戦闘 その2
命、隼、一里はとある地下室にいた。
弓親のことは鷹と千種に任せ、昨晩きた燕からの連絡を受け、現在に至る。
「割り出せたぜ。」
「どもどもです。それで?どこにあったの敵さんのアジト。」
「今は使われてない、ビルの地下室だ。元々会社が経営難で差し押さえられて、ぼろぼろに荒れ果てちまったビルの地下室で活動してやがった。人通りも少ないし、誰もそんなところにいるだなんて思わなかったんだろうな。ネット環境も悪いし。」
「・・・そんなところで破壊活動してたの?ネット環境が既に破壊されてるってのに?」
「ネット環境整えることなんて素人でもできる。機械に詳しいのなら尚更な。おら、住所携帯に送っといたから行って来い。」
「んふふーさんくす!じゃ、いってくるよ!帰ったら撮影会やるの忘れないでねー!」
「おま、忘れようとしてた事をいうんじゃねえよこの馬鹿死ね!」
ビルの場所は都会から少し外れたところにある場所だった。
「立ち入り禁止」という紙が張られているのもお構いなしに、3人は中へと入る。
すぐさま地下へ潜る階段を見つけ、慎重に降りていく。
「・・・・人の気配はありませんね。」
「だね。こりゃハッカーさんも勘付いたかな?しかし何もこんなところでやらなくたってよくない?漫画喫茶とか、そゆとこでやればいいのにねえ。」
「唯単にそういった演出をしたかっただけでは?」
「かもね。・・・と、もう着いたかな?」
3人は地下室へと辿り着く。明りは無く、暗闇が広がっていた。
すかさず一里が持っていた懐中電灯をつけ、周りを照らす。
「おや。」
「あら。」
「・・・。」
広がっていた光景は、破壊の山だった。
PCは真っ二つに折られ画面はナイフが刺さっているし、壁はこれでもかというくらいヒビが入っている。机も椅子もカッターか何かで切り付けられたような跡があり、近くに落ちていた毛布は既にぼろの布切れと化している。
「・・・襲われたわけじゃなさそうですね。全て自分で傷つけたようです。」
「ここがばれたと知って、証拠隠滅したってことだね。」
「そのようですね。しかしどうやってその事を知ったのでしょうね?この情報は燕さんの口から直接聞いたものです、我々3人以外知る人はいないはずなのですが・・・。」
「その情報網に入り込める人ってことか・・・。あーあ、面倒くさいことになってきたねこれは。」
「・・・ここはもう用がありませんね。一先ず出て、千種さん達の所に合流を・・・。」
「AMCの奴らだな?」
その声に3人は振り返り身構える。
目の前にいたのは、黒の覆面をかぶり、黒い服に身を包んだ者たちだった。数はおよそ10人。
「だったら何?」
「殺すまでだ。」
「・・・・成程。ここで僕たちを閉じ込めて、殺してしまおうという算段か。まあ罠かもしれないとは思ってたけど・・・。けど君たちは計算違いをしてるね。」
「・・・・何だと?」
命は着ていたパーカーのポケットから、ナイフを取り出し向ける。
「死ぬのは君たちなんだって。僕らに喧嘩売るなら、戦闘機くらいは持ってこないとね?」
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「うん、弱い。」
―――数分後、辺りに広がっていたのは鉄の臭いと黒い服を着た集団の死体だった。
命は一里からもらったハンカチでナイフを綺麗にふき取ると、元あった場所に閉まう。
「それでは、出ましょうか。」
「だね。」
再び3人は来た道を戻って行った。
地上に出て、直ぐに命の携帯に着信が入る。電話の相手は、燕だった。
『罠だったか?』
「でした。まあ弱すぎたから簡単だったけどねー。何だろうなあ、使うならもっとましな子使えばいいのにねー。」
『・・・・。梟から連絡がきた。』
「お!なんて?」
『桐山祭の姿が見つかった。隣にもう一人いたらしい。それが△△ビルに入って行った。急がねえと不味いかもな。』
「りょっかい!んじゃ急いで千種と鷹ちゃんに連絡するよ!じゃ、またね!」
『・・・・・め。』
「ん?」
『・・・・・・・・。何でもねえ。とっとと連絡しろ。この電話切りやがれ馬鹿。』
「言われなくても切りますよーっと。」
電話を切り、今度は千種に電話をかける。
『もしもし!』
「今から出てこれるんだよね?なら律ちゃん連れて急いで!メールで地図送るから、そこに急いで2人で行って。君たち2人にしか出来ない事、してきてよ。」
『?それってどういう・・・』
「いーそーぐーの。僕も野暮用済ませてからいくから、早くね!」
それだけ行って電話を切る。千種のことだ、これだけ言えば意味は大体通じるだろう。
メールにビルの場所が載ったファイルを送る。送った直後、再び着信が入った。
「うあい!鷹ちゃん?」
『ええ。一人排除したわよ。次は?』
「今からメールで場所送るね。んふーさすが鷹ちゃん仕事はやあい!」
『ありがと。そっちは?』
「蛻の空ー。逃げられちった。何か分かった事ある?」
『世界を壊したいそうよ、犯人は。』
その言葉に、命の電話を握る力が少し強くなった。
「あー・・・・成程ね。」
『とりあえず、私は次の場所に向かうわ。一応辺りを警戒しておいてよ。』
「うい。じゃあ後でねー!」
電話を切る。思わず口から笑みがこぼれた。
「所長?鷹さんはなんと?」
「犯人はねえ、世界を壊したいんだってさ。」
命の一言に、隼と一里の表情が変わる。
「・・・・成程。そんなヒントを置いていってしまうとは、あちらはバレテも誤魔化せる自信が相当おありのようですね。」
「のようだね。・・・・まあ、こっちは一先ずおいといても大丈夫か。僕らは千種達のところに急ぐよ。鷹ちゃんがボディーガードみたいなのは倒してくれたみたいだから、残すは染脳師だけ。」
「・・・・。」
「そんな心配しなくっても大丈夫だよ一里。千種はやる時はやる子だからね。千種なら、祭ちゃんを助ける事が出来るよ。さ、僕らも出発だー!」