その21 ナーちゃんの一番長い日(後編)
階段を駆け上り、部屋という部屋を突破して進んでいく俺、そしてナーちゃん。
「ここだよ! おにいちゃん!」
「おう! サンキュー!」
トビウオ坊やが示した部屋へと突入した俺。
そこは、他の部屋とは比べ物にならないくらい大きな部屋だった。
飛び込んだ俺が目にしたのは――
「くっ! 放しやがれェ、このクソデブ!」
「くせェんだよ、てめェの体臭はよォ」
でっかい黒茶色の「ぶよん」としたカタマリに胸倉をつかまれ、壁際に押し付けられているマサと武装天女の姿だった。
そのカタマリについているボーズ的形状のヘッド。鼻の辺りからぴっぴっと飛び出ているヒゲ。上唇から、これまた「にょーん」と白い、二本のキバが……。
セイウチのバケモノ。セイゾーというらしい。ブルーフィッシュの民を虐げている諸悪の根源。絵に描いたような悪者の姿である。
それはいいとしても、とにかくでかい。これじゃあ、マサと由美さんがいくら強くても敵わないワケだ。
セイゾー、入ってきた俺達をちらりと一瞥し
「おぃやまぁ、ナタルシアちゃん! どぉーしてこんなところにいるんだろうねェ? キミは今ごろ、人間達の見世物ショーに出ているハズじゃないのかい?」
声も口調もイラッとくる。
例えるなら、イヤらしい変態オヤジのそれだ。
「達郎さまが助けてくださったのです。私はもう、あなた達の言うなりにはなりません。これからはずっと、達郎さまについていくと決めたのです」
するとセイゾー、口の端で「ニヤリ」と笑い
「だーかーらー、ナタルシアちゃーん。キミに決める権利はないんだけどねぇ。そういうコトを言っているとこの人間達と護衛のおねえちゃん、どうなっても知らないよー?」
二人を押し付けている両腕に力がこもった。
「ぐっ!」
「くっ……そォ!」
マサも由美さんも振り放そうと抵抗するが、びくともしない。
ここへきて、絶体絶命の大ピンチ!
――でもなかったりする。
俺は一度家に戻った時、海獣組と戦うためにありとあらゆる悪知恵を振り絞り、準備を整えてきた。当然、肉体的な戦力差が生じた場合の対処法もちゃんと考えてある。
すかさずポッケをさぐると、隠し持っていたそれをセイゾーの顔を目掛けて投げつけつつ
「由美さん、マサ! 目ェ潰って! 早く!」
俺の放ったそれはセイゾーの額に命中するなり、ポンと弾け飛んだ。
「ん? こんなモノ、ワタシには効かな……ぎゃあぁーっ! ぎゃーっ!」
顔の周りでソレが「ぼふっ」と煙るや否や、セイゾーはのたうって苦しみ始めた。
「目がァーっ! 目がァーっ! ぎゃーっ!」
そりゃあ、効くだろう。
なんたって、韓国土産の「赤唐辛子粉末」だ。親父と幸子が俺をおいて勝手に旅行へ行って来た、その土産なのだが……置いてけぼりにされた俺の恨みも十分に混ざり込んでいる。
「ぎゃーっ! へっくち! イッキシ! ……ぎゃーっ! イッキショ! ぎゃーっ!」
言い忘れていたが、唐辛子に加えてコショウもブレンドしてある。つまり、一番顔にかかってはまずい物の組み合わせというワケだ。食らったが最後、死にはしないが死ぬような地獄を味わうことになる。
暴れ狂っているヤツの巨体をすり抜けるようにして、避難してきた由美さんとマサ。
「おォいタツぅ、やるじゃねェか! ダテに潮清通ってねェなァ! 見直したぜ」
心底感心したように、俺の背中をばっしばっしと叩いている由美さん。
潮清は関係ありませんよ。
俺の悪知恵ファイルがメニュー豊富なだけですね。
「イッキシ! イッキシ! は……ふ……へ……へっ、イッキシ!」
唐辛子胡椒玉を若干浴びてしまったマサ、くしゃみ連発。……申し訳ない。
彼はびろんと鼻水をたらしながら
「いっやァー、アッぶなかったぜェ! 助かったァ! やるなァ、タツ! やるなァ!」
それはわかったから。
まずは鼻水、なんとかしなさいよ。
「それでタツ、葵たらいうねーちゃん、見つかったのか?」
由美さんの問いに、ナーちゃんはふるふると首を振り
「それが……下の牢屋にはいなかったんです! どこか、別の場所かもしれません」
悲しそうに答えた。
すると、由美さんはガンッ、と壁を蹴っ飛ばし
「ちっくしょォ! どこまでもセコい奴らだぜ! そのねーちゃんだけどうにかしようってのかよ!」
こうなると、色々と良くない想像が頭の中を駆け巡ってきてしまうのだが――悔しがってばかりもいられない。
