不老不死になるためには
「────まあこの手術が完全に成功すると、理論的には180年以上生きることができます。その間、絶対科学は発展しているはずなので脳の情報をなにか別なものに移してロボットなりサイボーグなりに移植すれば理論的に不老不死になれるのですよ」
いかにも悪のヤミ医者のようななりの人が薄ら笑いをしながら自分に説明してきた事はとても魅力的な提案だった。
全くこの人には娘が社会的にバレてはいけない傷を負い、治してもらった時から世話になりっぱなしだ。
「それで、お金の方はどのくらい──?」
「いえいえ。お金の方は要りません……その代わりといってはなんなんですが、手術が終わった後に残った身体を私の研究の方に使いたいのですが……よろしいでしょうか?」
「本当ですか!……あ、でも娘が……」
ヤミ医者は少し考える素振りを見せた後、納得したように手を叩く。
「では、貴方の娘さんと財産は貴方が目覚めるまで私が責任をもって預かります。なので安心してプカプカと浮かんでいれば大丈夫ですよ」
「本当ですか!?」
もう断る理由など見付からない!
自分は人生で一番と言って良いほどの喜びに震えていた。
──だから気付かなかった。作戦通りと顔を歪めるヤミ医者の姿に。
「さて、もうこの時代との別れは済みましたか?」
手術当日。自分はこれでもかというほどにこの時代を満喫した。
美味しいものを沢山食べ、仕事もせずだらだらと過ごし、娘と色々なことをした。
「はい」
「では麻酔をするのでベッドに寝てマスクをつけてください」
言われた通りにマスクをつけると、強制的な睡魔が襲ってくる。
「あ、最後にこの契約書にサインを」
文字すらも見えない程だったが、自分は導かれるまま契約書に判子を押す。
──瞬間意識が途切れた。
「よし、手術成功っと」
どうやら手術が終わったらしい。
『…………?』
瞬間体が燃えた。
痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いッッ!
「。 、 !」
痛いと叫びたかった。早くここから出せ!と怒鳴りたかった。
──しかしいくら口を動かそうとしても声は出てこない。
暴れてでもここから脱出したかった。取り合えず目の前のガラスを殴りたかった。
──しかしいくら手足を動かそうとしても物音一つしない。
「痛いか?」
ヤミ医者の声だ。
「──当たり前だ。神経を全部切られてそのままホルマリンに浸けられているんだ。痛くない訳がない」
『…………何故こんなことをッ!』
「私には貴方が何を言っているのか分からないが……さしずめ何故こんなことを、だろうな」
『…………』
「何も何故も無い、貴方は不老不死になりたい。私は貴方の娘が欲しい……私の欲望だけじゃなく貴方の欲望も叶えてるんだ。なにか言われる筋合いは無いと思うのだが?」
『叶えるも何もない!痛いんだ!麻酔でもなんでもいい!早くどうにかしろ!』
「ん?次は娘の話か?……そうだなたまに私の物になった娘を見せてやろう」
『娘なんざどうでもいい!痛いんだ!どうにかしてくれ!おい!』
心なしか痛みが徐々に強くなっている気がする。
「そろそろ麻酔が切れるが……その前に一つだけ絶望へのヒントをプレゼントしよう──私は理論的には何年生きられると言ったかな?」
アイツは説明のときなんと言っていた?
何故だかフィルターがかかったかのように思い出せない。
……確か……そう。理論的には180年以上は生きられると言っていたんだ!
────それに気づいた瞬間。麻酔が完全に切れたのか何も考えられない程の痛みが全身に広がった。
「くっくっくっ!永遠に絶望し続ければればいい……ッ!」
私は脳みそを放置したまま、完璧に自分の物となった娘の元へ向かって行った。
今回はどうでしょう?
少しずつスピードが上がってきている気がします。
次は速くて面白い話を作れるように頑張ります!
新酒呑童子の野望の方はもう少しで終わります!
宜しくお願いします!