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始まる激戦

おれたちは城門の外へ移動し、ついに始まろうとしている魔物との戦闘に備える。


「まさかこんな形でまた仕事を一緒にすることになるなんて思いもしなかったな。」


おれの呼び掛けにコウは頷く。


「あぁ、そうだな。こうして一緒にいることができるなんてな。」


おれは転移前の実験の失敗を思い出す。あの時の実験室に響くビープ音と無機質な警告音声が遠い昔のように思い出される。


「あの時みたいに失敗しないようにしないとな!」


コウは首を立てに振り、そして目の前の球に目を向ける。


「ぼくたち2人がいればまずやられることはない。だけど、気は抜くなよ。」


ラキカが手こずったと聞いていたがコウの言う通り、おれたち2人がいたらどんな魔物でもなんとかなる。特に根拠はないがなんとなくそんな風に感じていた。


しばらくするとラキカがやってくる。


「いよいよだな。お前たちの戦いにおれが入ると邪魔になる気がするから、とりあえずおれはそばで見ておくだけだがいいよな?」


ラキカの問いに2人は頷く。


「邪魔になるなんてことはないと思いますが、万が一に備えて待機しておいてください!久しぶりにぼくの本気、お見せいたします!」


その言葉に反応するかの如く、オルガを封印していた白い球にいよいよヒビが入り始めたと思うと、そのヒビから黒い腕が飛び出てくる。そして、その飛びだした腕で自らの体についた白い球体を叩き割るとオルガは全身をおれたちの前に顕にする。おそらく、鳥の雛が羽化するときもこんな感じなんたろう、と思ったが中から出てきたのはそんな可愛いものではなかった。


「ふぅー、窮屈なとこに閉じ込めやがって、でもお陰でしっかりと体が馴染んでくれたぜ!」


どうやって治したのか、ラキカに切られた腕もしっかり元通りに戻っており、その体からは魔力が溢れ出ていた。


「あれ?さっきのオヤジじゃねぇのか?こんなガキ2人で相手になんのかよ?」


どうやら相手はおれたちの実力に気がついていないらしい。どうせなら、気が付かないうちになんとかできるとよいのだが。


「相手になるかどうかは、やってみないとわかんないね!」


おれはそう言って剣を構える。陣形と言えるほどでもないが、事前の話でおれよりも魔法が得意なコウは後衛気味で戦うため、おれが少しだけ前に出る。


「まぁやればわかるか!んじゃ、おっぱじめようぜ!」


そう言うと同時にオルガは地面を蹴り、真っ直ぐにこちらに突っ込んでくる。その速度は予想外に速い。しかし、すかさずコウが全魔法中最速の雷魔法でオルガの移動地点を狙うと、オルガは減速、切り返しをしながら躱す。お陰で、おれもオルガに向かって助走を取ることができそうだ。こちらが止まって相手の剣を受けるのと自分が向かっていきながら剣を受けるのでは断然後者が有利だ。


おれはオルガの直線的な剣を身をかがめて躱しながら、下段からの斬り上げでおれを斬ろうとして伸びた腕を狙う。流石にこのタイミングでは避けられるか、と思いきや、おれの体が青く輝き、体がふと軽くなる。コウが、おれの攻撃するタイミングを見計らって身体強化の魔法をかけたのだろう。


「はっ!」


掛け声一閃、剣を更に加速させるとその剣は届かないと思っていたオルガの腕に届き、そのまま斬り落とす。


「ぐがぁぁ!」


オルガが悲痛の叫びをあげながら斬られたその腕をもう片方の手で追いかけるが、次の瞬間にはその腕を後方から飛んでくるコウが放った超高密度の炎が焼き尽くし、焼き残った跡には手にしていた剣だけが残る。


「よし!」


おれはオルガを離れ先制の成功を喜ぶ。


「てめぇら、よくもおれの腕を!」


オルガはおれたちから距離を取りながら、無くなった腕をもう片方の腕で押さえ、その顔に怒りを顕にするが、その直後。


「なーんてな。ふん!」


オルガが無くなった腕の根元に魔力を集めたと思ったら、掛け声とともに腕が元通りに戻る。


「ま、まじか。」


おれが驚きの余り口をあんぐりとあけていると丁寧に説明してくれる。


「さっきも言っただろう?体が馴染んできたって。そうなればこんなことは朝飯前だ。」


オルガは新しく生やした腕の感覚を確かめるかのようにブンブンと振ると、その手で剣を拾い上げる。


「まぁでも、なかなか面白いな、お前ら。ただのガキではないってことはわかった。ちょっとは楽しませてくれそうだな!」


そう言ったオルガはその剣でおれたちにむかって空を斬ると、魔力の乗った斬撃がおれとコウそれぞれに向かって打ち出される。そして、その斬撃に合わせて、オルガは今度はおれの斜め後ろにいるコウに向かって走り出した。どうやら、先程の攻撃からおれよりもコウが危険因子と考え、先に倒したいようだ。しかし、そうは問屋が卸さない。


おれは斬れ味付与の斬撃でオルガからの斬撃を相殺すると、オルガの足止めに向かう。一方、コウは魔法障壁を目の前に繰り広げ、斬撃を防ぐと、その斬撃のすぐ後ろにオルガが迫る。流石に短剣でオルガの持つ大剣をまともに受けるわけにはいかず、コウは器用に短剣で斬撃を受け流しながらオルガの攻撃を躱す。そして、そうこうしているうちにおれが横からオルガに斬りかかると、オルガは鬱陶しそうにその大剣を横振りにし、おれたちから距離を開けようとする。


「だぁー!ちょこまかと鬱陶しいんだよ!」


オルガのその言葉と同時に魔力が更に高まり、その体の周りに纏う赤い魔力がより巨大に、その勢いは地面の小石を巻き上げるほどとなった。


「やばいぞ!」


おれがその声を上げると同時にオルガはその魔力が十二分に籠もった大剣でこれまでの剣速から予想もつかない速い剣戟でおれを斬りつける。ほぼゼロ距離からの予想外の速さの剣戟におれは躱すことができず、剣でオルガの攻撃を受けると、そのまま遥か彼方まで吹き飛ばされ、おれは背中から城壁に叩きつけられると、そのまま意識を失ってしまった。


「ショウ!」


遠くでおれの声を呼ぶコウの声が聞こえるが、どうやらオルガもおれが気を失っているのに気がついたようだ。


「ようやく2人になれたな。さぁ、たっぷり遊んでやろうか。」


不敵に笑うオルガに余裕を見せるコウ。


「あぁ、精一杯付き合ってもらおうか。どこまで耐えられるか知らんがな。」


その言葉に再び逆上し、コウに斬りかかるオルガだった。

初めてのわりにはやはり昔からの馴染みか、息の合う二人ですが、ここでまたショウは一時戦線離脱となります。

その間はコウが大活躍します!

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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