涙と鼻水で顔中ぐちゃぐちゃにしながらも、ようやく復旧したセイゾーは
「こっ、こっ、このォ! ナタルシア! 人間ども! 許さん! 許さんぞォ!」
どすどすどす――
巨体を揺らしながら突進してきた。
さてさて。
あれに更なる物理的ダメージを与える術は――残念ながら、俺の悪知恵フォルダにはない。
「おい、タツぅ! どーする!? どーする!? 逃げっかァ!?」
マサが叫んだ。
不本意だが、この場はそうするしかなさそうだ。
ちっ。
絶対に助け出すとかナーちゃんに大口叩いておいて、このザマか。俺もまだまだ大したコトないもんだな。ちーっと情けねェ……。
しかし、逃げ出す必要はなかった。
突然部屋に飛び込んでくるなり、クッサい肉のカタマリをしっかりとキャッチしたヤツがいる。
黒っぽい背中に白い斑点。どでかいガタイ。
そう。
そいつはさっき、俺達が助けた――
「……ジンベエさん!?」
「……トビタローから、聞いた。お前達、やられそう。だから、恩返し」
予想だにしない、ジンベエザメの恩返し。
目の前でがっぷり組み合っている、巨体と巨体。
ジンベエさんも怪力だが、セイゾーもまた譲らない。
「ジンベエ? キミィ、人間やナタルシアに協力したら、どぉなるかわかってるのかい? ん?」
ぐいぐいと身体を押し付けながら、やんわりと脅しをかけるセイゾー。
が、それを食い止めているジンベエさんは表情一つ変えずに
「……俺、恩、返す。お前達、海獣だって、人魚族に恩、ある、はず」
一歩も退かない。
すまん、ジンベエさん。ぬぼーって何も考えずに泳いでいるだけだとか言って。
ジンベエザメなりの思いってものがあるんだな。
力はほぼ互角。決着は簡単につきそうもない。
この間に、何とか葵さんの居場所を捜さなくてはならない。
が、捜すといってもこの総督府、無駄に広い。もしも裏口なんかから連れ出されたりしたらそれまでだ。
マサは相変わらずくしゃみにやられているが、由美さんは状況がわかっているから
「どうするよ、タツ!? 誰かほかに葵ってねーちゃんの居場所を知ってるヤツはいねェのか!?」
訊いてきた。
――そうか、その手があった。
わざわざ捜す必要はない。
訊き出せばいいじゃないか――。
俺はポッケに手を突っ込み
「……おい、セイウチ野郎。これ、何でしょう?」
「ふぉ? 石? ……ま、まさか!」
俺の手に握られているモノを見るなり、セイゾーのブサイクな顔が余計引きつった。
「もっぺん地獄を見たくなけりゃ、葵さんの居場所を吐いてもらおうか。拒めばどうなるかわかってるんだろうな?」
そう。
こいつはさっき、セイゾーに灼熱クシャミ地獄を味わわせた「赤唐辛子胡椒玉」だ。
まだまだ何個もあるから、白状するまで堪能させてやることができる。
セイゾーは今、ジンベエさんとがっぷり組み合っている最中。こいつを避けたり防いだりするような余裕はまったくない。
「ひっ、ヒキョーね、キミ! そんなコトをして、許されると――」
「じゃあ、死ね」
「さっき、一階の隠し牢獄から出して南氷洋まで連れて行くように指示しました、はい」
……あっさりゲロしやがった。
このノリにすくわれて思わずコケそうになったが、今はコケている場合じゃない。
「よろしい。――じゃ、ご褒美!」
「あっ! そんなっ!」
何のためらいもなく赤唐辛子胡椒玉をプレゼントしつつ、俺はナーちゃんを連れて部屋を飛び出した。
背後からは
「うっぎゃあああああぁーっ! ぎぃええええぇーっ!」
哀れなセイゾーの絶叫が聞こえてきた。
卑怯なことをした、とはこれっぽっちも思っていない俺。
ナーちゃんと葵さんを苛めた罰だ。
思い知れ。
「達郎さま! 葵さんは、葵さんは――」
ナーちゃんはもう、ほとんど泣きそう。
だよな。
南氷洋なんかに連れて行かれたら、助けだせる可能性は限りなくゼロに近い。
「……やれるだけのコトはやろう。それから考えるさ」
そうだ。
それしかない。いや、それが大切なことなんだ。
やる前から「ああぁーっ」って絶望してても、意味はない。何でもいいからぶち当たって突破しようとしてやれば、何とかなるコトだってたくさんあるはず。
俺は元来たルートを駆け抜け、エントランスの階段までやってきた。
すると――
「いやっ! 放して! 私は南氷洋なんかには行きません! 放しなさい、このケダモノっ!」
この声……もしかして?
