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換金、親子、肌色

 荷車に載せるのも疲れたけど、運ぶのはもっとしんどかった。

 たまーに通る馬車の邪魔にならないように、荷車を道から除ける度に休憩してたらあっという間に夕方だ。

 休憩回数は20回から先は数えてない。


 ていうか冒険者ギルドでアーニャちゃん達昼飯行ってたじゃんよ。

 俺昼飯食ってないじゃんよ。まあ食う金無いけど。

 その事に気付いたら余計力が抜けてった。


 でも何とか日が暮れる前に冒険者ギルドまで運んできたぞ!


 幼女?そんなの気にしてる余裕ねーよ。

 周りなんて見る余裕も無かった、前以外見たら足が止まっちまうわ。


 ―――◆――◆――◆――◆――◆―――


「ただーまー……」

「お、運が良かったな。ちょうど今閉めようとしてた所だ」


 冒険者ギルド前で何やら看板を外してた筋肉ダルマに声をかけると、ギリギリセーフで受付してくれた。


「おお、あれだけの時間で結構な量を取って来たな」

「まあねー……」


 タンマ!

 ちょっとタンマ!

 今息を整えるから!


「ふぃー、一息ついた。で、この後これどうすりゃ良いんすか?」

「まずは荷車ごと裏手に持ってこい。そこで計量する」


 えーやだー。また運ぶのー?

 それくらいやってくれよー。

 その筋肉は飾りかよ。


「……どうした?」

「あ、ハイ! 今いきまっす!」


 チラッとマジカルバレット撃ったらどうなるか考えてたら見透かされる様に声かけられて超びびった。

 こいつはまだ倒せそうに無い予感がひしひしとするぜ。


 ―――◆――◆――◆――◆――◆―――


「よし、こいつが今回の報酬だ。受け取れ」


 あの後。

 ギルド裏で荷車に積んだ木材を計量して。

 筋肉ダルマが片手で木材を載せた荷車を持ち上げて倉庫っぽいのにしまって。

 一度建物の中に入って金の入った袋を取ってきて、俺に渡しながらそう言った。


「あざっす」


 あー、ケンカ売らなくて良かった。

 あれを片手で持ち上げるとかどんな化けモンだよ。


 既に陽は落ちて辺りは薄暗い。

 酒場の明かりがあるからここらへんはまだマシだが。


「そういやアーニャから聞いたが、即日で金が欲しかったんだって?」

「そっすね、金が無かったんで。これから飯っす」

「じゃあ宿は? もう取ってあるのか?」

「それもまだっす。どっかいいとこ知ってたら教えて欲しいっすね」


 筋肉ダルマは腕を組んで考えるポーズ。

 え?もしかして今からじゃ宿取れないの?


「……ウチ、来るか?」


 アッー!


 おいバカ止めろ。

 そういうフラグは要らないの。


「普段良く見る冒険者の連中と違って、えらくヒョロくて弱そうだったからよ」


 そういうのを組み伏せるのがいいんですね。

 わかりません!

 わかりたくありません!


「ウチのアーニャが、明日には死んでるんじゃないかって物凄い心配してたんだよ


 ん?

 ウチのアーニャ?


「えっと、つかぬことをお聞きしますが、アーニャちゃんと筋に……貴方のご関係は?」

「娘だが?」


 えっ。

 こんな筋肉ダルマからあんなかわいい子が生まれるの?

 遺伝子って不思議!

 てことは嫁さんも猫耳かよ!こいつ勝ち組じゃねえか!


 いや待て。

 大事な事がある。つまりこの筋肉ダルマは……。


「お義父さん……ッ!」

「よしわかった。ここがお前の墓場だ」

「嘘っす! ごめんなさい! 冗談っすよ!」


 怒りのオーラを纏って筋肉が膨れ上がるお義父さ……筋肉ダルマを前にして。

 俺は全力で後退りしながら弁解した。


 ―――◆――◆――◆――◆――◆―――


 あー焦った。

 ああいう時って咄嗟にブック出すの忘れるな。

 いつでも出せるように日頃から習慣づけてないとダメそうだ。


「いいか? 俺は即日でクエストを終わらせたお前を信用して家に上げるんだからな」

「わかってるっす。心配してくれてたのにほんとサーセンっした」

「アーニャに手を出したらお前の全身の骨を逆側に曲げてやるからな」


 こえーよこの親父。

 親バカってレベルじゃねーぞ!


「くれぐれも気をつけろよ……と、ここだ」


 筋肉ダルマはとある一軒家の前で立ち止まった。

 冒険者ギルドよりも城に近い位置にある庭付き2階建ての家屋だ。


 つーかでけえ!

 このオッサンもでかいけど家も半端無くでかい。

 冒険者ギルドで働いてるの見てなかったらどこの貴族だよ!って思う様な家だ。

 これ維持費大丈夫なん?


 門を抜けて花が咲き乱れる庭を通って玄関へ。


「ちょっと待ってろ。『ブック』!」


 と、何故か玄関の前でブックを呼び出した。

 何してんの?


 俺の見る前で筋肉ダルマはブックを玄関の扉に押し付ける。

 すると扉に金色の魔法陣が浮かび上がり、カチャリとドアロックが外れる音がした。

 あれ鍵にもなんのか。


「『エンド』! 待たせたな。……なんだ?」

「そのブックって俺もやった方がいいんすか?」

「……お前がやったらセキュリティが反応して防衛魔法が作動するぞ。さあ入れ」


 へー、防犯も兼ねてんのか。

 セ○ムもビックリだな。


 俺は扉を開いてる筋肉ダルマに頭を下げて先に入れてもらう。

 するとそこには……


「おとーさん、お帰りニャさい! お仕事お疲れさ…………ニャアアア!?」


 風呂上りなのか、薄着で濡れた髪を拭きながら笑顔で俺を待ち受けるアーニャちゃんがいた。

 いや、筋肉ダルマと勘違いしたんだろうけど、さすがにその格好で玄関に出てくるのは……ありがとうございます!


 驚いて身体を隠すように両腕で抱いてしゃがみこむアーニャちゃん。

 でも隠し切れずにタンクトップや短パンの隙間から覗く肌色が……ありがとうございます!


 猫耳だけどあんまり毛深く無いんすね、ありが……ハッ!

 後方から殺気!


「ぶ、『ブック』! っぎゃあああああああ!」


 振り向いて本出しただけじゃどうにもならねえよ!


 俺は筋肉ダルマの怒りの一撃を食らって宙を舞い、背中から壁に叩きつけられた所で意識を失った。

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