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後日談 その1

あれから4日経った。

俺はとりあえず2日間は家でゆっくり休み、それからまた大学へと通った。やはり祭も弓親もまだ来ていない。

大学では≪魔女の生贄≫の話題で賑わっていた。

突然メールがこなくなり、サイトにもいけなくなったらしい。やはり都市伝説だったのだろう、という結論に至っているそうだ。

実際サイトを見た人間だって極僅かだし、信じない人間は信じないだろう。

おそらくもう2,3日すればこの話も忘れられるはずだ。

・・・・・俺は中々忘れられそうにはないが。


そして今日、所長からメールで「事務所においで」といわれたので授業を早めに切り上げ、事務所へと向かう。

階段を上がり、扉を開ける。いつもの紅茶の香りが鼻をつたう。


「やほー千種!久しぶりだねえ!」

「こんちは。・・・・って、お前ら。」


扉を開けて目の前にいたのは、いつもの場所に座っている3人と別に、もう3人の姿。

所長のすぐ傍には鷹さんが立っており、所長の前には椅子が2つ並べられある。そこに座っているのは、見慣れた顔の2人だった。


「久しぶり、日比野君。」

「よ、日比野。」

「弓親!祭!」


すっかり元気そうな弓親と祭の姿が、そこにはあった。

あれだけ青ざめていた祭の顔も、前と同じに戻っている。


「もういいのか?」

「おかげさまで。祭ちゃんも元気になったよ。」

「うん。もう大丈夫だ。世話かけたな、ほんと。」

「んふふーよかったよかった。2人とも病院出て直ぐにここに来てくれたんだよー。それで千種にも早くお礼を言いたいからって呼んだの。明日大学で会えるだろうにねぇ。」

「今すぐ言いたかったんですよ。皆さんにもですし、日比野君にも。」


そういうと2人は立ち上がり、俺に向かってこれでもかというくらい頭を下げる。


「本当に助かった。日比野は私の命の恩人だよ。本当にありがとう!」

「祭ちゃんを助けてくれて、ありがとう!」

「ちょ、よせって!つーか・・・・実際助けたのは弓親だしな。俺、殆ど何もしてないし・・・。」


これは本当だ。場所だって燕さんや所長達のおかげだし、バイク野郎から助けてくれたのは鷹さんだし、ビルから祭が飛び降りなかったのも弓親のおかげだし・・・・・。

あれ?実際問題俺本当に何もしてねえ?


「そんなことないよ!最初、相談にのってくれたでしょ?それでここに連れてきてくれた。日比野君がいなきゃ、きっと・・・・。」

「私は自殺してたんだろうな。日比野が何にもやってない訳ないだろ。何もやってなきゃお礼だっていわない。日比野は、私も律も助けてくれたんだよ。」

「弓親、祭・・・・。」

「素直に好意は受け取るものですよ、千種さん。」

「隼さん・・・・。・・・・こちらこそ、ありがとな。」

「うん!」

「今度は私達が、お前が困った事があったらいつでも助けにいくからな!さて、礼もいったことだしいくか!」

「え?もういくのか?」

「今回の事件で自分がいかに未熟か思い知ったからな、師匠の下でまた修行してくる。」

「私も。久しぶりに体動かしたくなってきたし。それじゃ、また明日大学でね!」


そう言って2人は残っていた紅茶を一気に飲み干すと、勢いよくその場を去っていった。

まるで嵐が去ったようって、こういう事を言うんだろうな。


「よかったねー千種。感謝されるのって気持ちーでしょ?」

「・・・・照れくさいです、なんか。」

「だと思ったよ。千種褒められるの慣れてなさそうだもんね。」

「でも・・・・ほんと、よかったです。祭が生きてて。」

「祭ちゃんが生きてるのは千種のおかげだよ。千種は命を救ったんだ。胸張っていーんだから、ね?」

「ありがと、ございます。」

「ほかの依頼者からもお礼がきてたよ。ありがとう、って。二度と≪魔女の生贄≫が復活しないようにつっくんにもお願いしといたからだーいじょーぶ。これにてこの事件しゅうりょーってところかな。」

「お疲れさまでした。」

「・・・・・・。」

「そして明日は撮影会よ!!」


と、どこから取りだしたのかかなり高そうな一眼レフカメラを取り出し興奮気味の鷹さんがそう言った。

ああそういえばこの事件が終わったら撮影会するっていってたな・・・。


「明日は貴方授業あるの?」

「明日は・・・・1限だけだったような・・・。」

「なら撮影会は午後からにしてあげる。貴方にも私の作った衣装を着こなすしーと燕を見せてあげたいしね!あああ楽しみで今夜は眠れない・・・!もう明日依頼なんてきても全部断るんだから!」

「それでよく商売成り立ちますよね。」

「五月蠅いわよ似非執事。」


再び2人の口論が始まった。こうなると中々周りも見えなくなり終わらないそうだ。

慣れているのか一里さんは我関せずといった感じで、祭と弓親の飲み干したカップを持って給湯室に行ってしまった。


「相変わらずよくやるねー2人は。なかよしさんだー。」

「仲良しなんすかねえ・・・。」


まあ喧嘩するほど仲が良いともいうが・・・・。あれはどうみても仲良くは見えないのだが・・・。

会話に「スクール水着」やら「体操服」やら何やら危ない単語が聞こえてくるが、聞かなかったことにした。


「・・・・そういえば、所長って色んな言われ方されるんですね。」

「へ?」

「いや、俺らは所長って呼んでますけど鷹さんは『しー』って呼ぶし、梟さんは『めーちゃん』って呼ぶし、【猫】さんは『石投サン』とか・・・。」

「・・・・・・やだ?」

「え?」

「千種は、僕の事所長って呼ぶのいや?」


ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ困ったような顔をして所長は俺の目を見てそう言った。

・・・俺何か気に触るような事を言ってしまったのだろうか?

所長は俺から目を逸らさない。俺はその目を見て、言った。


「嫌な訳ないです。てか、そんな風に呼ばれてるのを聞いてそういえば所長の名前『石投命』だったなーと思っただけですって。特に何も考えてないです。」

「・・・・そっか。うん、なら、いい。じゃあ!これからも愛情込めて所長と呼んでくれたまえよ!」


満面の笑みでそう言われたら、そう呼ぶしかないだろう。

多分、推測でしかないがあまり自分の名前が好きではないんだろうな、この人は。

むしろ俺には所長と呼ぶのに慣れきってしまっているので、いまさら変えるのもちょっとね・・・。


「はいはい、所長さん。」

「なーんか馬鹿にしてるよーな・・・。あ、そういえば伝言があったんだった。」

「俺にですか?」

「うん。梟さんが事件の結果報告してほしいんだって。千種に。」

「それ・・・・俺でいいんですか?俺よりも所長とか隼さんが話した方がいいんじゃ・・・。」

「指名だもの。ほら、前にもっとお話ししたかったんだけどあまりにも千種がダメージくらいすぎて駄目だったから。」

「嫌な事思い出させないでください・・・・!」


梟さんに会えるのは少し楽しみだ。しかしあの屋敷には白亜さんという俺の大敵がいる。

目を合わせようもんなら睨まれるし、口を開こうもんならレイピアで刺されそうな気がする。


「鷹ちゃんの撮影会多分3時くらいからだろうからさ、いってあげてよ。梟さんもお話し相手が増えたのすごく嬉しがってたんだから。」

「じゃあ・・・俺でよければ、いってきます。」


明日はかなり内容が濃い一日になりそうだ。

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