階段の途中から下を覗き込んだ俺は、そこにとうとう求める姿を見た。
――葵さん。
後ろ手にサンゴの手かせをはめられた彼女は、アザラシ的な半獣野郎どもに今まさしく総督府から引き摺り出されようとしていた。
今度ばかりは運命の女神、必死な俺達にとびっきりステキな微笑を向けてくれていたらしい。
「葵さんっ! 葵さんっ!」
ナーちゃんが声を限りに叫んだ。
「あ? やべェ! ナタルシアだ!」
「人間もいるぞ! 早くしろ!」
焦り出したアザラシ野郎ども。葵さんを無理矢理に引っ張っている。
が、思いがけない俺達の登場に、葵さんは希望をもってくれたらしく
「誰が……行くものですか! 行くなら……あなた達だけで……行きなさいっ!」
最後の力を振り絞ってそれまで以上の抵抗を始めた。
「こっ、この人魚くずれめっ!」
業を煮やしたアザラシが、葵さんの頬を「ぺちっ」とやった。
「ああっ!」
横倒しに倒れた葵さん。両手を封じられているから、どうすることもできない。
アザラシは葵さんの両脚をつかんで引き摺っていこうとしている。
「葵さんっ!」
悲痛な声を上げたナーちゃん。
まずは何とかしてアザラシどもを黙らせなければならない。
そう考えた俺は、何かないものかと辺りを見回してみた。
ふと、目に飛び込んできたのは――エントランスにこれでもかとばかりに飾られている、数々の調度品。
どれもこれも――ぜひ投げてみて、といわんばかりのお手頃な形状だった。
その一つ、花ビンみたいなツボみたいなヤツを手に取った俺は
「でえぇぇりゃああぁっ!」
ナーちゃんを背に回しつつ、全力のオーバースローでぶん投げた。
勢いよく宙を走った花ビン(またはツボ)は、葵さんを殴りつけたアザラシの脳天に狙い違わず直撃してくれた。外さなかったのは実力ではなく奇跡だが。
「あふぇーん……」
情けない悲鳴を残しつつ、ヤツは沈んだ。
「……!? アザーリン! おい! しっかりしろー!」
一頭のアザラシが、倒れたアザラシ――アザーリンとかいう名前らしい――に駆け寄ろうとした。
「……よそ見してると保存食にされるぜ?」
階段の途中から手すりを乗り越え、一気に飛び降りた俺。
駆け寄って間合いを詰めるなり、有無をいわさず跳び蹴りをお見舞いしてやった。
仲間思いなアザ野郎は
「ぶごべげべればっ!!」
頭から壁に突っ込み、沈黙。
残り、一頭。
「あうあうあうあう……」
瞬く間に仲間を沈められたアザラシはぶるぶると震えている。
俺だって、何も無駄な殺生は好まない。
大人しく引き下がるなら見逃してやってもいいと思った。
が。
アザラシは基本的にバカらしいが……やっぱりこいつもバカだった。
「……アチョーッ!」
突然何をしたくなったのか、よく聞く中国拳法の掛け声を上げつつ、俺に向かって飛び蹴りをかましてきやがった。
そのまま由美さん命名「一撃必殺の右ストレート」で撃墜してもよかったのだが――ふと見れば、傍にあのキモいメスセイウチのデブヌード画が。
俺はそれを力任せに壁から引っぺがすと
「……ふんっ!!」
渾身の気合と共に、アザ野郎目掛けて振り回した。
「きゃっ!」
ハエみたいに叩き落されたアザラシ、床に転がってぴくぴくしている。
邪魔者は消えた。
俺はすかさず葵さんに駆け寄り
「葵さん! しっかりしてください! 俺です、達郎ですよ!」
抱き起こした。
ナーちゃんはもう、彼女に抱きつくなり
「葵さん、葵さん、葵さん……! 私、私、もう……」
泣きじゃくっている。
気を失いかけていたらしく、葵さんはややぼーっとしていたが、ナーちゃんの声に
