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罪の代償

おれの暗殺が企てられたその日の夜、しっかり食事もしておれが寝た後に、ラキカはカイルに一声をかけてでていく。


「ちょっと野暮用すませてくるわ。」


カイルはコクリと頷くとラキカを見送った。


ラキカの向かった先は王宮。夜遅い時間に普通は入れてもらえないはずにもかかわらず、ラキカは門番に挨拶をすると中に入っていく。


ラキカはまるで我が家のように目的地までの道を迷うことなく進んでいく。しばらくすると、地下の松明の灯りが揺らめくカビ臭い匂いの牢獄に到着する。そこには、鎖で繋がれたら先ほどの暗殺者の二人の姿が。


「さぁて、ここなら邪魔はこないし、思う存分聞き出せるな。」


それからしばらくの間、悲鳴と断罪の声が響いていたが、ほどなくして再び夜の静けさが城に戻った。


◇◇


翌朝、珍しくラキカはおれと一緒にカイルのところで朝食を取っていた。


「さぁ、いよいよだな。まずは予選だ。試験に絶対はない。ただ、無理はするな。お前にはまだまだチャンスがある。焦る必要はない、それくらいの気持ちで挑めば自ずと実力通りの結果がついてくるだろう。」


「はい、ありがとうございます。これまでの修行の成果をしっかりだせるよう、悔いのないように頑張ってきます。」


ラキカたちに見送られ、そして選抜試験会場の集合場所である王宮内のコロシアムに着くと、人集りができており、その中心には一枚の立て札が立てられていた。


イータ=ギリオスは失格、並びに今後選抜試験の受験を認めない。


その立て札の前で呆然と立ち尽くす1人の青年。


「そんなばかな。」


彼の周りに一緒にいた友人らしい人物が彼を見つめ、必死に慰めの言葉を探している。


「きっと何かの勘違いだ、大丈夫だよ。監督官の人が来たら聞いてみようよ。」


そしてしばらくすると試験官のグレンがやってくるのを見つけるとイータはグレンに向かって走りだし、必死に何かを言っているが残念ながら少し距離があって聞こえない。ただ、どうやらイータの主張は却下されたようで、必死にグレンの腕を掴んで食い止めようとするイータが他の兵士に引き剥がされ、そして連れていかれた。その最後に、ふとおれの方を見ていた気がする。


グレンはコロシアムの中央にくると、何事もなかったように試験の説明を始める。前回の説明会のことを繰り返し説明しながら、最後に、とここにいる全員が今最も気になってることを話し始める。


「イータについてだが、彼は王宮騎士としてあるまじき行為を行ったため永久に試験を受ける権利を剥奪した。彼のことはおれも少し知っているが少なくとも剣術においては優秀な騎士になる可能性があった人物だ。こんな形で優秀な人物を失うのは惜しいが一つだけ覚えておいてくれ。どんなに剣術が優れていてもその行いを間違えれば騎士の道からは外れてしまうということを。」


やはりか。そう思いながらその言葉に、耳を傾ける。そう、イータは昨日おれを暗殺しようとした雇い主だ。本人が望んだわけではないかもしれないが、彼の親族が絡んでいることは間違いないだろう。きっと今回の試験で優勝候補の1人だったのだろうが、おれがでてきて邪魔になったから親族の誰かがおれを消そうとしたのだろう。さっきのあの様子だと、本人が知らないところで動いていたのかもしれない。もしそうであれば彼は被害者だ。ただ、こればっかりは気の毒だがどうしようもない。


「説明はこれで終わりだ。さぁ、それじゃあ試験の森へ行くぞ!」


こうして一悶着あったが、選抜試験はスタートした。


◇◇


コロシアムからでて城の中庭を通ると、そこには城の裏門があった。裏門を出た先は山の斜面に沿って鬱蒼と森が生い茂っていた。アーガンス城はこの山を背にすることで地の利を活かして王国と呼ばれるまで成長することができたのである。


「1週間後の日没までにここにアーガンスキメラの魔石を持ってこれたら一次試験は合格だ。それでは健闘を祈る!それでは、はじめ!」


蜘蛛の子が散るように、森に200人近い騎士候補者がなだれ込んで行った。


ある者は我先にと走り、ある者は周りの様子を見ながら森の奥へと進んでいく。おれは特に行く宛があるわけでもなかったからとりあえず森の奥へと続く道を歩いて進んでいた。


「まず始めは、水の確保だよな。」


そう、長くて1週間の狩りになるのである。短期決戦で水、食料は持ち込んでなんとかすることも考えたが、キメラに会えるかどうかは運の要素が強いと考え、おれは長期戦を決めた。おそらく、最初に走って行った奴らは短期決戦を狙っているのだろう。


だからおれは初日の目標は水の確保だと決めていた。そのためにも、まずは山を上に登ることにした。上に登れば、綺麗な水にありつける可能性が高いし、下に流れる水源を見つけやすいためだ。


「さぁてそれじゃあ、がんばりますか!」


おれは自分に言い聞かすように言って森の間を抜けて山を登り始めた。

イータは、悪いことをするとバチが当たるってやつですね。そしていよいよ試験が始まりました。

そしてラキカはこの森での試験を見越して、森で修行をさせていたのですね。どこまでもできる師匠ですね、ラキカ。

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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