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任侠喫茶  作者: 笑
6/6

銃声

2月初旬、東京銀座の繁華街では連合会系列の組員達が堂々と威圧しながら闊歩した。

二十余名ほどの組員達の中心には六代目加山一家総長の吉田が居た。


六代目加山一家は結成された明治以来武闘派として名を残し続けた組織である。

現在は政道連合会の傘下組織であるが、組織としての歴史は連合会はもとより政道会本家よりも遥かに古い関東屈指の名門組織である。


抗争秒読みで業界がざわついているという状況であるにも関わらず、この組織はいつもより派手に街を闊歩し豪遊の限りを尽くしていた。

そうする事で組織の景気の良さや構成員数をアピールし敵対組織を牽制するのが加山一家の定石であった。


「親っさん、最近はサツの目が厳しくなってますし、今日はこのくらいにして」

「なんだぁ?本家の連中にビビってんのか?お前もなぁ、仮にも加山の若い衆ならもうちっと胸張って歩けや」

幹部の賢明な助言を吉田は一蹴し、組員を連れ馴染みのクラブに入っていった。


時場所を同じくしてある男は人生の岐路に立たされていた。

名は張本庄司。台湾系華僑の出自であり16の時同じ華僑の友人に誘われ華僑系犯罪グループに入り裏社会に足を踏み入れた。

当時は隆盛を極め、一日で数千万稼ぐと言われた華僑系犯罪組織の衰退は著しく、今では東京で不法入国の中華系女性の売春斡旋を主なシノギとしているに過ぎなかった。

それも不景気でロクに上がらず職歴なし前科ありのまま齢40を過ぎた彼にとってまたとない話が先日転がってきた。

加山一家総長の暗殺に5000万出すという者が現れたのだ。

本当は億要求したいところであるがそれでも今の彼にとっては破格の値段であった。その金を持って自身の心の祖国とも言える台湾へ高飛びする計画であった。


彼はリクルートスーツを着込みビジネスマンの匂いを漂わせながら遠目に吉田総長達を付けていた。


そんな事とは露知らず吉田達は高級クラブの奥の席でママ同席の下盛大な宴を催していた。

「遊びに来てくれて嬉しいわぁ。最近なにかと物騒だって言ってみんな遊びに来なくなっちゃったのよ」

「加山とそこらの成金組織一緒にしちゃいけんよ!ワシらチャカと腕で飯食ってきたんじゃ」

「あらやだ。お連れの人にそんな物騒な物もたしてないでしょうね?嫌よ、店で撃ち合いなんて」

「そんなもん持たしちゃいねぇよ!四六時中チャカぶら下げてたら皆ムショに行っちまうつーの!」

そうとも知らず吉田は馴染みのホステスと下らない会話を繰り広げていた。


「まぁ、このご時世堂々チャカで相手仕留めてくるバカはそういないでしょう、それもうちのオヤッサン相手に」

「そうよ!わしら加山一家は昔も今も東京の最強組織だからな!」


部下のヨイショに気を良くしている最中一人の男がクラブの入り口を開けた。


「申し訳ございませんお客様。当クラブは会員制でして」

側に居たボーイが即座に対応した。


「あぁ、すいません今奥にいる吉田いう人の連れでして」

「少々お待ちください」

そう言ってボーイは確認の為背を向け奥へと歩を進めた。


しかし男は待たなかった。ボーイを押しのけ、吉田達のいる下へとゆっくりと歩むと。

「おう、なんだテメェは」

吉田の連れが立ち上がった時にはもう遅かった。

男は腰から拳銃を取り出すと立ち上がった護衛のチンピラの胸めがけてッパーンと乾いた音を立てた。

刹那その音がなった瞬間に緊張が走る。吉田の側に居た組員は慌てて吉田に覆い被さろうとしたがそれも遅かった。ッパーンと響いた二発目の銃声は吉田の額に向けられた物だった。ッパーンッパーンッパーンと連続した銃声が響く。

吉田の頭部に二発、覆いかぶさった組員の後頭部に一発、そして慌てふためく別の護衛の肩に一発。

「親っさん!!!!頭!!!!!」

「オヤッサン!!!!!!!!!!!!!!!!」



「きゃあああああああああああああああああああああああああああ」

最初の銃声が鳴ってから十数秒ほどであった。場内は悲鳴に包まれた。

「なにさらしとんじゃコラァァァアア」

五体満足の者の中には咄嗟に精一杯の虚勢を張りヒットマンを威嚇した者も居たがヒットマンの答えは無慈悲にも乾いた銃声のみであった。


その後男は反転し、逃走。周りの組員も追いかけようと最初は走ったがすぐに銃での反撃に会い断念した。

わずか一分ほどの犯行で三人が死亡、四人が重症を負う大事件となり、今まで冷戦状態であった抗争はついに本格化の体を見せる様になった。


そしてこのヒットマンの姿を見たものはその後居ないという。


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