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ワームホールを抜けるとそこは異世界だった。-チートなしでも努力で無双したい-  作者: 水波 悠
第1章 始まり

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ドSな父親と楽しい朝稽古

朝はめっきり寒くなってきている。ようやく空が明るみ始めた頃、おれとタリスは家の脇にあるちょっとした広場にいた。


「ショウ、おれは一緒に狩りにいった時に、型なんて気にするな、と言ったが、やっぱり基礎を固めるには、型を覚えるのが手っ取り早いんだ。だから、これからは木刀だが毎朝素振りと、打ち合いをする。お前には魔素を感じる力や、それを活かす力があると思うが残念ながらおれはその点に関してはあまり教えてやることができない。だから、その代わりにおれはショウにおれの剣術を教えたいと思う。」


「うん、わかったよお父さん。でも、お父さんの知ってることのあることだけでもいいから、魔素の使い方についても教えてほしいな。」


「よし、わかった。んじゃ素振りと打ち合いをした後に、少しずつおれの知ってることを話そう。それでいいか?」


「うん!大丈夫!よろしくお願いします!」


こうして、おれとタリスの朝稽古が始まったのだった。


◇◇


「どうした?もう疲れてきたのか?まだまだ半分だぞ?」


タリスはおれを追い込むように声をかける。初日こそ、大したことはなかったが、おれがそこそこ体力があることがわかってくると完全にドSのスイッチが入っていた。ちくしょう、こんな重労働、転移前は一度もやったことなかったのに。なんてそんなことを思いながら、おれは500回目の上段斬りをしていた。


タリスと狩りに行った時は短剣だったが、どうやら本格的に剣を教えるつもりらしく今持っているのは大人から見ると脇差くらいの長さだったが、おれの背丈からすると充分立派な長剣くらいの長さがあった。そんなものを500回も振ったら、そりゃ疲れもするわい。


「ほら、どうした、顎が浮いてるぞ!足をしっかり踏み込め!重心を低く保て!」


どやされながらも、おれは黙々と言われたことを反復しながら繰り返す。そう、おれは昔から単純作業が好きだったのだ。そして、繰り返しの中で見つける少しずつの変化、上達を感じるのが好きだった。所謂ドMというやつかもしれない。


「よし!素振りはこれで終わりだ!一休みしたらおれと打ち合うぞ!」


おれは近くに置いてある水筒から水を飲むと、自分自身の熱気で湯気が立っているのが見えた。やばい、気持ちいい。


「お父さん、続きをしよ!」


こうしておれは父親からの熱血指導に染まっていった。


タリスから教わったのは剣術だけではなかった。魔素についても、タリスはある程度の知識があって色んなことを教えてくれた。

まず、魔素を使って引き起こすいろんな現象のことをこの世界でも魔法と呼ぶらしい。

そして、人間は元々多少は魔素を持っているが、まずはじめに、この魔素をコントロールする技術が必要らしい。具体的には、魔素は体の中をグルグルと回っているらしいのだが、それを例えば手のひらとか、足元とかに集中し、留め、その留めた力で体の外界に作用をかけ、魔法を発動される、というのが魔法発動までの一連の流れとのことだった。

また、一言で魔法といってもできることは多種多様で、理論的には自分がイメージできることであれば何でもできるらしい。ただし、いくつか条件があり、この条件によって大部分が制約される。

一つ目は、例えば、手から火を出したい、とか思った場合に、火を出したい場所の酸素濃度を高めて、そこに火花を発生させ、爆発して発生した火の球を風で飛ばす、というような、具体的なイメージができることが第一条件である。イメージが強ければ強いほど、後から説明する魔素の使用効率がよくなるということだ。ただし、これはイメージなので多少無茶苦茶でも、自分が納得できていれば物理法則などは関係ないらしい。

二つ目の条件は、それを具現化させるだけの魔素をイメージした人間が持っている必要がある。例えば隕石を敵にぶつけたい!と思って、遥か彼方にあるであろう隕石を、重力場を変化させて敵にぶつけるとイメージしたとしても、それだけの物理現象を引き起こすだけの魔素がなければ何も起きないのである。

