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捜索 その2

次の日、俺と所長はまたまた軽トラに揺られ燕さんのいるアパートへとたどり着いた。

トラックの運転手さんにお礼をいい、「P」と書いてある部屋を目指す。

車内で聞いた話によると、このおんぼろアパート(2階建てで、部屋は6つある)は全て燕さんのものらしい。

知り合いからめちゃくちゃ安い値段で買い取ったらしい。・・・まあここまでぼろいなら大して高くはないんだろうな。しかしよくこんな所買い取ったなと思う。

軽くゆすっただけでも崩れてしまいそうな、おまけに階段はさびついてぼろぼろ。屋根だって強風が吹いたら飛ばされてしまうんじゃないかというような感じだ。

しかし所長が言うには雨だってもれないし、台風が来ても崩れないすごいアパートなのだそうだが、とてもそうは見えない。

燕さんって物好きなんだろうな、きっと・・・・・。

ちなみに部屋にはそれぞれ役割があるらしく、コンピュータ室、仮眠室、食事室などがあるそうだ。(残り3つは秘密なのだそうだ。けどいつもコンピュータ室にこもりきりらしい。)


「さて、では扉開けるよー。千種よけといてね。」

「あ、なんか飛んでくるんでしたっけ確か・・・・・。」


燕さんは誰が相手だろうと扉が開いた瞬間何かを投げつける癖があるので常に気をつけていなければならない。

全くもってよくわからない癖である。


「じゃ・・・つっくーん、おっはよー!」


ばん、と勢いよく扉を開くと、俺の頬ぎりぎりに何かが通り過ぎて行った。

恐る恐る後ろを振り向くと、そこには地面に突き刺さった裁縫鋏があった。


「え・・・えええええ!?」

「あら、今回は鋏かあ。うわーこれ相当機嫌悪いな・・・。まあしょうがない、か。んじゃ、お邪魔じゃまー!」


・・・・成程。燕さんは機嫌が悪いと凶器と言うか刃物を投げつけるらしい。

俺はかすった頬を撫でながら、同じように足を踏み入れた。

そして前回と同じく、玄関に正座する。これが今のところ俺に許されている燕さんとの距離だ。

所長はいつものように燕さんの隣に腰掛ける。


「おっはよ!相変わらず朝は弱いねつっくん。」

「わかってんなら昼から来い。てめぇの頭は空っぽなのかこの単細胞馬鹿。いい加減病院言って死の宣告でも受けてこいよタコ。」


相変わらずの毒舌っぷりだった。

3ヶ月ぶりに燕さんを見るが、やはり変わらない。

いつも思うが、この可愛らしい外見からどうしてあそこまで罵詈雑言が言えるんだろう・・・・。

そう思ってる俺を、燕さんはちらりと見た。


「・・・・・へぇ、まだいたんだな。てっきり向こうに帰ったもんだと思ってたが。」

「あ、はい。続けることにしたんです。やっぱり、俺」

「勝手にしゃべんな。俺の許可が出るまで言葉を発するんじゃねえよ馬鹿。」

「・・・・・・。」


俺は無言で首を縦に振った。どうやらまだ会話をする事すら許されていないらしい。


「んもう、つっくん意地悪だなあ。まあそんなとこもつっくんの魅力だけどねー。」

「黙れアホ。それよりも、依頼について話していいか?俺はさっさと終わらせて寝てーんだよ。・・・・そこの馬鹿。質問くらいは受け付けてやる。但し今回の件以外のことしゃべったらその眉間にアイスピック突き刺すからな、覚えとけよ。」

「は・・・・・はい。」


どうやら今回は多少の質問は大目にみてくれるようだ。

けど燕さんの左手に握られているアイスピックが怖い。


「・・・・相手に優秀な破壊者クラッカーがいる。こいつがかなり面倒臭ぇ。」

「破壊者?」

「千種、クラッカーとハッカーくらいは知ってるでしょ?」

「まあ一応・・・。パソコンに詳しい人がハッカーで、それを悪用する人がクラッカーでしたっけ?」

「うん、大体合ってるよ。ちなみにつっくんはハッカーのスペシャリスト!」

「ハッカーにスペシャリストも何もねえよ。で、≪魔女の生贄≫を操ってる奴は完全にクラッカーだ。こいつがかなり巧妙な技を使ってきやがる。サイト自体を消してる。」

「サイト自体を、消す?」

「何も残らねえんだよ。つまりそのサイトがあったっていう証拠が何一つ残らない。警察も動けねぇ訳だ。証拠がないんじゃ動こうにも動けないからな。」

「ログくらいは残るんじゃないの?いくらサイトを消したって痕跡は残るはずだけど。」

「痕跡すらねぇんだよ。そのサイトすらあったのかってくらい何もねぇ。作るのは簡単だが、壊すのはかなり難しい。こんなことできる奴が俺以外にいたなんてな・・・。あー面倒臭ぇ。」


