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旧友との戦い

ディーナの封印を解きたいおれたちと、なんとしてもそれを阻止したいティナ、そしてティナによって操られてしまったコウとの戦いの火蓋が切って落とされる。


「せっかくだから私もたまには運動するなの。」


ティナは虚空に手を伸ばすとレイピアのような小剣を取り出し、俊敏な動きでおれたちの側面に位置取る。正面からはコウが、側面からはティナが攻めてくる形となった。


「コウは一旦ぼくが相手をします!」


おれはそう言うとこいつにこんな小技は聞かないだろうが、と思いながらもまずは立ち向かってくるコウを足止めするため、おれは地面に手をつくと土魔法を発動させ、コウの足元を液状化させる。


コウは突然の足場の変化に足を取られバランスを崩すがすぐさま風魔法で浮遊しおれたちの元へ距離を詰める。しかし、その隙におれはアリスたちから少し距離を置くため、コウの元へ詰め寄る。こいつを殺さないように、でも殺されないように何とか戦闘不能にするのはかなり骨が折れる、というか実現が可能かすら微妙だが、やるしかない。


「踏ん張りどこだな。」


おれはポツリと呟き、コウに向かって剣を抜く。そして、実はこの時、誰も気にかけていなかったがココがディーナの封印された水晶へと駆けつけていた。


一方でティナに相対するラキカとアリス。ラキカとアリスはティナを挟み込むように攻めるが、2対1だというのに、ティナは2人を上手くあしらっていた。


「なんなの、こいつ。上手く攻めれない。」


「こいつのレイピアのせいだ。おれたちとはタイミングが違うからいつもと同じ感覚で戦うとだめだ。」


レイピアは突きに特化した武器であるため、剣のように振りかぶる必要がなく一手一手がコンパクトで素早いため、同じ間合いで戦うと手数の多さで負け、攻めきれない。そして更に厄介なのはこのティナが小柄で、身動きが非常に早い点である。単純な身のこなしだけで言えばラキカをも凌駕していた。


しかし、簡単に決着がつくと思っていたティナは苛立つ。


「あんたらなんなの?なかなか強いなの。鬱陶しいなの。2対1なんてずるいなの。」


そして、ティナは単純にレイピアだけで勝負がつかないことがわかると、空いた片手に魔素を溜め始める。


「アリス、下がれ!魔法がくるぞ!」


ラキカの言葉にアリスは一歩下がるがティナの手から雷魔法が放たれる。


「遅いなの!」


ティナはようやく1人片付けられたと安心していた。しかし、アリスが下がったお陰でできた隙間にラキカは白い気を纏って身体能力を向上させることでなんとか体を滑り込ませ、自らの体で受け止めると何事もなかったかのようにティナへ向かって剣を振るう。


「ちょ、ちょっと、なんなの?何で魔法が効かないなの?」


明らかに動揺するティナにラキカはニヤリと笑う。


「まぁ専売特許みたいなもんだな。」


こうして、ラキカが魔法を防ぎながら何とかティナとの攻防をしのいでいた。


その頃、おれはコウと剣を交えていたが、やはりかなり際どい。剣の腕はおれが少し上回るが、魔法の幅はコウが広い。もちろん、殺す気になればまた違った戦い方もできたかもしれないがやはり生かしつつ動きをやめさせる、というのはハードルがかなり高かった。


コウから放たれた火魔法をおれは氷魔法で作った壁で防ぐと、それを見越したコウはおれの元へ走りこんでくる。おれは剣に雷魔法を込めた状態で剣を構え、踏み込んでくるコウに剣を振るうが同時にコウも小剣をおれに振るう。するとお互いが剣を避けながら突っ込むため、ちょうど斬り交えたときにはコウとおれの体がすれ違う。どうやら、おれたちは同じことを考えていたようですれ違い際にコウは空いた手で氷魔法を、おれは雷魔法魔法を構え、お互いの手から放たれぶつかりあい、その余波でおれたちは吹き飛ぶ。


「くっ!?」


コウは膝を付きながらなかなか勝負が決まらないことに苛立ちを覚えながらおれの方に向く。一方、おれもコウの方を向き、なぜだかニヤリと笑ってしまう。


「なんだかこうやって全力でぶつかり合うのって、なかなか楽しいかも。なぁ、そう思うだろ、コウ!?」


もちろん、全力といってもおれは殺さないことを意識している。そのため、おれは麻痺を狙った雷魔法しか使っていない。しかしながら、それを当てるための努力は全力でしているし、逆にコウの攻撃を当たらないようにするためには、もちろん全力で回避している。


コウとは、仕事をしているときから時折意見の食い違いや考え方の違いで口論になることがあったが、そのときも、決して腹立たしいわけではなく、どちらかと言うとなんとかして相手のことも理解したいし、自分のことも理解してほしい、という気持ちが強かったからか、会話は建設的で、楽しく、刺激的であった。今回のおれたちの戦いは、これまで口で戦っていた代わりに武器を使って戦うことにかわっただけで、戦うこと自体がおれたちにとって刺激的であったのかもしれない。


だがしかし、いつまでもこうして遊んではいられない。なんとかして目的であるディーナを助け出すのが先決だ。


おれは吹き飛んでコウとの距離が開いたことをきっかけに、その場で手を広げ魔素を高めると土魔法を発動させ、広げた手を胸の前で閉じ、魔法を具現化する。


「土よ!」


その声と同時にコウの足元が盛り上がったと思うと、周りに土でできた壁がコウの周りを球状に覆い、幾重にも積み重なると、そこには岩の球状の塊のようなものができたがった。しかし、この覆いをコウは内側から同じく土魔法で剥がしにかかっているのが行使している魔法への干渉でわかる。こうなったらどちらが先に諦めるか、我慢比べである。どのくらいそうしていたのだろうか。おれはおれ自身に言い聞かせるように呟く。


「そろそろ諦めたらどうだ、コウ?そろそろ魔素がやばいんじゃないか?」


おれは聞こえるはずもない言葉をコウに投げかけると、その言葉が届いたのか、はたまたたまたまか、本当にあがきをやめたようだった。


おれはホッと息を吐くとアリスたちの方を見る。


「あのティナっていうの、めちゃくちゃな強さだな。でも、あの2人もそのティナ相手によく持ちこたえている。」


そんな関心をしていたところ、コウを閉じ込めた岩の球からゴトリ、と音がしたかと思い、振り返ると、そこには岩を真っ二つに斬り裂いて中からでてきたコウが立っていた。


「はぁ、まだ続くのかよ、そろそろやめにしようぜ、コウ。」


おれはそう言いながら、飛びかかってくるコウに向かって再び剣を構えるのであった。

刺激的な戦いに、ショウは何だかんだ言いながら満足していそうな雰囲気ですね。そして何やら不思議な動きをしているココは一体何をしようとしているのでしょうか?

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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