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それぞれの思惑

魔素の急激な放出により全身が痛む中、おれとアリス、ラキカの3人とココはボグイッドの居城後で少し休んでいた。


「お前、自分がどうやってあいつを倒したのか覚えていないのか?」


ラキカの問いにおれは頷く。


「アリスを助けたところくらいまでは薄っすらと記憶があるのですがその後のことは殆ど覚えていません。」


ラキカ曰く、光の剣を生み出し、それであのボグイッドを蹂躙していたらしい。ヤツからの攻撃は見えない障壁で防ぎながら、圧倒的な火力で細切りにしたそうだ。


「そうですか。でも、その代償がこれですね。」


おれは試しに火魔法を使ってみるがか細い炎が上がるだけでそれ以上は見込めない上に使うときに全身が痛む。


「まぁ様子を見る限り、最初のときのように魔道が完全に閉じてしまってるわけではなくて損傷しているだけだから時間が経てば戻るだろう。」


その様子を見ていたアリスが申し訳なさそうにしている。


「私が捕まったせいでこんなことになってごめん。」


おれとラキカは2人で首を横に振っていた。


「そんなことないよ!マーマンだっけ?あいつを倒した魔法をアリスがボグイッドと戦って使ってたらそもそもアリスが閉じ込められる前に倒してたかもしれないし。おれの方こそ、守りきれなくてごめん。」


「あぁ、おれもあの魔法には驚いた。触れるものすべてを氷結させるなんてな。それに、剣技もなかなかの物だったぞ。」


ラキカに褒められアリスは大いに照れていた。


「ありがとうございます。ちょっとみんなには内緒で練習してたんです。どこかで驚かせてやろうって思って。」


まさにアリスの狙い通りである。あのマーマン、剣技もなかなかだったし、そもそも素手でおれの斬れ味付与を弾くのだから硬さもある。あの相手に決定打を与えられたアリスの魔法は今回の討伐の中で決め手の一つであったことは間違いない。それにしても。


「コウ、どこいっちゃったんだろ?あいつがそんな簡単にやられるとは考えにくいんだけど。」


おれは一度相対したからわかる。コウはかなりの実力がありおれより強くても全然おかしくない。そんなコウがなんの痕跡も残さずやられるなんていうのはちょっとあり得ない気がするのだ。


「魔素を探ってみたが、どうやらこのあたりにはもういないようだからな。流石にこのままおいて帰るわけにはいかないから、ちょっと探してみるか。」


おれは頷く。それに、せっかくこっちに来たのだから済ませたい用事もある。


「それなら、マスターをみんなで探しながら、コウを探すといいにゃ!」


しばらく影を潜めていたココがおれの道具袋からにゅっと顔を出す。当然、この言葉はみんなには伝わらないからココのことは伏せながらおれはみんなに事情を説明する。


「コウを探すついでに、一緒に探したい人がいるんだけどいいですか?」


おれの言葉にラキカは気がつく。


「ディーナか。」


「はい、ぼくがここまで強くなることができたのは彼女のおかげだと思っています。だからぼくはその借りを返したいなと。」


「そういうことなら一石二鳥じゃない!ディーナを探しながらコウを探す。そうしましょう!」


全員一致にココは満足そうにしている。


「マスターの場所ならここまでくればなんとなくどっちにいそうか、くらいはわかるにゃ。東の方からマスターの気配がするんだにゃ。」


「そいえば、ディーナの話になってからココがあんたに向かってニャアニャア言ってるんだけどもしかしてココって。」


「あぁ、今まであまり機会がなかったから説明しなかったが、おれと話せる。」


おれの衝撃コメントにアリスはお笑い芸人も驚きそうな勢いでずっこける。


「ショウ、あんた、遂に人間やめたわね。」


なんてことを言うんだ、失礼な。一方でラキカは特に驚きもしない。おそらく、ココの魔素からディーナの使い魔だということに気がついていたのだろう。


「実はココ、ディーナの使い魔なんだよね。で、ディーナの場所がおおよそわかるらしいんだけど東の方にいってみたらいるかもってさ。」


「そういうことなら、とりあえず東に行ってみるか。コウのことはディーナを見つけるまでにもし見つからなかったらその時に考えよう。」


おれが頷いている横でアリスが「ショウと結婚することにしてよかったのかな。」とか変な心配をしているが聞かなかったことにしよう。


こうしておれたちはもうしばらく休んだ後、この地を後にし、東へ進むのであった。


◇◇


その頃、コウはとある場所に転移していた。


「ここは?」


コウはキョロキョロと周りを見渡すと見知った顔が近づいてくる。


「突然ごめんなの。急遽キミの力を借りる必要が出てきたの。」


真っ黒なワンピースに腰まで伸びた黒いストレートヘア、そして真っ黒い目をした少女がコウに近づいてくる。


「なんだ、ティナのせいか。君のためにボグイッドをなんとかするっていう大事な仕事中だったんだが。」


コウの言葉に全く悪びれる様子もなくティナと呼ばれた少女はコウを見上げる。その様子は子供が大人を見上げるのと同じくらい身長差があった。


「まさかおネエと同じ魔力を持ってるやつがこの北の大地に現れるとは思いもしなかったの!だから、そいつがおネエの封印を解く前にキミと協力してそいつらをやっつけるの!」


コウはティナの言葉に首を傾げる。


「ん?どういうことだ?なんでティナのお姉さんが封印されてるのを邪魔しないといけないんだ?」


「ワーグナーにこの世界を統治してもらうために、おネエを封印するって約束したの。それでこの世界は幸せになるの。」


「つまりは、ワーグナーがこの世界の王となって統治するためにはティナのお姉さんが邪魔だったというわけだな。ちなみに、そのワーグナーにぼくが会うことはできるだろうか?」


コウの問いにティナは首を大きく縦に振る。


「うん、大丈夫なの。キミはこれまでボグイッドの魔物をたくさん倒してくれたからワーグナーも喜んでるの。おネエの封印を解きに来るやつらを倒したら会いに行くの。」


コウはこれまで魔物はみんな敵だと思いオスタにくる魔物や北の大地に来たときに魔物を倒していたが、どうやらコウが倒していたのはワーグナーの障害となる魔物だけだったようだ。そして、話の流れからコウは当然の疑問が湧き出る。


「そのワーグナーって、もしかして魔物か魔族?」


コウが恐る恐るした質問はあっけらかんとティナは応える。


「うん、魔族なの。それも、とびっきり強いの。だからこの世界を統治するにはぴったりなの。」


コウはこの瞬間、初めて自分が魔族に協力していることに気がつくのであった。

結婚を早くも後悔し始めたアリスですが、たしかにこんな人間離れした旦那はちょっと受け入れられにくいかもしれませんね。

そしてコウがいろいろ情報を入手できていた理由がようやく明らかになります。ディーナを助けたいショウたちと、それを防ごうとするコウたち、両者はこれからどうなっていくのでしょうか?

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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