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次元神、再び

アリスに案内され修行の場所にたどり着いた。その扉を一歩踏み込むと体をギュッと締め付けられる感覚がして一瞬息を呑む。どうやら、ここはかなり魔素が高いらしい。そして、おれが部屋に入ると同時に五芒星の頂点にいる老婆がハッと何かに驚くように顔をあげ、こちらを見る。


「何者じゃ?」


「初めまして、今回ここで修行するショウと言います。どうぞよろしくお願いします。」


老婆はおれの全身を舐め回すように見る。それを心配したアリスが今回の事の経緯を説明する。


「うむ、お嬢様の頼みであればこの婆、断る理由は何一つありません。ただ、あやつ、ご注意下され。何か不思議な気配を感じますじゃ。」


本人を目の前にして注意しろってなかなか失礼な話だ。まぁでも世話になる身だ、気にしたらだめだ。


「うん、ありがとう。注意するわ。」


「うむ、では時間も惜しいですし早速始めますじゃ。」


こうして、おれの修行は始まった。


おれとタリスが五芒星の中心に座るよう促されたので向かい合ってあぐらをかいて座り込む。


「まずはショウ殿から先に、その後にタリス殿に精神世界に入ってもらいますじゃ。よいかな?」


おれとタリスはコクリと頷く。


「では参りますじゃ!」


老婆が五芒星の頂点に戻り、座ると手につけた数珠をじゃらじゃらと揉みながら何やら呪文を詠唱している。すると、淡く光っていた五芒星の線の光が徐々に強くなる。そして、次の瞬間、おれたちのいる五芒星の中心部が光り輝き、おれの周りをその光が包み込むとそのまま意識を失った。


◇◇


目を閉じている自分に気がつき、ゆっくりと目を開けると周りの眩しさに目を細める。次第に目が慣れてきて目を開くと、そこは真っ白で何もない世界だった。こんな中に一人でいたら絶対おかしくなりそうだったが、目の前にはグリズリーに襲われて殺されかけた時に出会った銀髪少女が立っていた。相変わらず髪を含め真っ白な全身の中と、その赤い目が印象的だった。


「久しぶりじゃの。まさかこんなに早くまた会えるとは思いもしなかったぞ。」


おれは一瞬何が起きたかわからなかった。


「え、なんでおれの精神世界にいるんだ?」


「逆だぞ、精神世界だから会えるんだ。」


そうか、前回も会ったのは気を失った時だったか。


「あぁ、そうか、ディーナ。会いたかった。」


「そいえばあの小僧からワシの名前を聞いていたんだったな。まぁそんなことはいい。わしの可愛さに惹かれたか。よしよし、この豊満なボディで癒してやろう。」


ディーナは両手を広げおれを迎え入れようとする。


「いや、違う。残念ながらおれは老婆を抱く趣味はない。前回のお礼を言いたかったんだ。お陰で不完全だが魔法も使えるし少しだけかもしれないがあの時よりも強くなれた。」


ディーナは両手を広げて何言ってんだか、といったポーズをとりながらいった。


「お前、この心と体のギャップの良さがわからないなんてまだまだ子供だな。まぁいい、せっかくこの世界にいるんだ、お前にはもっと強くなってもらわないといけないからな。ワシが剣術とは何かをその身で教えてやるぞ。」


「お、ほんとか?それは嬉しい。教えてくれるついでに一個頼みたいんだが、この体、魔法がちゃんと使えるようには戻らないのか?魔道がグチャグチャらしいんだが。」


ディーナは手をポンと叩きながら言う。


「あぁ、そのことか。その節はすまんかったな。ワシの力があればお安い御用じゃ。」


「お、ほんとか!?んじゃ今すぐやってほしい!」


「それがな、残念ながらそれは無理なんじゃ。なんてったって今は精神世界だからのぅ。精神面の干渉はできても肉体面の干渉は無理じゃ。」


「そっか、残念。」


おれががっくり肩を落としていると、ディーナはポンポンとおれの肩を叩く。


「うむ、だから、ワシに会いに来いと言っておるのじゃ。まぁ今のお前の実力では近づくこともできんがな。」


「え、ディーナって肉体があるの?どこに行ったらいい?すぐには無理かもしれないけど、絶対いくよ。」


「ワシがいるのは北の大地のどこかじゃ、魔物どもに幽閉されておるから詳しい場所はわからん。」


「え、それって魔物からディーナを救い出すってこと?」


「そうじゃ、簡単だろ?」


うーん、どう考えても簡単なわけがない。北の大地って魔物の本拠地だよな。しかもこいつを幽閉できるってとんでもない実力だろ。でも、魔法はロマンだ。やっぱりちゃんと使えるようになりたい。


「全然簡単には行かなさそうだけど、でもがんばるよ。」


「ふむ、まぁ良しとしよう。じゃあ、そろそろお前の父親が来そうだ。お前の体、しばらく借りるぞ。ワシが動くイメージをしっかりとその意識に叩き込むんじゃ。」


ディーナはそう言うとおれの体に突撃してくるかのように近づいてくるとそのまますっとおれの体の中に入っていった。そしてその数秒後、目の前にうっすらと人の輪郭ができたと思うと、そのままタリスが出来上がっていく。すると、頭の中でさっきの老婆の声が響く。


(この場所では自分の思ってることが何でもできる。武器も出せるし普段使えない魔法も使える。自分のできると思っている限界を超えることができるのがこの精神世界の修行の最も効果の大きな点じゃ。そして父親の方は本人が思っている以上のことが起こるようにしてある。この父親に勝てれば相当なものじゃろう。)


そうか、人は知らない間に本来出来ることすらできないと思い込んでしまう。その殻をやぶる、ということだな。


先ほどの老婆の声がしなくなったと思ったら、次はディーナの声がする。


(まぁまずはお前の力で父親と戦ってみろ。そうしないとワシの偉大さがわからんからな。)


ふん、言ってろ、ディーナの力を借りなくてもタリスを圧倒してやる、そんなことを思っているとタリスから声がかかる。


「さぁ、んじゃ始めるか。お前とこうして打ち合うのも久しぶりだな。」


そう言うと、タリスは自分の手に突然木刀を生み出す。そうか、イメージの世界だからそんなことができるんだ。おれも同じように木刀をイメージしてみる。


ん?出てこないけど。イメージが足りない?なんなんだ?おれがよくわからず首を傾げていると


「重さ、長さ、色、様々なものをちゃんとイメージするんだ。そこにあると思えば、そこに出てくる。」


そうは言われてもなぁ、イメージしてるんだが。そう思いながら悩んでいるとディーナがおれの頭の中で笑っている。


(やれやれ、まずはここからか。よく感じるんだぞ。)


木刀があたかもそこにあるかのように、手の感触や重さ、雰囲気をイメージすると、そこに木刀が現れた。


「お、さすがおれの子だな、おれはここで木刀を出すことすら苦労したからな。」


なるほど、タリスはここで修行をしたことがあるからできたのか。まぁさすがと言われてもおれは何もしていないんだが。


「へへ、まぁこんなもんだよ。ってゆかお父さんもここにきたことあるんだね。」


おれは誤魔化しながら木刀を構える。


「おう、まぁそんなとこだ。よし、んじゃやるか。」


「うん!」


こうして、おれとタリスの何年かぶりの打ち合いが始まった。

この物語の中でもチートNo.1の次元神がでてきましたね。そして幽閉されてるとか、謎すぎますがこの辺りは追々出てきますのでそれまでもう少しお時間ください。でも、この子の力を借りれば、相当強くなれそうな気がします。

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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