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水辺での遭遇

森に入ってから数時間、何度か魔物に襲われるが残念ながら目的のキメラとは遭遇できなかった。山を登るにつれて鉢合わせる受験者の数も減ってきていて、それに反比例して魔物との遭遇が増えてきていた。


ザクっ


今も飛びかかってくる大きなネズミのような魔物を横薙ぎに一閃しては念のため魔石を拾いながら剣についた血糊を近くの葉っぱで拭き落とす。


「あぁあー、だんだん魔物の数が多くなってきたなー、それでもキメラがでてこないってことはこの辺にはいないのかもな。」


この道中、たまに出てくるウサギや鳥を見つけては非常食用にと狩って血抜きをしておく。


更に登り続けること少し、一休みしようと少し開けたところに出ると、知らない間にだいぶ高いところまで登ってきたようで、先ほどまでいた城が山の麓に見える。その高い位置から見える景色はおれがこちらの世界で見たことのない世界で、なんとも気分がよかった。そしておれは決める。


「よし、ここらを拠点にしばらく探索してみるか。」


こうしておれは、早速道具袋から簡易テントを取り出した。なんとこのテント、ラキカから譲り受けたもので、所謂マジックアイテムというやつでこの中にいれば魔物はおれのことを検知できないらしく、襲われることがないらしいのだ。そして火を起こすと先ほど狩った鳥とウサギを燻製にした。今回も、ちゃんと塩は持ってきており、約1ヶ月ぶりに食べる野生の味はなんとも懐かしい味がした。


そして、そんな匂いに釣られて、何匹か魔物が現れる。大きな一つ目をしたクマや一丁前に武装したゴブリンなどが現れたが、難なく倒す。そして、最後に大きなカエルの魔物が現れる。ベロベロと伸びる舌や、ネバネバした表面が気持ち悪いから迂闊に触れなくてタチが悪い。おれの剣をその舌で絡め取ろうとするので無理やり剣を引っこ抜くと舌がバッサリ斬り落とされた。斬り落とした後もしばらく動いているから尚更気持ち悪い。まるでタコかイカの足のようだ。


しかし、おれはあることに気がつく。


「あれ、カエルがいるってことはこの辺、水辺がある?」


おれはそう思うとカエルを蹴りつけ、地面に転がすとその腹に剣を突き刺し、あっさりと倒す。そしてカエルがやってきた先へ歩みを早めた。


草木を掻き分けながら来た方向に向かって奥に奥にすすむと、やがて森に切れ目が見えてきた。お、ついに来たか!そう思っておれは森の切れ目に向かって走ると、そこには期待していた水源である川を見つけることができた。脈々と流れる川の水質は見た感じ綺麗に見えた。


おれは手元の水筒に水を汲み入れると、道具袋から解毒薬を取り出し、片手にもちながら水筒に汲んだ水を少し口に含む。口の中で転がしても特に痺れなどはないから、ゴクリと飲み干してみる。うん、大丈夫みたいだ。カエルくん、ありがとうよ。お陰で幸先良さそうだ!


そんなことを思っていると、さっきのカエルくんの家族だろうか、水の中からおれをめがけて口に含めた水を思いっきり吹き付けてくる。


「ウワッ!」


攻撃にも驚いたが、それ以上に驚いたというかショックだったのが、あのカエルの浸かった水を飲んだ、という点だ。うーん、今はそんなことを後悔しても仕方がない。とりあえず、目的を達成したおれは攻撃してきたカエルは無視してテントに戻ることにした。


幸い、水源とこのキャンプ地に決めた場所はそこまで離れていないため特に行き来に苦労するということはなかった。こうしておれが寝床と水源の確保を順調に済ませた頃には辺りが暗くなってきていた。


「まぁ今日のところはこんなところか、上出来だな。また明日からがんばろう。」


こうしておれは、焚き火を消すと簡易テントに入り眠りについた。


翌朝、おれはいつも通り日の出とともに目覚め、いつもの素振りをして少し体を温めると水を汲みに昨日見つけた川に向かう。昨日の経験を活かし、おれは森の木陰からカエルがいないか確認すると、カエルではない何かがいた。そう、人間だ。しかも、女の子だ。何より、上半身は隠してこそいるものの、その白に近い肩の下まで伸びた緩くウェーブのかかった金色の髪が背中全体こそ露わにしていなかったが、産まれたばかりの姿で、水に濡らした布で体を拭いていた。


「ウワッ!」


この川に来てからそんなことばっかり言ってる。そしてどうやら少女はおれのその声に気がついたらしく、


「誰!?」


とそのままの姿でこちらを振り返る。おれも黙ったままでは怪しすぎると思ったので顔を背けたまま素直に答える。


「ごめんなさい!水を汲みに来たらお姉さんが体を拭いてて、」


「見たのね、隠れてないででてらっしゃい!」


「いや、見えてないです。大丈夫です。」


そう言うとその一言がさらに癇に障ったのか


「見えないってどーゆーことよ。そんなに私の胸が小さくて見えないって言いたいの!?一回殺してやるわ!大人しくでてきなさい!」


いやいや、ちょっとお姉さん、そんなこと一言も言ってない。被害妄想も甚だしいと言うものである。そして流石におれ、元は30過ぎ。10代そこそこの女子に手なんてとても出せる気がしない。もちろん、そんなことは当の本人は当然知るわけがないんだが。


さらに、殺すと言って大人しく出て行くわけがない。そんなことを思っていたが、こっちを向いて怒鳴り散らしている彼女にカエルが気がついたようで、後ろで口に水を含んで喚き叫んでいる彼女を狙っているのが見える。


あ、これヤバイやつだ。


おれはそう咄嗟に判断すると本当は使いたくないが人の命を守るためと決断し全身強化の魔法を久し振りに使い、少女に飛びついて地面に押し倒す。


少女はいきなりおれから飛びつかれ最初は抵抗をしているがその直後に自分の目線の上を通って行く水流に気がつき青ざめる。


ふぅ、なんとか間に合った。おれは、そう安堵していたが、ふと、自分の手の位置に目がいく。


おれの片手は飛びついた勢いで倒した衝撃から頭を守るために少女の頭の後ろにあったが、もう片方の手は押し倒すために肩を押したつもりが、間違ってその成長途中の二つの頂の片方を見事に揉みしだいていたのだ。目と目が合うおれと少女。そこにあるのは感謝と尊敬が混ざる眼差しではなく、軽蔑と殺気が篭った鋭い目だった。


これ、今度はおれがやばいやつだ。


そう思ったのも束の間、次の瞬間、森に響き渡るんじゃないかというくらいの綺麗な平手打ちの音が森にこだまし、おれは少し離れた木に打ち付けられていた。

幸先良いスタート、と思ったら悲惨な目にあったショウ。


ただ、ただ、ようやく描きたかったヒロインが出てきました!これまで同世代のキャラがいなかったのでショウも心細かったと思います。今まではむさ苦しい世界でしたが、ここからはちょっと華やかになる、はずです。(笑)

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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