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エピローグ

ディーナはワーグナーを幼少期まで巻き戻すと気を失ってしまったが、最後のあの感じからするとこれが封印し、転生させるということなのだろう。コウとティナはおれたちの戦いが終わったことがわかると、おれたちの集まっているところにやってくる。


「終わった、な。」


「あぁ、これでしばらくはゆっくりできるのだろうか。」


「まだ戦いたい奴らは纏めて相手になってやるなの!」


どうやら、ティナにとっては結界の維持と外の魔物の相手はとるに足らない相手だったようだ。それでも、コウに言わせるとそれなりには大変だったらしいから、おそらくティナの感覚が異常なのだろう。そして、そうこうしている間にディーナが目を覚ます。


「あぁ、久し振りによく寝たのじゃ。お、全員集まっとるな。んじゃ、一度ここから戻ってそこでこいつを目覚めさせるとしようか。」


ディーナ曰わく、ワーグナーが目を覚ましたと同時に襲いかかってくる可能性があるためらしいがその時は4人で半殺しにするそうだ。そしておれたちはディーナのワームホールで次元の狭間に戻り、ワーグナーを起こすと、案の定、おれたちを敵と見なしたワーグナーが突然襲いかかってくるので、何とかして抑え込み、敵わないことを体に覚え込ませる。転生させたばかりだから、おそらく人間でいうところの新生児なのだろうが、その実力は転生前とそう変わらないから驚きである。しかし、勝てないことがわかると面白いことになぜかディーナのことを母親と見なしたらしい。しばらくすると、ディーナのことを母上とか呼んでいたが、ディーナも満更ではなさそうだった。


「まぁワシはこいつを魔族の王にするために育てながらどこかで生活するから、お主らも好きにするといい。」


あの実力者をディーナが育てたらそのうち手が着けられなくなるのではないかと心配だがそのあたりはディーナが何とかしてくれるだろう。ディーナは予定通りワーグナーに魔族を統括させ、そして人と協議をさせるつもりのようだ。そんなことができるのはいつになるのかわからないが、でもディーナの力とおれたちが協力しればできないこともない気がしてきた。


こうして、おれはアーガンスに、そしてコウとティナはオスタへのワームホールをディーナにつないでもらい、それぞれの帰路へと着いた。


◇◇


ワーグナーとの戦いから数ヶ月後。


「ちょ、ちょっと、人のことあんまりじろじろと見ないでくれる?恥ずかしいじゃない!」


王宮のとある一室に何人かの従者と共におれとアリスはいた。


「いや、本当に綺麗だな、と思って。」


おれの思いがけないコメントにアリスは尚更顔を赤らめる。


「アリス様、お綺麗ですよ。こうしてみると先代の王女様によく似られていますね。」


裾がこれでもかと伸ばされ、レースやリボンがあしらわれた純白のドレスと、光り輝くティアラとヴェールに身を包んだアリスは、贔屓目に見てもどこの誰がみても綺麗だろうし、おれから見たら世界で一番綺麗に見えるのは今のこのアリスだろう。


「準備は出来たか?」


そこに、アリスの両親であるアーガンス王、王女そして駆けつけたセシルが現れる。


「よく似合ってるわよ、アリス。」


「ほんとですわ、うっとりしてしまいます。」


アリスとおれは顔を見合わせ頷く。


「よし、それでは、御披露目といこうか!」


おれたちはアーガンス城の中の長い廊下を歩き、城の広間が上から見渡せるバルコニーにまずはアーガンス王たちだけが顔をだすと、待ってましたと言わんばかりに広間にいた聴衆から割れんばかりの歓声が聞こえる。


まさか、人生の中で自分がこんな大勢の人の前で主役になる日が来るとは思いもしなかった。思わずおろおろとしてしまうが、隣のアリスは物怖じせず、日の光が当たる中背筋をスッと伸ばした姿はどこか神々しささえ感じたほどである。


「皆の衆!最初の発表から準備に時間がかかってしまったが、本日は知っての通り、我が娘アリスと、またそのアリスと婚姻し、アーガンス家の一員となったショウの2人の御披露目のために集まってもらった!前置きはこれくらいにしておこう、それでは早速だが、ショウ、アリス、前へ。」


広間に集められた王宮の演奏団が高らかにファンファーレを鳴らすと、アリスは腰に手を当てたおれの腕を組み、そしてゆっくりと一歩ずつ王たちが立つバルコニーへと歩みを進め、王たちに並ぶと聴衆の姿がようやく目に入る。これだけの人達が自分たちのために集まってくれたと思うと感極まる思いだった。おれたちは定位置に着き、王に目配せをすると王は頷く。


「それではショウ、新たに家族となった2人を代表して、アーガンスの皆に一言を。」


「皆様、改めまして初めまして。この度、新たにアーガンス家の一員となったショウです。皆様に僕のことを知ってもらうために少しだけ自己紹介をさせてください。」


おれの言葉を、興味深そうに聴衆が食い入って聞いているのがわかる。思わず息を飲むが言葉を続ける。


「僕はこの国からもう少し北に行ったテペ村で、狩人の家族の長男としてこの世に生を受けました。そして、狩人の父が世話になっていたラキカさんに弟子入りし、騎士選抜試験を受けたのがこの国にきた始まりであり、そして、アリスとの出逢いのきっかけでした。今思い返せば、あのときの出逢いが運命のはじまりだったのだと思います。」