そして3つ目の条件は、生まれ持った人間の性質により、魔素の使用効率と最大放出可能量が決まっているということである。これは、例えば火の球の魔法に素質がある人Aは10の魔素で火の球を出した時に、10の大きさの火の球が出せるのにたいし、使用効率が悪い人Bや最大放出可能量に制限がある人Cが10の魔素をだしても、1の大きさしかでない、ということである。具体的には、使用効率が悪いBの人は、火の魔素の使用効率が10%しかないため、10の魔素が1の火の球の大きさになるが、逆に、100の魔素をつぎ込めば10の大きさの火の球を出すことが可能である。一方、最大放出可能量が制限されているCの人は、どれだけ魔素をつぎ込もうが上限が1で決められているので1の大きさの火の球しか出せないのである。この使用効率や放出可能量は本当に人それぞれだが、基本的にはこの素質がないと、どれだけ魔素の量が多かろうが関係ないため、非常に重要な要素だった。


ここまで説明を聞いたおれは、タリスに恐る恐る聞いてみた。


「お父さんは、どんな魔法を使えるの?」


するとタリスは少し遠い目をして答える。


「おれはな、残念ながら今は全く魔法が使えないんだよ。」


今は?その言葉が妙に引っかかったが、やはり昔何かあったのだろう。これ以上の詮索はやめておいた方が良いと判断し、詮索するのはやめた。タリスよ、お前は過去に一体何があったというのだ。


「そうなんだ、でもその分だけお父さんは剣を頑張ったってことだね!」

「あぁ、そうだな。」


話を適当にはぐらかしながら言ったおれに対し、遠くを見つめながらそう応えるタリスは、どこか物悲しい面持ちだった。


◇◇


タリスと稽古を始めて早1週間。

この日も散々タリスとの朝稽古で疲れ果てたおれは、タリスが朝食を済ませ、狩りに出かけたのをみるとふぅーっと大きく溜息をついた。


「ったく、あのドS親父が。」


マーナがいる台所から少し離れた部屋の片隅で、そう悪態をつきながらもおれはニヤリと笑っていた。確実に、剣術に関しては進歩を感じるからだ。最初は木刀の重さに振り回され、なかなか上手く動けなかったが、少しずつ重さに慣れてきて、木刀の重さを上手く使えるような気がしてきていた。

そして、おれが今からしようと思っていたのは魔素のコントロールの訓練。そもそもどうやってやるのかタリスは教えてくれなかったが、あの銀髪少女のやってたことをおれも真似をしたらよいのだ。なんとなくイメージはついていた。

おれはその場に座りあぐらをかき、両手を軽く広げた。そう、大仏様のポーズだ。特にこのポーズに意味はないので雰囲気である。

目を閉じて、前回魔石を砕いた右手に意識を集中する。このとき、右手だけではなくて全身から右手に向けて魔素を集めるイメージで右手に集中する。すると、右手に暖かみを感じるのでパッと目を開き自分の右手を見ると、あの時のように右手が青白く淡く光っているのが見えた。


「できた!」


と思った瞬間、その光はスゥーっと消えていった。


「あっ、あぁあ、消えちゃったよ。」


そんな独り言を言いながらも、初めて魔素を集めることに成功したおれは一人でニヤついていた。


「さぁもう一度。」


同じように目を瞑ると、先ほど感じた手の温かさを再確認する。そして、その温かさをさらに強いものにしようと、おれはさらに力を込めていくとある程度のところまでは温かさが強くなっていくのを感じたが、あるところで今度は弾けるように飛散した雰囲気があった。


「あれ?今度はパッと消えちゃったよ。」


何度か同じようなことを繰り返すが、何度やっても同じだった。


「んじゃ今度は弾ける一歩手前で止めてみようかな。」


同じようにして、先ほどから光が弾けているちょっと手前で止めると、その状態のまま維持していた。意識を集中したまま、うっすら目を開けてみると、おれの手のひらには青白い光が灯っていた。


「よし!なんとか出来そうだ!」


同じようなことを、今度は左手で、さらにその次は右足で、と繰り返す。それぞれ、留める場所ごとに弾けるまでの容量が違うようで、利き手の右手が一番多かった。また、魔素をコントロールしてる間、左手の傷が光ったりしないかなーと思ったが、残念ながら光らず。暗闇の中で淡く光ったらかっこいいのになーなんて厨二病的なことを思ったのはここだけの話である。


こうしておれは、剣術と並行して魔素のコントロールを少しだけ身に付けることができたのである。

ちょっとだけ魔法について書いて見ています。果たしてショウの魔法の実力はどうなんでしょうね。そして、タリスの魔法が使えない理由、何かありそうな雰囲気ですね。



ご覧いただき有難うございます。面白いと思って頂けたらブックマーク、ご評価を頂けると執筆活動の励みになり、とても嬉しいです。

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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