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化け族  作者: 紅崎樹
8/8

その後

 俺の寿命は、もう長くはなかった。魂は残り四分の一。残りの魂を吹き込む母体は、生憎まだ見つけていなかった。

 今日は久しぶりに利人に会う。前に会ったのはいつだったか。かれこれ数年ぶりの再会だ。

「よっ、隆。久しぶりだな」

 待ち合わせ場所は、俺たちが初めて兄弟を喰った場所だ。この村に帰ってくるのも、あの日以来ぶりだった。

「おう、利人。随分大きくなったな。まさか、この年で身長が伸びるとは」

「まあな。成長期は人それぞれだって言うし。ってか、お前が縮んだんじゃないか?」

「そんなこと……とは言い切れないのが悲しいな。最近は測ってないからわからないけど、もしかしたら縮んでるかもしれない」

 それから他愛もない話をしているうちに、時間はあっという間に過ぎた。そろそろ俺も利人も行かなければならない。

「なあ、お前はあとどのくらいだ?」

 別れ際、俺は訊いた。利人の答えは

「三分の一……残るは一人だ」

 と言うものだった。

「お前だって、そんなものなんだろう?」

「ああ。俺の場合は四分の一だ。お互い、もう長くないってことには変わりないな」

 そう言って苦笑いを浮かべると、利人も笑った。少しの間二人で笑いあっていたが、それが落ち着くと、利人は表情を切り替え、

「俺は明日、最期の使命を遂げる予定だぜ」

 はっきりとそう言った。

「……そうか」

 勿論驚いたが、顔には出ていなかったと思う。

「俺はまだ、いい母体を見つけられていなくってな。後を追うのはもう暫く先になりそうだ」

 しばらく間があり、そして利人が口を開いた。

「俺たちの人生って、何だったんだろうな」

 それはまるで、独り言のようでもあった。最期の使命を遂げる予定だと俺に告げた時は、潔く言い放っていたが、やはりこちらの世界に未練があるのだろう。本当は、死んでいくのが怖いのだろう。

 どんな言葉を掛ければいいものか、俺はしばらく考えて、そしてこう言った。

「そんなの、答えは決まってる。先祖代々長らく築き上げて来た、化け族の歴史を途絶えさせない為の、ほんの短い架け橋だよ」


 翌日、俺は地元の村で、あっさりと最後の母体を見つけることができた。最期を地元で過ごせるなんて、夢にも思っていなかった。

 利人はもう死んでしまっただろうか。

 そんなことを考えつつ、俺は物陰から、ある女性の身籠っている新たな命にめがけ、己の残りの魂を吹き込む。

 名も知らぬ子よ。

 身勝手な願いだが聞いてくれ。

 俺の魂を、どうか後世まで引き継いでくれ。

化け族の最終話でした。七話と八話の間に大きな空間がありますが、そこは読者の方の想像にお任せします。凄い無責任ですね、すみません。

この話は、本当は狼の独争を書き終わる前から完成していたものなのですが、どうも気が乗らなくて更新せずにいました……ですが、無事最後まで載せることができ一安心です。最後まで読んで下さった方、本当にありがとうございました。

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