったよ。」


まぁ本当は身体強化の分でようやくイーブンになっているがそれは言う必要のないことだろう。


こうして、準決勝を勝ち進むことができたおれに残るのはアキラとの決勝戦だけとなった。

まさかショウと同じ身体強化をしてくる相手がいるたは思いもしませんでしたね。でも、ここまで相手が魔法を使えるのであれば、ショウも使っても良かったんじゃないかと思われる方もいるかもしれませんが、年齢的なものからするとやっぱりショウはちょっと異常、と言うことにさせてください。そしていよいよ次回は決勝戦。果たして、アキラに勝つことはできるのか!?

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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