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思わぬ決着

マーマンと対峙するアリスは氷魔法を駆使しながら、なんとかマーマンとの勝負を持ちこたえていた。純粋な剣術ではマーマンに劣るアリスは、なんとか風魔法と氷魔法を組み合わせて距離をとりながら戦っていたが、どちらも決定打には欠けるためアリスはジリ貧だった。


アリスは再びマーマンから少し距離を取ると、その手に溜めた魔素で、その日何度目かの氷魔法を発現させる。


「ふっ何度も同じ氷魔法を使っても無駄ですよ。」


アリスを嘲笑うマーマンは風魔法で創り出した真空の刃をアリスに向けて飛ばし、自らもその刃を追いかけるようにアリスに迫る。


「氷よ!」


しかし、今回の氷魔法は、これまでとは異なっているようで、マーマンに向けて放たれると思ったが、いつものように空中には放たれず、アリスの持つその剣に宿る。その剣は、空気中の水分すら凍らせ、刀身の周りに白い煙を巻き立たせる。アリスはその剣で迫りくる真空波をまずは叩き落とすとマーマンに向かってアリスも突っ込む。


「ふん、たかだか剣に氷属性をつけたくらいで。」


マーマンはそう言い放ち、アリスに向かって剣を振るう。


カキィィン!


剣と剣が打ち合ったときよりも数段甲高い音が居城内に響き渡ったかと思うと、ぶつかった位置で2人の持つ剣が止まったまま、マーマンの剣が少しずつ氷漬けになっていく。


「な、なんですか、これは!?」


マーマンは氷漬けになった剣を手放し、一歩引くとマーマンの剣はあっという間に氷漬けにされた。もしマーマンがそのまま手を離さなかったら、今頃勝負は決まっていたかもしれない。


「もっと持っておけばいいのに。」


アリスはそう言いながら丸腰になったマーマンに詰め寄り剣を振るう。その振るう剣からは冷気が迸り、それを纏うアリスはまるで雪の中で舞う精霊のように可憐だった。どうやら、アリス自身の魔力で形成されているためアリスは触れても無害のようだ。


そこに、さらにラキカが後方から詰め寄り、アリスとラキカで一気に勝負をかける。


「こ、このぉー!」


マーマンは苦し紛れに自分の周りに風を巻き起こし、アリス、ラキカと共に魔力で作られた冷気を吹き飛ばそうとするが、結局アリスが剣を振る限りでてくる冷気を止めないことにはいつまでたってもイタチごっこである。そして、いよいよラキカが赤い気を纏い、攻撃の速度があがるとマーマンはラキカの攻撃を捌くのに精一杯になり、ついにアリスの攻撃がマーマンの腕をかすめる。


「ツッ!?」


マーマンはその掠り傷に気がつき、傷口から少しずつ氷漬けになり始めた瞬間、自分の腕を瞬時に切り落とすが、片腕でこの2人の攻撃を掻い潜れるわけがない。


「私を甘く見たことを後悔するといいわ!」


ラキカの攻撃を残った片手で振り払い、完全に無防備になったところをアリスに一突きされる。すると、体の中から凍りついていき、少しずつ動きが鈍くなる。


「に、人間の小娘ごときに。」


最期にマーマンはその一言を残すと、体液すべてが凍って動けなくなり、ラキカの剣で粉々に砕かれ、遂には跡形もなくなった。


その間、おれはボグイッドと少し間合いを開けながら戦っていたがなかなか決着がつかずにいた。おれは身体強化をしながら戦っていたため、攻撃は当たるが腕一本落としてもすぐに復活してしまい致命傷にはならない一方で、ボグイッドの攻撃はなんとか避けることができていたため、戦況は硬直していた。おれはヒットアンドアウェイを繰り返していたため、ボグイッドとは少し距離を取るようにしていたが、この中距離で戦っていたのが、おれの大きな失敗だったのかもしれない。


ちょうどアリスたちがマーマンを倒した直後、アリスは魔素の消費のせいでその場で剣をつき、肩で大きく息をしていた。


「ショウばっかりにいい格好はさせられないわ。」


その言葉にラキカも頷く。


「あぁ、よくやったな。だが、大丈夫か?顔色が真っ白だぞ?」


ラキカがアリスに近付こうとした次の瞬間、ボグイッドが今まで見たことのないような白い魔法弾をおれに向かって放つ。


「こんなの当たらないよ!」


おれはその白い魔法弾を避け、ボグイッドに踏み込もうとしたそのとき。


「アリス!避けろ!」


ラキカの叫びが聞こえるが、残念ながらアリスはその場で動けずその白い魔法弾が直撃する。


「アリス!」


どうやらその白い魔法弾は拘束のための魔法だったらしい。


「お前たち人間はこうされるとすぐに動けなくなる。動くなよ、動いたらどうなるか、わかっているよな?」


おれたちは為すすべが無く、ただただボグイッドとアリスを交互にみる。

アリスの体を包んでいた白い球体は宙に浮かび、アリスの顔だけ表面からださせると、その白い球体が萎み、アリスの体を締め付ける。


「きゃぁぁぁ!」


しかし、そのアリスの悲鳴をきいておれの中で何かがぷつりと切れた気がした。


「お前はぁぁぁぁ!」


次の瞬間、おれの魔素が怒りと共に放出され、居城の天井を突き破る青白い光となりおれを包み込む。突然の出来事にボグイッドは驚きを隠せない様子だった。


「な、なんだ、その力は。そんなことをしてこいつがどうなってもよいのか!?」


ボグイッドは慌ててアリスが入った球体を手元に手繰り寄せようとするがおれがその球体に手をかざすとその球体は薄いガラスが割れるような音をして割れ、アリスの拘束が解かれる。


おれがゆっくりとボグイッドの元に近づくと、ボグイッドは魔力をその身に纏い、おれに向かって魔力弾を放ってくるがおれはそれを手に魔素を纏い、あっさり払いのける。そしてそうこうしている間にラキカがアリスを抱えてその場から離れる気配を感じる。これでようやく暴れられそうだ。


その後のことは覚えていないが、ふと気がつくとそこにはおれの腕の中で横たわるアリスと、すぐ近くにラキカがいたが、ボグイッドの居城は瓦礫の山と化していた。また、近くに魔物の姿は見えなかったが、同時にコウもその後その場に姿を現すことはなかった。

アリスの戦い方はやはり華があってよいですね。彼女にはもっと活躍してほしいのですが、紙面の都合上やむを得ず。→只の言い訳です。


冗談はさておき、苦戦していたボグイッドを無意識下とは言え、蹂躙するショウ。いよいよ人間離れしてきた気がします。

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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