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強気な彼女の実力

仮拠点のテントに戻ると、せっかくだからと思いおれは取ってきた鶏肉を振る舞う。どうやら、手持ちの保存食で食いつなぐ予定だったようで、おれが昨日作った保存用の鶏肉を渡すと大喜びで食べていた。ぱっと見、アリスの方が歳上に見えるがこれではどちらが歳上かわかったもんではない。


「美味しい?」


あまりにも一生懸命食べているので思わず聞いてみると


「うーん、イマイチね。」


にゃろめ。


「なら返して。」


「断るわ。だって、私の食べかけをエロガキのあんたに渡すなんて気持ち悪いもの。」


つくづく頭にくる言い方をする少女である。まぁでもしょうがない。これも今日一日の我慢だ。おれはそう言い聞かせ、アリスの言った言葉をさらりと受け流す。


「そういえば、アリスは今日どの辺りを探る予定だったの?」


「あぁ、私?特に決めてなかったけど、あんたは決めてないの?」


「今日はもう少し上に登ってみようかと思ってる。」


「分かればよろしい。うん、じゃあとりあえず登ってみよっか。」


こうしておれたちはこの拠点を中心に今日はもう少し山を登ってみることにした。


◇◇


食事を終え、準備を終えたおれたちは早速山を登り始めた。おれが草木を掻き分けながら前を歩き、アリスが後ろについてくる。しばらく森を掻き分けながら山を登り続ける。


「ちょ、ちょっと待ってよ、あんた歩くの早すぎよ!そんなに急がなくても周りは追いかけてこれないわよ。」


ん?おれは特に急いでる気はないしむしろ草を丁寧に分けすぎて遅いと思ってるぐらいだったのだが。後ろを振り返るとアリスが遅れて肩で息をしながらついてくる。そうか、おれは小さい頃からタリスやラキカと一緒に森を駆け回ってたから、その辺の子供よりも圧倒的に体力があるし、歩くのも早いんだな。


「あ、ごめん!ついついアリスに良いところ見せたいなって思って頑張っちゃった!」


おれは適当に言ったが、それを聞いたアリスは満更でもなさそうだ。


「ふ、ふん!ちょっと森をしっかり歩けるからって良い気にならないことね!」


照れ隠しに腕を組んでプイッと顔を背ける仕草が面白い。もしやこいつ、ツンデレか!そんなことを思っているとガサゴソと草の間から魔物が現れる。トラのようなネコ科の形をしているが色が青く、どう考えても自然の生き物ではない。


「ガルルルルル。」


唸り声をあげて近づいてくるトラもどきは、アリスに向かって跳躍をする。しまった、距離をあけすぎた!そう思ったがどうやら心配はいらないようだ。


アリスはクルリと身を翻しトラもどきの引っ掻きを躱すと躱した勢いで剣を抜きながらトラもどきの目元を斬りつける。


「ガウゥー!」


致命傷には至らないが一撃で大きなアドバンテージを得た。おれも加勢しようと一歩踏み込んだそのとき、今度はおれの真横の草むらから他のトラもどきが飛びかかってくる。咄嗟に噛み付こうとする牙を剣で抑えたから弾き飛ばされただけですんでいたが、あと少し遅かったら危なかった。


おれは弾き飛ばされた勢いで飛びついてきたトラもどきと草むらに揉みくちゃになりながら転がり、起き上がると正面に対峙する。


「ショウ、大丈夫?」


アリスはおれのことを心配してくれているらしい。うん、チーム戦って感じでいいな。


「うん、こっちは平気!1人1匹ずつ行こう!」


おれはそういうとトラもどきとジリジリ距離を詰めながら攻めの機会を伺っていた。すると向こうがシビレを切らしてくれたおかげで、飛びかかってくるときに大きな隙ができた。


「ここだ!」


おれは飛びかかってくるトラもどきの腕を目掛けて一閃する。するとザクッと鈍い音ともに前脚を斬り落とした。そして着地でバランスを崩したところに剣を奥深くまで胴を一突きすると、トラもどきはその場に魔石を残し消滅した。


その頃、アリスは目の見えないトラもどき相手に善戦していた。深い傷を負わすことはできていなかったが、着実にトラもどきの体力を削り、最後に、アリスに噛み付こうとしたその口に、勢いを利用して剣を突き立てると、こいつも同様に魔石を残して消滅していった。


「ふぅー、やっぱり魔法使えないと苦しいわね。」


アリスはその場に座り込みながら一息ついていた。


「あぁ、やっぱり普段は魔法がメインなんだね。あれだけの威力があればたしかに戦い方が変わるよね。」


「えぇ、やっぱり私の力だと決定打にかけるの。それにしても、あんたの剣戟は、」


そこまで言うとアリスは言葉を止め、次に大声で叫んでいた。


「ショウ、伏せて!」


おれもその声と同時に背後から迫り来る風を切る音と気配に気がつきそのまま地面にひれ伏する。すると、おれの背中をその鉤爪が掠め、そのまま上空を通り過ぎていく。


「こんなタイミングできて欲しくなかったわね。タイミングを読まない男は嫌われるわよ。」


アリスがそう言った目線の先には大きく羽を広げたハチドリのような魔物、アーガンスキメラが羽ばたいていた。

アリスは魔法だけではなく、剣も使える魔法戦士的なスタイルみたいですね。そして、タイミング悪くやってくる目的の魔物。2人は倒すことができるのでしょうか?

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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