おれはちらりとアリスの方をみると、当時のことを思い出しているのか、アリスがクスリと笑っている。まさか出会うとほぼ同時に胸を揉まれた相手と結婚することになるとは、当時のアリスは露ほどにも予想していなかっただろう。


「それからはアリスと本当に苦楽を共にしてきました。騎士として辛いとき、体調が悪いとき、辛さを分かち合い、支えてくれたのは一緒にパーティを組んでいたもう一人と、アリスでした。」


ゼラスもおそらくこの聴衆のどこかで聞いているだろう。彼とはアリス以上に一緒にいただろう。最早、兄弟以上に一緒にいるのかもしれない。


「そして、これまでは騎士としてアーガンスの国を守り、支えの一助となるよう尽力してきましたが、今日、この日よりアーガンス家の一員として、アリスと一緒によりこのアーガンスのために身を粉にし、アーガンスの一人一人に喜んで貰えるよう、邁進したいと思いますので、皆様、どうかこのショウとアリスの新しい夫婦を、よろしくお願い致します!」


おれとアリスは頭を下げると、聴衆から広間を埋め尽くすかのような拍手と祝福の歓声が聞こえる。おれは余所者が何を偉そうに、というような雰囲気になったらどうしようかと思ったが、どうやらしっかりと受け入れてもらえたようだ。そして、王は歓声が収まったところを見計らって一歩前にでる。


「この歓声、この国民の意志として2人を受け入れるものと見なした。よって、我、アーガンス王の名の元に、この度、ショウとアリスの婚姻を此処に宣言する!」


おれとアリスはあらためて深々と頭を下げると、広場からは先程を超える、正に空を割る勢いで拍手が巻き起こる。おれたちが顔をあげ、広場をみるとみんなが歓喜で手をあげ、ここにいる全員が、おれたち2人を祝福してくれているようにすら感じる。改めて、おれはこの祝福の気持ちに感謝し、そしてこのアーガンスのために自分の力を尽くしたいと思った。


◇◇


ワーグナーを転生させ、アリスと婚姻後は本当に忙しく、気がつくと5年の歳月が流れていた。この間、おれは騎士団の一騎士としての活動は継続しながら、コウと協力しオスタとの正式な国交再開や関係強化に始まり、ディーナの手も借りながら既に北の大地を統治し始めているワーグナーを含めた、アーガンス、オスタ、そして北の大地の三カ国同盟を取り付け、定期的な会合を行うことまで合意した。少しでも、ディーナが目指した真の平和に向けて近づけるよう一歩ずつだが進んでいる実感があった。


一方、おれとアリスの仲も至って順調である。婚姻後、無事子供を授かり、今はもう3歳。しかも、男の子と女の子の双子だった。出産を機にアリスは騎士団を退団し、妃となるべく子育てと王家の執務に毎日忙しくしていた。この双子が産まれるときにはディーナが何の前触れもなく現れ、プレゼントじゃ、とかいって産まれる直前にアリスのお腹に手を当て、青白い光を放っていたから、おそらくこの二人はおれと同じようにディーナの力を使えるのかもしれないが、この話はおれとアリスだけの秘密である。


こうして、おれたちは本当に充実した生活を送りながら、一歩ずつだが理想の世界になるように努力を続けるのであった。


◇◇


昼か夜かもわからない、窓もない部屋の中に、パッと見ただけではよくわからない計器や大きな装置が並んでいた。その部屋で、カタカタとキーボードが鳴り響くなか、そこにいた一人が、紙と紙が擦れる音に気がつき、ふと音の方をみるとそこには大量に積み上げられたら書類の山の上に、普通の紙とは質の異なる紙が、一枚のっていた。気がついたその一人が、手書きでかかれたその文章を読むと、驚きのあまり手が震えていた。そしてそのメッセージが、この後この世界を大混乱に招き入れるのだった。


国立重力研究所の皆様へ


ワームホールを抜けると、そこは異世界でした。


楽しくやってますので、心配しないでください。


峰ショウタ

桜庭コウ

これにて、「ワームホールを抜けるとそこは異世界だった」は全ての話が連載完了となりました。


ここまで長い話をちゃんと書くのは初めてで、何分読みにくいところやつまらないところなどもあったかもしれませんがここを読んで頂いている皆様、最後までお付き合い頂きありがとうございました。


初めての投稿でPVがついたことに驚いたり、ブクマやご評価を頂く度に一喜一憂しながら、一方で一人でも読んでいてくれる方がいるのだと、なんとかここまで書き上げることができました。


読んでいただいた上で恐縮ですが、もしよろしければ、全体を通してのご感想やご評価をいただけると次作への励みになります。


また、せっかくつけていただいたブックマークはできればそのまま残しておいていただけると嬉しいです。


それでは、もしよろしければ次作でまたお目にかかれれば幸いです。これまで、本当にありがとうございました。

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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