試験通過報告
一次試験が終わっておれはアイルの店に着くと、見慣れた顔がエールを仰いでいるのが見えた。
「ラキカさん、一次試験、無事通過してきました。」
おれがそう言うと、ラキカはこっちを向いて声の主がおれだと気がつく。
「おぉ、お前だったか。そうかそうか、まぁそりゃそうだろうな。まぁ色々話を聞きたいが、まずは荷物を置いてこいよ、適当に好きそうな食い物頼んでおいてやるから。」
おれはラキカに一礼し、荷物を置いてすぐさま戻ってきた。すると、いくつかの料理はすぐに運ばれており、食事をしながらキメラとの戦いのこと、アリスとの出会いとのことについて話をした。
「ほぉ、あのアリス嬢ちゃんとあったのか。」
もしかしたらラキカはアリスのことを知っているかもしれないと思っていたが、やっぱりか。
「はい、出会い方は最悪でしたけど、魔法を使う彼女はかっこよかったです。それに、やっぱりお姫様は色々苦労してそうだなって感じました。」
おれがそう言うと、ラキカは机を叩いて大笑いする。
「ガハハハハ!あぁ、アリス嬢ちゃんが苦労人か、まぁたしかにそうかもな、でも歳下のお前からそんなこと言われてるとは微塵にも思ってないだろうな!」
おれはラキカの笑いっぷりをさらりと流しながら聞きたいことを聞く。
「ところでラキカさんはなんでアリスのことを知ってるんですか?」
「あぁそのことか。まぁ色々あってな、顔馴染みなんだ。ちょうどいいや、お前がこの騎士選抜試験に合格できたら、褒美に色々教えてやるよ。だからそのときのお楽しみだ。」
「そうですか、わかりました。色々って、お父さんのこととかも?」
「お、流石に鋭いな。あぁそうだな。そこも話してやらないといけないかもしれないな。」
ふぅーん、と言いながらおれはこれまで垣間見えたいろんな話から話の内容を予測する。きっとタリス、ラキカの2人はこの王宮にかなり関わりのある人間なんだろうと思う。何はともあれ、これでまた一つ試験に向けた楽しみができた。なんとか優勝して、次のステップに進みたいところだ。
◇◇
そのころ、テペ村ではタリスとマーナがアーガンス城に向けて出かけるための準備を急いでいた。
「そんなに慌てなくてもショウは逃げたりしないから大丈夫だよ、マーナ。」
そわそわと落ち着かないマーナに向けてタリスは声をかける。マーナがここまで落ち着かないのは珍しい。
ガシャン
今も洗っていた食器を思わず落としてしまい、あわや割ってしまうところだった。
「だって、久しぶりに会うんだもの、あなたは楽しみじゃないの?」
そう聞かれたタリスは頭の後ろをかきながら答える。
「そりゃまぁ楽しみに決まってるだろ、約3年ぶりだぞ?どれだけ大きくなってるんだか。それに、お師匠に修行つけてもらってるんだぞ?どれだけ強くなってるのか、今から楽しみでしょうがないよ。」
そう、ラキカはおれの一次試験の合格を予想しており、事前に2人におれの2次試験を見にくるように伝えていたのだ。
「それにしても、よく王宮に行く気になったな。あんなに嫌がっていたのに。」
タリスはいつものダイニングテーブルに座りながら洗い物をしてるマーナに声をかける。
「だって、そんなことより私はショウの活躍を目にしたいもの。それに、ほんの数日滞在するだけよ、私だと気がつかないわよ、きっと。」
「あぁ、そうだな、今回の主役はショウだからな。おれたちはただの見物人だ、誰も気がつくわけはないだろう。それに、あれから15年も経つ。おれらの顔を覚えてる人もそこまで多くはないだろう。」
マーナはエプロンで手を拭きながらタリスの元へ向かう。
「それに、いつかはショウにも真実を話さないといけないわ。そう考えると、いつまでも過去から逃げててはだめだと思うの。」
「あぁ、そうだな、ショウが騎士になったら遅かれ早かれ真実に辿り着くだろう。その前におれたちから直接伝えてやらないとな。大丈夫だ、何があっても、おれがお前を守ってやる。あの時と同じようにな。」
タリスはそう言いながらマーナの手を優しく両手で包み込むと、マーナも何かを決意したようにコクリと頷いた。
こうして、その日の翌日、2人は15年ぶりのアーガンスへ向かうのであった。
すみません、文字数のバランスがちょっと悪く、短い感じになってしまいました。なので、二話投稿させて頂きます。
さて、物語はいよいよ、ショウにこれまで明かされなったタリスやマーナ、ラキカのことが明らかになりそうですね。でも、その前にまずは二次試験編です。
次回からは第4章王宮騎士選抜二次試験編です。二次試験はトーナメント形式の大会です。果たして、どんな強者がいるのか!?皆様、乞うご期待下さい。