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待望の再会

ボグイッドを倒してから、おれたちはディーナを救うのと、コウを見つけるため北の大地を東に数日間進んでいた。そして、この日はココの言うがまま、おれたちは山を登っていた。かなり標高が高く、中腹から上は真っ白い雪で覆われていた。


「少しずつマスターの魔力が強くなってきてるにゃ!もうこの近くにいる気がするにゃ!」


ココは何かを感じ取ったのか山の途中で急に駆け出す。


「ちょっと、ココ、危ないよ!」


おれは先を行くココを走って追いかけると、ココは目の前にそびえ立つ崖にポッカリと空いた空洞の前で佇む。


「ここにゃ。ここにマスターがいるにゃ。」


その空洞は、入り口こそ人が2人並んで入れるかどうかといった広さだったが、その奥は入り口から覗いただけではどこまで続いているのかわからないほど奥が深そうだった。


「ここなのか?」


後ろから追いついたラキカとアリスが入り口の前で立つおれとココに気が付き、2人も中を覗く。


「なんだか、とっても深そうね。でも、ここなら確かに封印されててもおかしくない気がするわ。」


「よし、んじゃちょっと行ってみるか。」


こうしておれたちはディーナの封印されていそうな洞窟に足を踏み入れた。洞窟を歩く途中、ラキカが意味深なことを口にする。


「ショウ、この先気をつけろよ。もしかするとお前が戦いたくない相手と戦わなければいけないかもしれない。」


「え?どういうことですか?」


ラキカは少し悩みながらも答える。


「先入観を持たせるとよくないと思ってこれまで話をしなかったが、あのコウはおそらくティナの力を受けた転移者だ。そして、コウの魔力と同じ波長の魔力が2つ、この先で待ってる。」


「なるほど、ということは、この先で待ってるのはディーナの封印解除を阻止したいティナと、」


「コウが待ってるってことね。」


ラキカは頷く。


「もちろん、話し合いで解決できるならそうすべきだと思うが、それがうまく行かなかったときにどう対処するかは考えておいたほうがいい。」


おれはラキカの話に頷くと、どうするかを考えながら一本道をひたすら歩き続ける。洞窟の長細く蛇のように続く一本道をしばらく歩くと、やがて大きな空洞が見えてくる。


「ここか?」


一歩中に入ると大きく床に描かれ青白く光る魔法陣の真ん中に、大人の高さくらいの12面体の水晶が浮かんでいた。そしてラキカの予想通り、2人の人影が水晶のすぐそばにいるのがわかる。


「コウ!」


おれの呼びかけにコウは驚いている様子だった。


「ショウ?それにアリスとラキカさんも。」


「何なの?みんな知り合いなの?」


コウは頷く。


「あぁ、一緒にボグイッドを倒したし、ぼくの古くからの友人でもあるんだ。」


「そうなの、なら話は早いなの。おネエの封印を解くのを諦めてもらうなの。」


おれはコウとティナの話に割って入る。


「はじめまして、コウの友人のショウです。なんでそこまでお姉さんの、ディーナの封印を解くのをそこまで嫌がるんですか?ここまで強くなることができたのはディーナのおかげだと思ってるから、彼女の力になりたいと思ってるんです。」


ティナはディーナとのやりとりを思い出すと拳を握りしめ、わなわなと震わせながら怒りを吐き出す。


「おネエをなんでそのまま封印しておきたいかって、そんなの簡単なの。おネエが嫌いだからなの。くだらない平和主義を掲げて、種族間の調和が大事だ、なんて甘いことをいうおネエの言葉には虫唾が走るなの!」


コウにとっても初耳だったのだろう。コウも口を挟む。


「だからワーグナーに世界の統一をしてもらおうと?」


「そうなの!争いがない世の中を作るためには、力による統一、それしか道はないなの!だから、力を持ちながら甘っちょろい考え方のおネエは邪魔なの!」


まぁたしかにティナの言うことも一理ある。だが、だからといってディーナのことをこのまま封印しておくわけにはいかないし、何より、力による統一以外のディーナが考えている甘っちょろい平和主義をできることなら信じたいしおれもそれを目指したいと思ってる。どうやら、コウも同じ思いだったようだ。


「それなら、ぼくらも一緒に話を聞くから、一度お姉さんも一緒に話をしてみない?ぼくは、できることならお姉さんの話を聞いた上でティナの考えに賛同するか決めたい。」


しかし、どうやらコウの発言が気に食わなかったようだ。


「いつもみんなそうやってお姉ちゃんの味方ばっかりするなの。いつも全部私が悪いって言うなの。」


「いや、そんなつもりはないんだけど、やっぱり姉妹で喧嘩したままってよくないでしょ?」


コウの言葉に姉妹喧嘩の経験があるアリスが首を突っ込む。


「そうよ、姉妹の喧嘩なんて時間が経てば忘れるものだし、喧嘩してこその姉妹でしょ?もう一度しっかり話し合いなさいよ!」


「もうあんなおネエと話す言葉はないなの!それに、お前たちもうるさいなの!コウ!私の命令を聞いてこいつらやっつけるなの!」


ティナがそう言うと、コウが頭を押さえながらその場にうずくまる。


「うぅ、ショウ、すまない。このままではショウと戦わないといけなくなってしまう。い、今のうちに逃げてくれ。」


「こ、コウ!?大丈夫か?」


しかしおれの呼びかけも虚しく、コウの叫び声が洞窟内に響き渡る。


「うぉぉぉぉぉぉー!」


その叫び声を最後に、コウは焦点の合わない目をしながら、おれたちに襲いかかってきた。


「私の魔力が入ってるんだからこれくらい朝飯前なの。キミは私の言うことを聞くしかないってことを思い知るといいなの。」


果たして、全力で掛かってくる本気のコウをどこまで足止めできるのだろうか。おれはそんな不安を抱きながらラキカ、アリスの前に立ち、2人をコウから守る。


「コウ!目を覚ましてくれ!」


おれは届かないと知りながらも友の名を叫び、剣を構えるのであった。

ようやく出会えたディーナだったが、その行く手を阻むのはなんとティナとコウ。コウの実力もさることながら、ディーナの妹のティナも相当の腕前でしょう。無事ディーナの封印を解くことはできるのでしょうか?

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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