表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/129

ギルド登録と言えば?

アイルの世話になることになったこの日の夜、アイルたちの仕事が終わると、仕事終わりだと言うのにあれやこれやとアイルはおれが借りる部屋やトイレの位置、お風呂の入り方など教えてくれた。流石に街中のため、各家にトイレやお風呂をがあるわけではなく、隣接する何軒かで1つの公共施設を共有しているようだった。


早速明日はたまたまアイルの日中の仕事が特にないらしく、ギルドの登録や買い物ついでに街の案内に付き合ってくれるらしい。先払いされると何を言われても断れなくなるから怖いがきっとそれもアイルの狙いだろう。


ラキカはあの日の夜、どこかに宿を取ると言って店を出ようとしたときに、思い出したように最後におれに金を渡すと


「金に多少の余裕はある。アイルに手伝ってもらってこの街に相応しい身なりにしてもらえ。」


とだけ言い残し、夜の街中に消えていった。


翌朝、おれはアイルと街中を歩いていた。アイルはこの界隈ではちょっとした有名人のようで


「お、今日も仕事かい?」


とか、


「可愛い彼氏連れてんな!」


とか言われながら、道中でいろんな人に声をかけられていた。そして30分ほど歩くと目的地の街のメイン通りの一本奥にある冒険者ギルドに着く。二階建ての建物は流石王国の城下町にあるギルドなだけあって、豪華だった。ギルドの扉を開けるとクエストが貼ってある掲示板や受付嬢がいるカウンター、ちょっとした数人が立ちながらコーヒーを飲めるカフェなどがあり、人で溢れかえっていた。


アイルは人混みの中を掻き分け、おれを引き連れてカウンターにいる受付嬢のところにいくと


「この子のギルド登録をお願いします。」


といっておれを前に押し出した。


すると、周りにいたアイルのことを見ていたガラの悪そうな男がアイルに絡む。


「なぁ聞いたか、お前ら。こんな小さい坊主をギルド登録するんだとよ。なぁ嬢ちゃん、こんな小僧の相手をしてるくらいだったらおれらとどっかでパーっといかないかい?こんなヤツ、登録するだけ無駄ってもんだぜ。」


それを聞いた周りの取り巻き連中から、そうだそうだ!とヤジがあがりはじめる。


アイルは始め無視をしていたが、アイルのその態度に機嫌を悪くしたチンピラはアイルの肩を掴み無理矢理そっちに振り向かせる。


「おい、聞いてんのか。大丈夫だってあんまりタカくくってるとろくな目に遭わないぞ?」


アイルはフルフルと震えながらも応える。


「いえ、この子は騎士選抜試験にでるくらい強い子なのでそんなはずありません!」


「そんなイキがっちゃって、また可愛いねぇ、でも恐怖で震えてるよ?無理しちゃって。それにこの歳で選抜試験なんて、記念受験も良いとこだ。あのタリスでさえ合格したのが13歳だったのに。」


ちげえねぇ、といって周りがドッと笑う。


「この子はタリスさんの、」


そうアイルが言いかけたが、慌てておれは彼女の口を抑える。アイルは何が起きたか一瞬理解できず、驚いたようだがおれが顔を横に振っているのを見るとなんとなくおれの言いたいことを理解したようで、チンピラの顔を見かえし


「とにかく、この子は登録します。でも、今はやめました。また来ます。」


そう受付嬢に告げてその場を立ち去ろうとするとさっきのチンピラが再びアイルの肩を掴もうとしながら


「そんな簡単にこの場から立ち去れると思って、」


そう言いかけ、アイルの肩に触れようとした瞬間、


ドガッ


アイルはチンピラの手を掴み手前に引っ張るとそのままアイルは身を屈め、背中を使ってチンピラを投げ飛ばし地面に叩きつける。所謂背負い投げだ。ラキカの友達の子供っていうから、只者ではないんだろうなと思っていたが、やっぱりなんだかすごそうだ。


「兄者!」


そう言って駆けつけた下っ端はアイルに向かって腰にさしていた剣を抜き突きつける。


「お前、よくもやったな!」


流石三下、言うべきセリフをよく理解している。そして、さっきのアイルの動きからしてきっとこいつらなんかは余裕でなんとかできるだろうから、おれは後ろでこそこそしてればいいか、なんて思っていたら


「ショウくん、君の実力見せてあげて!」


えっ、ぼくですか。そんなことを思っていたらアイルはおれの背中をポンっと押し出し、三下くんの目の前に突き出される。


あぁあ、おれ、これで死んだらアイルのせいだな。ラキカに後で怒られてもしーらないっと。と思ったがラキカにそんなこと知れたら、「ガハハ、あいつ三下に殺されたか!」とか笑い飛ばされそうだ。イカンイカン、それはよくない。


色んなことを考えながらもおれはおれを目がけて突っ込んでくる三下くんの対処方法を考える。よし、決めた。


三下くんはおれに向かって斬りかかってくるが残念ながら遅すぎる。なんなく躱すと周りからどよめきが沸き起こる。


「子供だと思って甘く見てたけど、こいつはたしかにやばいな。」


「こいつ、化け物か。」


そんなどよめきを耳にしながら、おれはやつの攻撃を躱し続けるとようやく待っていた攻撃が来た。三下くんはおれに向かって突きを放って来たのだ。


おれはそのまま剣を紙一重で躱して懐に忍び込むと、三下くんの伸ばされた腕を掴んで引っ張りながらおれの腰で三下くんを持ち上げ投げ飛ばした。そう、アイルの真似をしたのだ。すると、残念ながらアイルほど綺麗に地面に叩きつけることはできなかったが、三下くんはそのまま地面に向かってダイブしていった。

うーん、まぁこんなところか。そう思っていたところ、アイルが近寄って来ておれの肩を掴みガシガシ揺らしながら騒ぎ始める。


「ショウくんすごいよ!一度見ただけで真似するなんて!」


そう騒いでいると、アイルに叩きつけられたチンピラとおれに投げ飛ばされた三下くんが起き上がり、こめかみがピクピクしてる。あぁあー、これ完全に怒らせたやつだ。そんなことを考えていると案の定、お怒りの様子で、チンピラ代表が叫ぶ。


「野郎ども、やっちまえ!」


さぁて、この数相手にさすがに素手ってわけではいかないよな、とか思いながら剣に手をかけようとすると、


「さっきからちょっとお痛が過ぎるんじゃないのかな、三下くんたち?」


窓際で外を見て知らんぷりしてた1人がそう言ってこちらに振り返ると真っ黒の髪に真っ黒い目をした青年がツカツカと揉め事の中心にやってくると、そこにいるおれ以外の全員が息を呑んだ。


「グレイブ副団長!」


アイルがそう叫ぶと、この状況でもゆらりと自然体な姿が妙に印象的だった。

大きな街にきたら恒例のギルド登録ですよねー、特にギルドがこの後しぼらくメインで出てくることはないのですが、身分証明書のようなものを作っておいた方が良いかなと思い、登録してみました。

それにしてもこのグレイブ副団長、一体何者でしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