燕さんもそういうことできるんですか?という質問をしようとしたが、おそらくこれは今回の事件に関係ない話だろうからやめた。アイスピック飛んできそうな予感がしたからな。


「じゃあ、手詰まりってことですか・・・?」

「誰もまだそんな事言ってねぇだろ。勝手に完結してんじゃねぇよこのひのきの棒。とりあえず何件か突き止めてはある。」

「え?」

「メールが消える前に調べりゃいいだけの話だ。」

「でも、そのメールはどうやって・・・・。」

「それを見つけるのが俺だ。それで分かったのは、メールはあらゆるところから送られてきてる。漫画喫茶、他人のPC、会社のPC・・・それらを調べてたら、ある程度までは絞れた。そっから一つに絞るまでだ。」

「ふおおさすが!やっぱ頼りになるー!」

「だから今から絞るから帰れ。分かったらまた連絡する。」

「りょおかい。あ、後ねつっくん。今回も鷹ちゃんにお願いしたの。」

「・・・・・え。」


鷹ちゃん、という言葉が出た瞬間、燕さんの顔は心底嫌そうな顔になった。

今まで不機嫌な顔しか見たことないから、何だか新鮮だ。


「お前、ふざけんなよ・・・・。」

「だあって、お願いしたい事あったんだもの。ごめんってばー。それに鷹ちゃんはりきってたし、断る訳にもいかないでしょー?そんなことなので、よろしくね!今回の事が片付いたら、一緒に来るから。」

「マジで来んな本当いい加減にしろてめぇああもう俺はひきこもるとっとと出てけ。とりあえず出てけ。そこの馬鹿、とっととこの馬鹿連れていけ。早くしろ出てけ。」

「は、はい。」


慌てて立ち上がった俺は所長を呼び、共に急いで燕さん宅を後にした。

部屋から出ていくと、まだ「本当嫌だ・・・。」という悲痛な呟きが聞こえてきた。

・・・・あんな燕さん見たことない。


「ううーんやっぱりもっと機嫌悪くなっちゃった。まあしょうがないか。」

「あの・・・・燕さんは何をそんなに嫌がってるんですか?」

「あとで分かるよー。じゃあここはつっくんに任せて、僕らは次のところに行こうか。へいたくしー!」


所長は道に出ると、近くを走っていたタクシーを呼びとめた。

乗り込むと所長は運転手さんに地図を見せ、道の行き方までも教えていた。

運転手さんが納得すると、勢いよくタクシーは発車した。


「今度はどこに?」

「前にお話ししたでしょ?動物とお話しできる人がいるって。その人に会いに行くの。」

「ああそういえば・・・・。」


以前猫探しの時に所長がメールをしていた相手だ。

その時そういえば今度会わせてあげると言われたが・・・・。

ちなみに俺は全く信じていない。動物と会話できる人なんて、それこそ漫画の中の話だ。

だから、ちょっとわくわくしている。果たして、どんな人なんだろうか。


***************************


タクシーに乗って30分もしただろうか、目的地へと辿り着いた。

降りる際は領収書も忘れずに(ちなみにちゃんとAMC石投事務所でもらった)、タクシーの運転手にお礼をいい降りる。

降りた瞬間、目に映ったのは。


「・・・・所長。」

「ん?」

「ここは日本ですよね?」

「そうだよ、でぃすいずじゃぱん!それがどうかしたの?」


いや、まあ最近は洋風の家も増えてきてるし、特に問題は無いのかもしれないけれど。

でもこれは・・・・。


「洋館、ですよね?」

「そうだよー。えっとフランスの洋館そのまま日本に持ってきたんだっけな?フランスが好きでね、よくフランス料理食べてたよ。」

「はあ・・・・。」


さっき燕さんの家を見た後だからだろうか、その豪華さに思わず口が空いてしまう。

豪華な門をくぐると、バラ庭園や噴水が並ぶ大きな庭。

そして玄関であろうこれまた大きく豪華な扉の前に立つ人物。


「白亜ちゃん、お久しぶりー!」

「いらっしゃいませ、ようこそお待ちしておりました。お久しぶりです、石投様。」


金髪メイドさんがご丁寧に挨拶してくれた。

ここは、本当に日本か?

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