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父親に正体を明かす

一方その頃、おれはコウと話をした直後に地面を土魔法で掘り進み、戦場から少し離れた馬を止めていたところに出る。


「よし、なんとか戦線は離脱できたな。コウ、上手くやってくれてるよな。」


おれは自分の馬の鼻付近を撫でてやると、早速馬に乗りアーガンスまで急いだ。


一人で移動していることもあって、その日の夜にはアーガンス付近に到着するが、その途中でグレイブが準備した魔物の発生源の森を発見する。


「こいつが発生源か。」


おれは遠くから魔物が発生している森をみると、そこからアーガンスに向かって魔物が列をなしているのがわかる。


「よし、これだけ広ければ大丈夫だろう。」


おれは周囲に人がいなさそうなことを確認し、水魔法と火魔法を両手に溜めるとその手が青と赤に染まる。さらに、おれは魔素の量を調整し、おれの中で何かがピタッとハマるタイミングを確認する。


「よし、こんなところか。」


おれはその手を前に押し出すと修行の森を消し飛ばした複合魔法を発動させる。


「消し飛べぇー!」


おれの掛け声と同時に左右の手からそれぞれ飛び出した青と赤の光は丁度森の手前くらいで交錯し、白い光を放つ。そう、おれは前回の失敗から、決してあの光を近くで交えてはいけないことを学んだのだ。


眩い閃光とともに、そのあと少し遅れてボゴッと遠くで何かが破裂する音が聞こえたと思うと、光はどんどん膨れ上がり、魔物が発生していた森と、近くにいた魔物の群生を一網打尽にする。そして、しばらくすると小石や岩を含んだ暴風がおれのところまで届き、おれは思わず顔を背ける。


風が止んだのを確認し、おれは魔法を打った方向を確認すると、そこには大きなクレーターができており、爆風の影響でアーガンスまで続く魔物の約半数が吹き飛ばされていた。


「ふぅー、だいぶ魔素持っていかれたけど、いい仕事をしたな!」


そう言うと、おれは残りの魔物も斬れ味付与の飛ぶ斬撃で一掃しながらようやくアーガンスの城門をくぐると中にいた騎士たちから驚きの目で見られる。


「そ、外からきた?あの魔物たちを片付けて!?」


おれは照れ笑いをしながら城へと足を早める。城に向かいながら街中を見ると思いの外残された騎士たちが善戦していたようで、街中に魔物はいるものの、王城に築かれた薄紫色の障壁はまだ残っていた。


ようやく城に到着し、城の中にいるはずの王とラキカ達をしばらく探すと、白い球体とともに広間にいるのを見つけ、呼びかける。


「アーガンス王!それにラキカさん、お父さんも!」


予想もしていなかったおれの声に全員が驚き振り向く。


「ショウ、お前オスタとの戦争は?」


ラキカの問いにおれは事情を説明する前に頭を下げる。


「まず初めに、個人の判断でこれから説明する内容を行ったことを先に謝らせてください。すみませんでした。」


「まずは話を聞こう。」


王の言葉におれは頷きながら説明を始める。


「実は、オスタの騎士の中でも実力者の中心人物であり、王族の人間が、今回のアーガンスの魔物襲撃を把握していまして。その人物と協力して、形上はアーガンスの負けという形になりましたが、早々に戦争を切り上げて、魔物を倒しに戻ってきました。もちろん、オスタに対する敗戦の代償は不要になるよう、便宜を図ってくれるそうです。」


おれの説明に当然その場にいる全員が驚く。


「な、なぜアーガンスの人間でも知り得ないことを敵国の一騎士が知っているんだ?」


王の問いにおれは首を横に振る。


「すみません、詳しいことはわかりませんが、おそらく、彼も転移者故の何かしらの能力を持っているかと。」


「お前の知り合いか?」


ラキカの問いにおれは頷く。


「ちょ、ちょっと待て。ショウ、お前何かが根本的にぶっ飛んてると思ったら転移者だったのか!?初耳だぞ!」


「それは本当なのか!?」


これまでおれが転移者だと話をしていなかった2人は驚いている。


「2人とも今まで隠しててごめんなさい。」


おれの謝罪を弁解するようにラキカが補足をする。


「こいつ、次元の申し子だ。あのディーナの力を受けてる。」


その言葉にタリスが手をポンッと打つ。


「なるほど、だからか。ようやく納得がいったよ。」


どうやらタリスは選抜試験の前に精神世界でディーナにあったことと紐付いたらしい。


「と、とにかく、オスタの彼は今回の魔物が邪魔らしくて、協力してくれる気になったらしいんです。本当はオスタとの戦争に勝って、そしてこの国に戻ってくるつもりだったのですが、彼への信用と、この国の状況から判断して戦線を離脱して戻ってきてしまいました。戦線離脱は重罪というのは承知の上でしたが。」


