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辿り着いた先は

次元の狭間での修行により、魔素の回復と時間魔法を体得したおれたちは、ディーナに最後のまとめの手ほどきをうけている。


「周囲に被害が出ないようにする結界はティナとコウで。ワーグナーの魔力を枯渇させるのはワシとショウでなんとかするのじゃ。あやつを転生させる魔法はさすがにちと骨が折れるから終盤はショウに任せるから頼む。ちなみに、転生させようとしてることを奴に悟られたらだめじゃからな。見かけ上は全力で戦ってるように見せるのじゃ。」


おれたちは頷くとようやく全てが終わったかと胸を撫で下ろす。ここまでの時間はおそらくまる一日くらいだったと思うが、感覚的には1年近く根詰めていたような錯覚に陥るくらい、辛い時間だった。ティナが恐怖するのも理解できる気がする。


鍛錬を終えたおれたちはラキカたちがいたところに戻る。


「随分長いこと待たせちゃいました、すみません。」


おれはラキカに謝ると、不思議そうな顔をしていた。


「何言ってるんだ?今さっき突然消えたと思ったらもう戻ってきたのか、といったぐらいの感じだったぞ?」


「あぁ、実はあの中でもさらに時間を止めてたからじゃな。2人をあまり長時間待たせても気の毒じゃろ?」


ディーナの言葉に納得する反面、短時間にみっちりしごかれたおれたちはなんだか損した気分だった。おそらく、外の世界に影響がでないようにと形成した魔法障壁が次元そのものを隔てていたのだろう。どうやら、よっぽどおれが疲れて見えたのだろう。アリスが心配そうに声をかけてくる。


「あんた、なんかやつれてるけど大丈夫?」


「うーん、大丈夫かと聞かれるとあんまり大丈夫じゃないかもしれないけど、とりあえずディーナの修行が終わってホッとしてる。」


どうやら、このおれの精神的疲労がディーナの耳にもしっかり届いていたらしい。おれたちは少し休息をとった後にワーグナーの元へと行くことにした。


少し休むと、ディーナが再びワームホールを開く。


「まずは2人をアーガンスに返してくるのじゃ。ティナたち3人はちょっとここで待っておれ。ほれ、いくぞ。」


「そうか、ここから直接アーガンスまでいけるなんて、とんでもない技術だな。」


「えぇ、私達の来る時の苦労が全くかからないなんて、素晴らしいですね。それじゃあショウ、ちゃんと帰ってくるのよ!私達先に戻ってるから。」


まるで遊びにいくのを見送るかのような勢いでアリスはおれにいうが、心配ではないのだろうか?しかし、そんなおれの思いも露知らず、アリスとラキカはおれたちに手を上げてディーナと一緒にワームホールをくぐるとあっという間にこの場からいなくなる。そして程なくするとディーナが現れる。


「待たせたな、それでは、行くかの。準備はいいか?ワシらは再びあいつの目の前に現れる。」


「なるほど、出ていった瞬間に要注意ってことだな。」


「大丈夫なの、今の私にかかればあんなやつの攻撃、ちょちょいのちょいなの!」


どうやら、ティナは今回のディーナの修行でだいぶ自信をつけたらしい。それならもっと前から姉に教えを乞えばよかったのにと思うがまぁ結果論である。おれたちは顔を見合わせ頷く。


「よし、ではいくぞ!」


ディーナが広げたワームホールに全員で飛び込むと、ワームホールの外にディーナが飛び出し、一瞬時を止める。その目の前にはワーグナーの放った黒い塊が迫っている。


すぐにおれたちはワームホールから離れ、そしておれとディーナはワーグナーを囲む位置に、ティナとコウはおれたちから少し離れた位置にそれぞれが位置取る。どうやら、ワーグナーの居城にわざわざ来たらしい。目の前の玉座にはワーグナーが座り、玉座の前は大きな広間になっていた。


「一度は逃げ帰ったのに、また戻ってくるなんて君たちも物好きだね。それとも、僕の部下になってくれる決心でもついたかな?」


ワーグナーはおれの方に見向きもせず、ディーナの方を向く。


「最初の一撃がなければ考えてやったがな。だが、これが答えじゃ!」


ディーナはそうは言いながら既にワーグナーに向かって駆け出し、剣を抜いて斬りかかる。するとディーナとワーグナーの間の床から赤い雷が迸り、その雷からは真っ赤な竜が現れる。出てくるなり、その赤竜はディーナの方を向き咆哮と共に口から赤い雷を吐き出す。


「グガァァァァ!」


大地を震わせるその声は歴戦の強者でも思わず硬直させるが流石ディーナ、咆哮を全く無視して迫りくる雷を躱すと大声で叫ぶ。


「ワシはワーグナーの相手をする!お主はこいつを頼んだ!」


おれはディーナが駆け出した時点で一歩遅れてワーグナーに駆け寄っていた。


「わかった!」


おれは急遽ワーグナーへの歩みを赤竜にかえて、挨拶代わりに自らを雷化して斬れ味付与をした状態で赤竜に斬りかかっていた。


「なかなか威勢のいい人間だね。彼でどれくらい持つかな?」


確かにこの赤竜は強い雰囲気を感じる。果たして今のおれでどれだけ太刀打ちできるだろうか。そんな心配が赤竜への一太刀を避けられた時点で頭に過ぎる。しかし、ディーナはそうは思っていないらしい。


「そんな余裕をぶっこいておってよいのか?あいつは強いぞ?逆にあの赤竜がどれだけ持つのか見物じゃよ。」


ディーナのその言葉に、興味を示したのかワーグナーの片眉がピクリと動く。


「へぇ、君がそこまで言うってなかなか珍しいね。それじゃ、ちょっと楽しみにみさせてもらおうかな。」


「まぁ、残念ながらお主は悠長にあっちの様子をみる余裕はないはずじゃがな!」


そう言ってディーナは掌に赤い火魔法の光を灯らせると、4つの火の玉をワーグナーに向かって飛ばし、ディーナ自身も白銀の剣を手にしてワーグナーに迫る。


その頃、コウとティナは周りを見るとわらわらと魔物が現れていた。


「おネエ!結界張るだけじゃなかったなの!?」


「どうやら、あいつらの相手は僕らがしないといけないみたいだね。」


ティナとコウは結界を張りながら集まってくる魔物たちの方を向き、構える。


おれと赤竜、ディーナとワーグナー、ティナとコウがその他大勢の魔物たちを相手取った、最後の戦いが始まろうとしていた。

再び姿を現した先はなんとたくさんの魔物が待つワーグナーの居城でした。これならそのままワーグナーと戦っていた方が良かったのでは?と思いますがディーナはそうは思ってないようです。ディーナの辛い指導を受けたショウたちはワーグナーたちに太刀打ちできるのでしょうか?

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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