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臨戦態勢!

だいぶ日にちを開けてしまったことをお詫びいたします。

 外に出ると早朝特有の霞がかった太陽がぼくらを出迎えてくれた。ぼくの心もこれからのことが不安で靄がかかったようで気持ち悪い。しかも出たとたんにぼくの感じれる範囲でもすでに五匹以上の敵意がこの屋敷へと向かってきているようだ。

 人間と猫というのは全然違った感覚で生き物を感じ取れるものだと今更ながらに感心した。今は目を閉じるだけで物音がするわけでもない相手の生きている存在感というかオーラというかそこにいると感じ取れる。これじゃ人間が野良猫を捕まえるのが難しいわけだ。

「なんか物騒な雰囲気を持ってるのが近づいて来てるな」

「お、スズっちわかるのか。流石だな~。だいたい十匹位かな?」

「う~ん、ぼくは五匹しか感じられなかったけど」

「十一匹ですわスズさん」

 会話に身体ごと割って入ってきたミルー。本当に強引な奴だ。

「十一匹か……場所のおおよその目安とかはわかる?」

「あちらは三つのグループで行動しているようです。三、四、四かしら」

「よくわかるねぇ。ミルーさんすごいよぉ」

「愛のなせる技ですわ」

 こちらを見つめられても……。ここはスル―しておこう。

「それじゃ、ぼくらも二手に分かれようか。あっちは三つに分かれているけど仕方ないよね。とりあえず四対十一になるより四匹なところを潰していった方がよさそうだ」

「そうだな、んじゃどう分かれよう……」

「もちろん私とスズさんに決まってるでしょ。他の組み方なんてミジンコほどにも可能性はありませんわ」

 ぼくを含めた他三匹の中にはものすごい眼力による圧力に反対してまでも他の組み方にしようと言い出す奴はいなかった。


 ロイ達と別れてミルーと二人きりになる。

 ぼくは相手に先に気が付かれないようにそっと歩いているのだが、連れがやたらと身体を寄せてきて歩きにくくてしかたがない。電車で肩をもたれかけてくる人をうまく戻すように追い返すのだが、するりとかわされて埒があかない。もうめんどうになったのでふと疑問に思ったことを聞いてみた。

「ミルーさんはなんで敵が十一匹だとわかったんですか?」

「え?なにが十一匹ですって?」

「いや、だから敵が十一匹だって言ったじゃないか。それはなんでわかったの? 敵の気配とか読むの上手なのかなと思ってさ」

「いいえ、私敵の数なんて全然わかりませんわ。十一匹なんて適当。スズさんにいいところ見せたかったから適当に言ってみただけです」

「……」

 そんな、きゃっ。みたいな反応されても。

「まじですか。適当ってことは敵がもっといる可能性もあるじゃないですか。安易に二つのチームに分かれるとか言ったの失敗だったなぁ」

「あら、あれはスズさんが私のこと誘ってくれたのかとばかり……」

「いや、ないない」

 この非常時にまで色ボケに付き合わされるとは思っていなかった。これからどうしようかとまた頭を悩ませる羽目になってしまった。


「おい、足元とか気をつけろよ。いつもぼーとしてて危なっかしいんだから」

「うん。大丈夫だよ。今はしっかり起きてるし」

「そうかならいいんだけど」

 僕はスズさんたちと別れて庭を湖の方に向かいます。ロイ君があっちの方から気配がすると言っていて怖いけどついてきています。

 いつも僕のことをどんくさいからかまってもくれないロイ君ですが、今日はなんだか僕のことを心配してくれているような気がしてうれしくなりました。でも喜んでばかりはいられません。きちんと僕も戦わなくちゃと思っています。

 湖の湿った匂いが近くなるとともに僕たちの声ではない猫の声が聞こえてきました。前を行くロイ君が後ろを振り返り僕に目で合図をします。静かにと。

 湖畔では十匹どころではない数の猫が水際できらきら光るなにかと戯れていました。

「おい、新鮮な魚だぜ! こんなでかくてうまい魚は食ったことないぜ!」

「まじうめー。飼い猫ってものはこんなにいい物食ってるのか。羨ましすぎるぜ」

 彼らは外からやってきた野良猫のようです。つまりは敵です。かごに入っている魚と傍に転がっている釣り竿を見ると家の漁師さんを襲って魚を奪ってしまったようです。やっぱり外の猫さんたちは乱暴者で怖いです。

「しっかしミルーの奴が言っていた十一匹ってのは間違いだったのか。ここにいるだけで十五匹以上はいるぜ」

 ひげをぽりぽりとかきながらロイ君は呟きます。確かにさっきミルーさんが言っていたのは十一匹だったと僕も記憶しています。

「さて、ここに全員集結しているってわけでもなさそうだし、実際敷地内に入って来てる猫ってのはどんだけいるんだか。俺ら四匹で何とかなるものかねぇ」

「で、でもみけ様は弱ってて戦えないから守ってあげないと。いつも僕らの面倒を見てもらってるんだし、こういう時しか恩返しできないんじゃないかな」

「そりゃごもっともだな。神様って言ったって俺らは一緒に暮らしてるからご利益があってもそれを普通だと感じてるとことかあるしな。きちんと恩返ししなきゃな」

 ロイ君はあの数に気圧されることなく瞳の輝きを一層増したように見えました。

「とりあえずあの数全部相手にしてたら無駄に時間がたって本命がみけ様のとこに行っちまうからな。まずは頭っぽいのを探して不意打ちをかます。シャルトーも偉そうにしている奴を探してくれ」