「罪のことはよい。おれの責任で不問とする。」


王の言葉にラキカ、タリスは少しホッとしているようだった。おれは話を続ける。


「それで、近いうちに彼も来ることになると思うのですが、あとどれくらいであの球から出てきそうですか?」


「おそらくあと半日ほどだと思う。とりあえず、ショウも疲れてるだろう?何かあったら叩き起こすから、それまで少し休んでおくといい。」


おれはラキカに礼を言うと、少し休ませてもらうことにする。正直、戦場からこのアーガンスの街に来るまでほぼ不休だったため、魔素もかなり消費していた。


おれはタリスに案内され、タリスたちが待機していたところで、しばらく休養をとりながら、コウが来るのを待つのであった。


◇◇


どうやら、おれはタリス達の待機所につくとほぼ同時に眠りに落ちてしまったらしい。気がつくと、夜が明け、空が明るみ始めていた。


「よし、魔素も少しは戻ったな。これなら多少は戦えるか。」


おれはふと横を見るとそこにはコウの姿があった。どれくらい前に来たかわからないが、同じく

仮眠をして魔素を回復させているのだろう。


おれはコウと話したい気持ちもあったが、とりあえず魔物を封じ込めた白い球のある広間に戻ると、そこにはタリスがいた。


「おぉ、起きたか。」


「おはよ、おかげでゆっくり休むことができたよ。それと、これまで隠しててごめん。それに、戦線離脱のことも。」


タリスは一瞬何のことかわからなかったようだが、思い出したようだ。


「あぁ、お前が転移者だってことか。まぁ正直かなり驚いたが、逆に色んな事が腑に落ちた。あまり気にするな。むしろ、自分の息子がそんな使命を持って産まれてきてくれるなんて誇らしいよ。それに、離脱のことはヒヤッとしたが結果的にそれで国が守れれば問題なしだ。」


てっきりがっかりさせてしまったと思っていたが、そんなことはなかったのだろうか。どちらにしても今となっては過ぎた時間は巻き戻らないし、おれがタリスとマーナの子であることに間違いはない。タリスがそういってくれるなら、それに甘んじるしかないだろう。


「それより、準備はできてるか?お前が強いのは話に聞いているが、あのお師匠様でさえ手を焼く相手だ。」


「うん、ある程度休ませてもらったし、できるだけの事はやるよ。それに、おれ一人じゃないしね。」


「あぁ、そうだな。お前が言ってたオスタの騎士も来てくれたがお前と本当に同い年ぐらいなんだな。まさかこんな2人にこの国の命運がかかってるなんて、だれも思いもしないだろうな。」


そんな話をしていると、当の本人が現れる。


「峰、いや、ここではショウと呼んだほうがいいか。予定通り、戦争はオスタの勝利としたが、お前の頼み通り、敗戦の責任は取らなくて良いように話を通しておいたから。」


そんなことができるのか、と思っていると、改めてコウの名前を聞いて驚く。


「こっちの世界で自己紹介がまだだったな、コウ=オスタ。おれは運良くオスタの王族の子供として転移することができたんだ。」


なるほど、通りでそんな無理難題もやってのける訳だと納得がいく。


「そういうお前はこれからショウ=アーガンスになるんだぞ?」


タリスに釘を刺されるがたしかによくよく考えてみればそうだった。


おれたち2人は転移してからのことをタリスを交えて話をしていると、そこにラキカが現れる。


「役者は揃ったな。街中の魔物も片付いたから、残すところはこいつだけだ。そこで2人に頼みがあるんだが、どうせだからどっか広いところに場所を移してくれないか?こんなところでお前たちが派手に暴れたら、この城が消し飛んでしまいそうだ。」


おれとコウは頷くと、風魔法を使って扉から城の外へと運び出し、おれたちはそのまま宙に浮いて城門の外まで運び出す。


「ここなら問題ないだろう。」


コウの言葉におれは頷くと、いよいよ、魔法障壁にヒビが入り始める。


「さぁ、おれたちの感動の再会はこいつを片付けてからにしよう!」


おれの呼び掛けにコウは頷くと2人はその球に向かって構えるのであった。

ここでようやく魔物一掃のために複合魔法の出番がでてきましたね。あの魔石を集めたらショウは一生遊んで暮らせたでしょう。

そしてこれまで実はタリスにはショウが転移者だということは伝えていなかったのですが、ここでようやくオープンになります。

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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