表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
任侠喫茶  作者: 笑
1/6

12月某日の喫茶店

続けれるよう頑張ります。

よかったら感想ください。

とある地方の喫茶店内にて――


「昨夜未明、関東最大の暴力団で政道会の会長、金元直継(72)が息を引き取りました。死因はくも膜下出血とのことで警視庁は突然組織の頭目を無くした事に起因する抗争事件等に警戒を強める方針です。では次のニュース….」


「兄貴は葬式行かんでいいンすか?」

「もう関係ない話だ、それと何度も言うが兄貴と呼ぶのはもう辞めろ」


私の名前は滝田秀俊。元政道会菊永組若頭。一般的に暴力団幹部と言われていた人種だ。

18年前、とある組織との抗争事件で殺人罪として逮捕起訴され3年前、出所と同時に足を洗い今は地元関東から遠く離れた北陸で小さな喫茶店を営んでいる。

齢は去年48を数えた老輩物だ。


「渡世に未練は無いんですかい?」


「あるわけがない。それよりお前こそこんな所で油売ってていいのか?」


「俺みたいなぁチンピラ。本家の親分が死のうと雲の上の事ですよ」


「それもそうだな」


私の経営している喫茶「東欧」は偶に過去の知り合いが訪れる。今訪れている客は1人だけ、中嶋正という暴力団員だ。


元々私と同じ組織、つまりは政道会菊永組の構成員だった。

しかし私が喫茶店を初めて丁度1年後、突然北陸に菊永組の支部団体「中嶋組」が出来たといい私の下にやって来た。

私からすればいい迷惑だがそれ以降度々うちの店に足を運んでいる。


カランカラン

「いらっしゃい」

「どうも伯父貴」


客だと一瞬期待したが、よくうちの店に中嶋と一緒に来る中嶋の子分だ。恐らく迎えに来たのだろう。

「親っさん、本家から早急に出向くようにと連絡が」


「えーー、体調不良って事じゃだめか?」


「行ってこい、お前も一応極道の端くれなら義理事だけはすましとけ」


「俺は兄貴とゆっくりコーヒー飲んでる時間の方が好きなんですけどね」


そう言いながら渋々席を立つと中嶋はいつもの如く千円札を置いて帰って行った。


コーヒー一杯500円分しか注文していないが奴はいつも札を置いて帰る。ありふれたヤクザ流の礼儀だが暴力団組長がたったの500円分しかチップを残さないというのも悲しいものだ。


私が現役だった頃は好景気という事もあり、最低元の値段+5000の色を付けて帰ったものだが。

最近のヤクザは本当にシノギが厳しいのだろう。


大方義理事と言っても香典をたんまり搾り取られるだけで行きたくない気持ちは痛いほど伝わる。


カランカラン

「いらっしゃい。お好きなとこどうぞ」


今度はいつもくる女子中学生だった。

「こんにちは。コーヒーとブリヌイ、中身は鮭で」

「はいはい、いつものね」


この女子中学生、名は美穂と言う。いつも4時くらいになると制服姿で来店しカウンターに座りコーヒーとブリヌイを注文する常連だ。今日も長い黒髪を揺らし、うちの店にやって来たと思えば案の定その「いつもの」を注文してきた。


「おじさんのブリヌイ、いつも変わらず美味しい」

「そう言ってもらえるとロシアに留学した甲斐があるよ」

「ほんと、なんでそんな所に留学なんてしたのかいつも不思議に思うわ」


留学していたのは本当だが一般的な留学ではない。前職の関係で半分は高飛び、取引の意味合いがあった。前職の事について彼女は何も知らない。


「ずっと聞こうと思っていたんだけどおじさんって家族いるの?」


「いいや、ずっと独身だよ」


「もったいな~い。私がお嫁さんになってあげよか?」


「悪かねぇ話だが、美穂ちゃんまだ中3だろ?まずは高校に受かるところからだな」


「受かるよそんくらい!私頭いいし!それより知ってた?女の子って結婚は16から出来るの。家庭科で習ったんだ」


「あぁ知ってるよ。そしてそれが18に変更されるってのも知ってる」


「別にいいじゃん、そんな細かいこと。そんな事言ってるとジョシコーセーにモテないよ」


「別に今更モテようなんて気は無いよ。特にそんなガキ相手なんて」


「ウッソだぁ。男の永遠の憧れは女子高生ってみんな言うよ」


「なら頑張って勉強することだな」


「はいはい、すればいいんでしょ。ここでしていいでしょ?」


「そりゃ勿論」


そう言うと美穂ちゃんは徐ろに教科書と参考書を開いて勉強を始めた。美穂ちゃんの家について詳しくは知らないが母子家庭で親は夜の仕事をしているらしい。


「はぁ…疲れた」

3時間程経ち店終いでもしようとした途端に美穂ちゃんが口を開いた。

「帰るのか?」

「うん、あのさ、この店バイトとか募集してない?」

「バイト?美穂ちゃんバイトしたいの?」

「うん」

「今の所それは考えてないけど、まぁ美穂ちゃんが高校に無事受かったら考えてみるよ」


「本当!?」


「あ、あぁ」


「絶対だからね!」


「あぁ検討しとくよ」


「検討じゃなくて絶対!!」


「あぁわかった絶対」


「よし!それじゃ!」


そう言い残し美穂ちゃんはお代を置いて帰って行った。

趣味でやっている店故そんなに忙しくはないのだが、勢い余って絶対なんて言ってしまった。

まぁなんとかなるだろう。


今日は店終いだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