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顔馴染み、武器、覚悟

 武器屋に行く途中、何度か声を掛けられた。


 と言っても俺にじゃない。アーニャちゃんにだ。

 冒険者ギルドの受付嬢なんてやってりゃ、そりゃ顔が広いわな。

 今日はお仕事いいんですか?


 会話の流れで、後ろをついて歩く俺について聞かれる事が多かったのでちゃんと説明したさ。

 アーニャちゃんと同じ屋根の下で一晩を過ごした榊真吾!サカキシンゴです!

 相手には大ウケしてたけどアーニャちゃんは真っ赤になって慌ててた。


 そんな事を繰り返してたら、ついには俺に話が振られるのを遮られる様になる始末だ。

 しょぼん。


 でも何となくわかってきた、

 多分今まであの親父が睨みをきかせてたから、異性関係でからかわれる経験が無いんだろうな。

 とっても初々しい反応がそそられますわ。

 だからちょっと調子にのっても仕方が無いと思うの。


 ―――◆――◆――◆――◆――◆―――


 俺たちは東広場にある大きな武器屋に来ていた。

 太陽がこっちから昇ってるから多分東で合ってるはず。


 来る時に、からかわれてむくれるアーニャちゃんの注意を逸らすために聞いた話によると。

 この街は城を中心とした円形の構造をしており、東西南北に門がある。

 門と城の中間位置にそれぞれ広場が存在するが、城を囲むように存在する中央広場が一番大きい、とのこと。


 言葉じゃ全然想像できん。

 お皿に載った大福に、真ん中に一つだけ団子が残った串を、上下左右からぶっ刺したような形?

 多分違うと思う。

 帰りに地図買っとこ。


「ごめんちゃーっす」

「いらっしゃいませ……あら? アーニャ、久しぶりね」


 中に入ると紫色の髪をしたゆったりした服の女の子が近付いてきた。

 多分年はアーニャちゃんより二つ三つ年上かな?

 この子はケモノ耳じゃない。人間のお嬢さんだ。


「リーゼも元気そうニャ」

「ええ、私はまだ店を任されてないからね。でもアーニャはギルド職員でしょう? 冒険者の人に虐められたりしてない?」

「同い年なのに子ども扱いするニャ!」


 あ、同い年なんだ。

 じゃあアーニャちゃんが年齢の割りに小さいだけなのかな。

 や、種族差とかかもしれないけどさ。


「それで、今日は今から外に行くの? 見慣れない方と一緒だけれど」


 おっと、俺の出番か。


「初めまして、榊真吾です! お義父さんからアーニャちゃんの事を任され……」

「ニャアアア!? ニャアアアアア! ニャアアア!」


 アーニャちゃん興奮しすぎ。

 発情期なの?


「へーえ、ふーん、あのグレアムさんがねぇ……」

「リーゼ違うニャ! この人はおとーさんの知り合いニャ!」

「そうなの? じゃああながち間違いでもないのかしら」

「誤解ニャアア!」


 ―――◆――◆――◆――◆――◆―――


 一頻りアーニャちゃんを弄った後、武器を見せてもらう事にした。

 このリーゼちゃんて娘、話が合いそう。

 主にアーニャちゃん方面で。


 そのアーニャちゃんは冗談だった事に気付いて涙目でこっちを睨んでいる。

 俺見られてる!見られてるよ!もっと見て!

 我々の業界ではご褒美です。


 なので笑顔でサムズアップを返しておく。

 あっ、顔逸らされた。


「シンゴさんはどんな武器をご所望ですか?」

「うーん、あんま重いのはやーね。魔法主体で扱いやすいのねーかな」


 しょうがないのでリーゼちゃんとお買い物の話をする。

 彼女はこの武器屋の娘さんで、たまにこうして店の留守番をしているらしい。

 現在両親はお城に出掛けてるんだとさ。


 そういうのは二人の時に言って欲しいね。

 今、家に親いないの……とかさー。


「魔法使いなんですか? それなら杖とかメイスとかがオススメですが」

「でも剣士でもスキルさえ覚えれば同じ様に魔法使えるんじゃねーの?」

「そんな事はないですよ。個々の資質によって得手不得手がありますから」


 その括りだと断然俺は魔法使いです。


「そういえば予算はお幾らほどで?」

「えーとね……」


 俺は昨日貰った伐採クエストの報酬をリーゼちゃんに数えてもらう。


「この予算ですと、杖と碑文を買うのが良いと思います」


 杖とかの魔法使い向け武器は、短剣などに攻撃力で劣る代わりに持った際だけ使えるスキルが記憶されていて、何度も使ううちに杖無しでも使えるようになる。


 碑文と言われる小さな石版は、読むだけでスキルが手に入るけど、そこらの武器より高い上に使い捨て。


 この2つを買うのが良さそうだと提案されたので、それを念頭に選ぶことにした。


 ―――◆――◆――◆――◆――◆―――


「ありがとうございました。スキルを習得したらまた買いにいらして下さいね」

「あーい、さんきゅーね」

「アーニャも、今度はこちらが顔を見せに行くわね」

「そんな事言っても、リーゼはあんまりこっちに来ないニャ」


 よっしゃ、武器ゲット!

 昨日稼いだお金を結構使っちゃったけど、やっぱこういうのはたぎるね!

 男の子ですから!


 購入したのはストーンウォール(石の壁)のスキルが記憶された短杖(ワンド)と、マイティストレングス(強い力)の碑文。

 既に碑文の方は使用してただの石版になったからリーゼちゃんに捨ててもらった。

 マイティストレングス(強い力)は一定時間筋力を増加させる的な?

 装備重量増えたしね。伐採クエストで荷車引く時も使えそうだし。


 マジカルバレット(魔法の弾丸)で攻撃、ハイネスヒーリング(高位の癒し)で回復が出来るから。

 ストーンウォール(石の壁)で防御、マイティストレングス(強い力)で積載量を向上した形かな。


 割りとバランスいいんじゃない?いいよね?


「じゃあ討伐クエストに行こーかな? アーニャちゃんはどーすんの?」

「え? わたしも行きますニャよ」

「いやいや、アーニャちゃんに傷でも負わせたら俺があの親父に殺されるって!」


 ここまでの発言をチクられたら既に手遅れな気がするけど!


「大丈夫。おとーさんに頼まれたんですニャ」

「うっそーん」

「本当ニャ。『初戦は心配だから見てやって欲しい』って」


 へー、あの親父がねえ。

 アーニャが戦うなんて許さん!とか言い出しそうなのに。

 そういや元冒険者みたいな話してたし、そこらへんは寛容なのかな。


「アーニャちゃんて強いの?」

「お兄さんよりは強いですニャ。リーゼともたまに狩りに行くニャ」

「マジかよ」


 女の子に断言されるほど弱く見えんの、俺。

 まあ何だかんだで転生してからまだ戦ってないんですけど!

 確かにちょっぴり怖くはある。


 でもアーニャちゃんはあんまり戦いに対して恐怖を抱いて無さそうだ。


 そうだよな、戦うって事は……


「傷物にされる覚悟があるってことか……」


 あっ、アーニャちゃんがダッシュで逃げ出した!

 速い速い!さすが猫耳!追いつけない!


 待って待って!

 冒険者ギルドの場所まだ覚えてないの!

 迷子になっちゃうから!

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