「うん、わかったよ」

 未だ魚にむしゃぶりついている猫達を茂みの中からこっそりと観察しながら別れた二人にもみけ様の加護があることを祈りつつ時期を窺い続ける僕らだった。


 みんなが外に出て行った後ミケ様は弱々しく寝床に横たわって寝息をたて始めた。最近のミケ様はそのオオグロという猫のために屋敷に全く帰ってくることがなかった。かなり無理をしてまで彼を止めようと奮闘していたのに違いないでしょう。いくら悪いことをしようとオオグロも立派な猫の一員、ミケ様は猫の神。どんな神が彼を見捨てようとミケ様は絶対に彼を見捨てようとはしないでしょう。

「それがなぜあなたにはわからないのですか? オオグロ様」

「ほお、俺の存在を悟るとは姉ちゃんなかなかやるね」

「あなたの存在は全く感じられませんでした。ただなにもない空間というのでしょうか、異質な空間がこの部屋にできたことがあなたの来訪だと思ったまでですわ」

「そういうことね。まあ俺はまわりと同化することは不可能だから、いくら隠れようとしてもそういう感じ方をする姉ちゃんからは隠れきれないみたいだな」

「それで勝手に私達の御屋敷に入ってきて何か用でしょうか? 誰もあなたのことを歓迎致しませんわよ」

「まあまあ、そんなにきつい目で見ないでくれよ。こっちの狙いはわかってんだろ。素直にそこの汚い毛玉の塊をこっちに渡せばあんたにはなにもしないって」

 彼の視線の先にはまだ眠ったミケ様がいる。この非常時だというのにのんきなこと。そこが私達のミケ様らしいんですけど。

「残念ながらミケ様はお休み中ですので一緒には行けませんわ」

「クク、そんなわけないだろ。こんなに近くに俺がいるってのにぐうすか寝てるわけない。そんなんでも一応神なんだろ。俺の存在を無視できるはずなんてないんだ

「たぶんしっかりお休みになってると思いますけど……。この方は神ですけどミケ様ですからねぇ。ミケ様お客様がいらっしゃいましたよ」

 そっと寝床に近づいて汚い毛玉……じゃなくてミケ様を揺する。

「んあぁ? もうご飯かニャ? わし今日はコンビニのおにぎりのツナマヨのツナ以外は受け付けないニャ」

 目をすりすり場違いな寝起き発言をする。こちらの期待を裏切らない方だ。

「ミケ様ご飯はまだですよ。お客様です。招いてないんですがあちらの方が強引に迎えにきたみたいですよ」

「おお~、オオグロか~。やっぱりおぬし影が濃すぎて気が付かないニャ。というか影しかないのかニャ? あれ自分でもなにいってるのかわからないニャ」

 当のオオグロ様は目を真っ赤にさせ、数本の血管が切れそうなほど膨張している。先程見た身体より二倍は大きく見える。もちろん怒っていた。

「シャアアアアアアアアアアアアアアアア! 貴様みたいなのが神だからこの猫の社会は腐っていくんだよ! テメ―がぐうすか寝てるうちに何匹の俺ら野良猫の命が失われているのか知ってんのかおい! 人間から食いもんもらえる奴はそりゃいいよな。なにもしなくたって時間がくれば飯が食える。食って寝てゴロゴロしてても生きていけるんだからな!」

 叫びながら彼の瞳孔はさらに広がり、完全な円形を描きまるで紅い満月がそこにあるような錯覚すら覚えた。彼の怒気はさらに膨れ上がる。

「だがそんなのは一握りの野郎だけだ! その日一日だけじゃねえ、何日も腹になにも入れられなくて死んでいく奴の気持ちがお前にはわからないだろう。人間のものを必死で奪い殺されそうになりながらでも食いもんを手に入れなければならない奴の苦労がわからないだろう。なぜお前はそんな猫を助けてやらねえんだよ! 神だろ! 何でもできんだろうがよ!」

「おぬしはなにか勘違いをしているようだニャ。わしは神だが全知全能ではないニャ。この世界を作ったのもわしじゃない。わしはただこの猫の世界を守っていくという使命を与えられているにすぎない中間管理職のようなものだよ」

「守る? 貴様がなにを守ってるっていうんだ!」

「世界の秩序かの……。この世界がうまく回るように守っているのだよ」

「うまく回る? 差別され疎まれ踏みにじられて暮らしている俺たちがいるのにうまく回しているつもりか? これが秩序だっていうのか?」

「そうだ」

 二匹の猫が真っ正面から視線をぶつける。ミケ様の目も燃えるような強い意志がこもっている。とても寝起きとは思えない。オオグロ様が姿を見せてから本当はもう起きていたのだろう。

「そんな不平等な秩序は俺がぶっ壊す! だから俺の力を返してもらう」

「それはできない。この力はこの世界にあってはならないもの。だがなぜこんなものをおぬしが持っているのだ? わしにはそこがわからないのだ……」

「シャハハ。貴様にもわからないことがあるか。笑えるな」

「だからわしも全知全能ではないといっただろうが」

「そういやそうだっけな。んじゃ神様に俺が教えてやるよ。その俺のためにあるような素晴らしい力を与えてくださった、お前じゃない神様のことをね!」

 得意げに裂けた口を歪ませて笑うオオグロ様。考えていたことではあったのだけれどあまり好ましくない展開だったことはミケ様のつらそうな顔で一目瞭然だった。

「この力をくれた主のことを話すには俺の昔話から付き合ってもらう必要がある」

 そう言うとオオグロ様は器用にあぐらをかいて座って話し始めた。

キーボードが急に読み込まれなくなって、

古いので頑張ってます。なれないものだとイライラしてしょうがないですね~。


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