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あいつの気持ち

作者: AIBO

 今思えば、言うんじゃなかった。

 まんまとハメられた事に気付いてからでは、後の祭りだって言うのに・・・・・・。



 あいつと俺は小学校1年の時に出会った。

 席は隣同士、お互いに挨拶なんて交わしたっけ。

 その時は俺も、もちろんあいつも、今頃どんな関係になってるかなんてわからなかっただろう。

 腐れ縁とでも言えばそれまでだが、運が良いのか悪いのか俺の小学校の思い出は、常にあいつと一緒、席も常に隣同士と言うまるで漫画のベタな設定のようだった。

 席が隣同士である以上なんらかの接触がある訳で、二人して照れ合いながらお互いの事を話したり、あいつが教科書忘れた時一緒に教科書を見たり、あいつが宿題を忘れた時見せてやったり、テストの山を教えてやったり、あいつ・・・まぁ俗に言うおバカさんだったんだな。

 今でも先生に宿題の回答が同じ事を疑われ、一緒に廊下に立たされた事は忘れてはいない。


 低学年の時にやった学芸発表会。お題は『桃太郎』。

 俺がキジ役。まぁそれは些細な事だが、重要なのはあいつが桃太郎役だった事だ。

 あいつは得意げに、

「キジさんキジさん。このおいしい、おいしーいきびだんごをあげましょう」

「・・・あぃ」

 小学校の良き思い出に一つ、傷が付いた。


 時が経つにつれ段々お互いを知っていく内に仲良くなり、学校に一緒に登校したりもした。

 高学年、夏のキャンプ。

 席が隣同士だと当然同じ班になる。一班に一セットずつ花火が沢山入った袋が配られ、男子が我先に打ち上げ花火やロケット花火を手に取る中あいつが手にしたのは、序盤にも関わらず、

「これ一緒にやろー」

「・・・・・・線香花火、かっ」

 数本纏めて火を付け、火の玉を落とさない様じっと二人で真剣な眼差しを向けてた。

 あの時、あいつからなんかいい香りがしたのは俺だけの秘密だ。

 線香花火だけやるのもなんだか風流・・・・・・、なんて言うかこのバカ野郎。

 

 俺から見ればあいつは、子供っぽいとしか言えなかった。

 12月31日から1月1日になった瞬間、家に訪問してきて一緒に行った初詣。

 バレンタインデーだって妙に煌びやかなシールやらビーズでラッピングされたハート型のチョコを渡して来たり。

 俺はあいつに振り回されれる薄幸な男の子だと自分で決め付けていたけど、友達に言われて初めてあいつの気持ちに気が付いたんだ。


「なぁ、お前とあいつって・・・・・・付き合っちゃったりしてんの?」


 理解ができなかった。あいつは俺にじゃれてるだけだと思っていた。

「はっ、勘弁してくれよ。なんで俺がお子様なあいつなんかと――」

 これが事の始まり。

 気が付いたら、あいつが後ろにいた。

 泣いていた。俺が適当な嘘を言う前に教室から飛び出していった。


 こんな罪悪感に囚われたのは初めてだった。


「・・・・・・嫌いっ」

 その日は、あいつが去り際に言い残した言葉が頭の中に纏わり付いて離れなかった。


 次の日あいつは学校を休んだ。

 クラスの連中は、夫婦だのバカップルだのからかってきたけど、俺は全く笑えなかった。


 今になって気付いた。

 謝らなければいけなかった。

 あいつの気持ちも考えず、自分勝手な事を言ってしまった事。

 伝えなければいけなかった。

 いつも冷めた態度で接していたけど――



 俺は、あいつが好きだった事を。



 帰りのHR(ホームルーム)が終わった瞬間、俺は教室から一気に外まで走った。

 あいつがどこにいるかはわからない。わからないけど探す事は止めなかった。


 太陽が西に沈みそうになる頃、俺はあいつを見つける事が出来た。

 学校近くの公園で一人、ブランコに座っていた。

 背中にはランドセルを背負っていた。

 俺は、胸に激しい痛みを覚えた。


「よ、よう」

「・・・・・・」

 あいつは顔を伏せたまま動かない。

 俺がもう少し軽い男だったら、かける言葉の一つや二つ位見つかっただろう。

 だが俺には無理難題だった。

 あいつに何も言えないままどれだけの時が経ったんだろう。

 太陽はもう見えなくなり、月がその体躯(たいく)を夜空に(さら)していた。

 何か言わないといけない。だけど言葉を探せばさがす程、時間だけが過ぎて行く。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


 俺はまだあいつにかける言葉を探していた。

 脳内で何度も思いついた言葉を口に出すイメージをする。


「――ごめん」


 出た。出たと言うか、自然と口から漏れた。

 恥ずかしい反面、己に救われた気分だった。


「その・・・・・・俺っ、わかんなかったんだ」

「――そんな事思ってたなんて」

 あいつはまだうつむいたままだった。


「俺も、俺も好きだぞ――」


 俺は確かに見た。あいつが少し身動ぎしたのを。

「・・・・・・誰が?」

「え、いや、この公園、俺達しかいないだろ」

「――ふーん」

 顔を上げたあいつは笑っていた。満面の笑みを浮かべていた。

「もう一度言ってくれないと・・・・・・泣いちゃうかもよ?」

「えぁ、何でだよっ」

「・・・・・・」

「あぁっ、待て!落ち着け、オチツイテクダサイッ」

 再び顔を伏せようとするあいつを俺は必死で止める。

「もう一回っ」

 音符が見えそうな声で催促するあいつ。

 ――そんな風にされたら、言うしかないだろ。

「好きだ――っつってんだろ」


「ぷっ!!」


 ――あいつ、俺の事おちょくっていやがったんだ。

 そうじゃないとこんな場面で笑えるはずがない。

「おいっ!ハメやがったな!?」

「あははっ!お・バ・カさんっ」


 正直ムカついたけど、無事に謝る事も出来たし、なによりお互いの気持ちを確認出来たから許す事にした。



 『友達以上・恋人未満』から『恋人以上・バカップル』に飛び級した俺達。

 あれからあいつは、終始俺をからかってくる。

「・・・・・・好きだっ!!あはっ」

「んな事言ってねぇ!!」

 俺の中ではついさっき二人は恋人になったと思っている。

 だけどあいつの中では、俺の記憶が及ばない時からずっと二人は恋人だったのかもしれない。

「ねぇねぇ、『お子様』なのはどっちなんだろうねぇ?」

「うっせっ」

 はにかみながらからかってくるあいつは、いつもと同じおバカなあいつだった。

前半はコメディ、後半はLOVEだと私は思っていますw

どうでしたか?「あいつの気持ち」

意見・感想お待ちしております。

では^^

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― 新着の感想 ―
[一言] 読んでて小学校の頃が懐かしくなりました。 面白かったです。
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