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転生、不発、幼女

 オーケー簡潔に。

 異世界転生した!


 何?これじゃわからない?

 しょうがない、一から説明しよう!


   ―――◆――◆――◆――◆――◆―――


 ある日大学の帰り道、深夜に自転車こいでた俺こと榊真吾さかきしんごは信号無視のトラックに轢かれました。

 ああ死んだわと思ったけど目覚めたらNO天国!

 背景真っ白な空間で、頭上から月桂樹の冠かぶったギリシャ神話の女神みたいな人が見下ろしてんの。


 聡明な俺は悟ったね。

 あ、これは異世界転生きちゃうー?きちゃうの?

 やっぱ持ってる奴は違うなー。これが運命力の差と言うものだよ。

 俺、大勝利――と。


 で、予想通り異世界に送ってくれるって話になったんだけど、厳密には転生じゃないんだとさ。

 なんか死亡時の肉体を復活させて送り込む的な?赤ん坊からやり直さなくて済むって話ですよ。

 まあいい歳してオムツ履くのも嫌だしアリっちゃアリだね。


 その流れで定番のチート能力授与に移りまーす。女神様マジ大盤振舞い。

 このまま行っても人生ハードモードですからー、貰える者は貰っとかないとね。


 貰うのはもちろん魔法技能!

 何でかって?

 色々理由はあるけどソロならこれが最適と判断した。


 ぼっちプレイ?ノンノン。

 一人で出来ることには限界があるだろうし、パーティー組むのも良いよね。

 でも一人で出来る限界までは一人でこなしたいな、と。

 自分以下の実力しかない仲間とか願い下げですよん。


 という事で魔法の素養を最高ランクまで上げてもらって強くてニューゲーム、スタート!


   ―――◆――◆――◆――◆――◆―――


 現在地点はでかい草原を横切る一本の道の上。

 道の先は見える範囲で白くて高い塀のある城と森に繋がってる。

 当然城に行きますよね。装備も無いですし。

 さすがにデスゲーム状態で初期装備のままうろつくのは避けたい。


 しかしその前にやらねばならない事がある。


 俺は肩幅に足を広げ、左手を腰に、右手を広げて前方に突き出し


「ステータス、オゥプン!」

 しかし何も起こらなかった。


 右手で顔を覆って呟く。

「アイテム、ブォックス……ッ!」

 しかし何も起こらなかった。


 道端の雑草を指差して唱える。

「レッツ、クァンティー!」

 しかし何も起こらなかった。


 よしよし。

 ステータス、アイテムボックス、鑑定と全て反応無し。

 よくあるゲーム風異世界とか、それこそ雰囲気ぶち壊しだからな。

 この異世界は好感が持てますよ。異世界ソムリエの俺が80点をあげましょう。


 ついでに魔法もやっちゃう?やっちゃう?


 やっちゃおう!


 やるのは勿論アレですよね!

 俺は空に向けて両手を高く上げて叫ぶ。


「ファイアボールッ!」

 しかし何も起こらなかった。


「んん?」


 何も出ない。どゆこと?

 ボールじゃないパターン?


「ファイアアロー! ファイアランス! ファイアシュート! ファイアエッジ! ファイアソード! ファイアバレット!」

 しかし何も起こらなかった。


 うーん呪文の特定が難しいな。

 フレイムやフレアまで入れたら選択肢広すぎじゃね。

 最悪フラムとかフィアンマだったりしたら目も当てられない。


 やめやめ。

 どうせそこら辺に他にも使ってる人いるっしょ。

 それ見てパク……覚えればいーよ。


 さて城に行くか。


   ―――◆――◆――◆――◆――◆―――


 城までの道すがら、周りの景色を楽しみながら歩いてると進行方向に茶色い人影を発見した。


 おっと、第一村人ディスカバリー。

 よっしゃあファーストコンタクトだ!

 者どもであえーであえー。


 と意気込んで近付くも、相手の姿がはっきりと見えるにつれて段々とテンションが下がっていった。


 その人影は小柄だった。


 小柄って言うか、どう見ても子供だな。

 汗とアンモニアの混じったすっぱい臭いを漂わせた、ボロ切れしか呼べない布を身に着けた10歳くらいの女の子。

 服と同じようなボロ切れを頭から被り、そこから覗くのは死んだように生気の無い赤い瞳。

 元は瞳と同じ赤だったであろう髪は、一房だけを残して殆どが真っ白になってる。


 そんなホームレス幼女が一人で、道端に体育座りで本読んでる。


 ……いやあ、さすがにこれは気軽に触れちゃダメなやつでしょ?

 やっぱ異世界って言っても華だけじゃ無いのよねー。


 正直スルーしようか迷う。

 周りには俺と幼女以外居ないし、無視しても咎められる事は無い、と思いたい。

 そんなことを考えつつ幼女の前を通り過ぎる。


 でも一応声かけとこ。


「どしたのお嬢ちゃん、大丈夫?」

「……」


 あーらら、これこっちが無視されてますわ。

 不機嫌そうにこっちを見るとか、身じろぎするとかそういう素振りも全く無し!

 ちょっとだけヒロイン登場?とか思ってすいません。完全に不審者扱いですね。


 うん、一応義理は果たした。もういいだろ。

 俺は今度こそ幼女に背を向けて城へと歩き出した。

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