「姫様……それに、達郎様……。わざわざ……私のために……」
うっすらと微笑んだ。
青く長い髪、よく整った美しい顔。そしてスレンダーで非の打ち所がない均整のとれた身体。あの日別れた時の葵さんと、ちっとも変わっていない。
ただ、ブルーフィッシュを守って戦い、捕まってから手ひどい扱いを受けたのだろう。顔や身体、いたるところにキズやアザがあって痛々しい。胸と腰を覆っている葵さん独特のコスチュームもぼろぼろになっていた。
俺は最後に隠し持っていた小さいカナヅチを取り出し、手かせを砕いてやった。
葵さんは自由になったその腕でナーちゃんを抱き締めた。
いや――片方の腕を伸ばすと、俺をも抱き寄せた。
「ごめんなさい、姫様、達郎様……。私が、ふがいなかったばかりに……」
「葵さん葵さん……もう、どこへも行かないで……ふえぇん!」
号泣しているナーちゃん。
葵さんもまた、彼女を強く強く抱き締めながらぽろぽろと涙をこぼしている。
ああ――良かった。
俺、ちょっとは役に立てたんだろうか。
あのクソ野球部で鍛えてきたコト、無駄なんかじゃなかった。自分の力だけのハナシじゃなくて、マサとか由美さんにも出会えたこともある。何のためらいもなく力を貸してくれて、マジ、感謝だな。
ようやく俺の中で、大きな充実感と納得とがはっきりしたカタチになろうとしていた。
しかし。
「――あーっ! あーっ! もーやだー!」
突然起きた振動、そしてあの耳障りでイラッとくる声。
どうやら、セイゾーが最後の逃亡をはかっているらしい。
ドドドドドと、巨体が階段を転げ落ちてくる地響き。すぐ近くまできてやがった。
まずいな。
このままじゃあのバカ、逃げて行ってしまう。
「……おォい、タツぅ! コレ、葵ねーちゃんのじゃねーの? キモデブ野郎の部屋にあったぜ」
と、いきなり二階からマサが顔を出した。
その手には、葵さんのトレードマークであり愛用の――オーシャンイーグルが。
「あきゃーっ!」
セイゾーの野郎、既に階段から降り、いやほとんど転げ落ちきって、玄関から出て行こうとしている。
それを見た葵さん、キッと表情を引き締め
「その銃! 早く、私へ!」
マサに向かって叫んだ。
「お、おォ!」
マサは葵さん目掛けて二丁のオーシャンイーグルを放り投げた。
すっと立ち上がるなり、葵さんは両手でそれぞれ銃をキャッチ、したとも思わせない素早さで
タンッタタタタタンッタンッ
速射。
狙ったのは、セイゾーではなかった。
その頭上にぶらんぶらんしている――でっかいシャンデリア。
頼りないその命綱は、葵さんの素晴らしい射撃によって打ち抜かれた。
あとはもう、お約束。
がっしゃーん――
いかに巨大なセイウチ野郎といえども、脳天にシャンデリアのカタマリを喰らってはひとたまりもない。
「Say……House……がくっ」
House=ウチ、だから「セイウチ」かよ。
海の連中、なぜかやられ際に自分の個体名を言うクセがあるようだ。
ま、聞かなかったことにしよう。かなりどうでもいい。
両手を交差させて銃を構えたままだった葵さん。
すっと引いて両腰の位置へもっていくや、見事なクイックドロウをキメつつ、俺とナーちゃんに向けてにっこりと素敵な笑顔を見せてくれた。
――その上では。
「……おォ、おォ。あの葵っちゅーねーさん、なかなかやるもんだねェ。なかなかのビジンだし、さ」
ぷっかー。
煙が心地よく天に昇っていく。
武装天女を解除した由美さんが、くわえタバコでぼそりと呟いた。
その隣で、精根尽き果てたようにへばっているマサ。
「あ、由美さん……今回の奴ら、なかなか……しんどかったッスね……」
すると由美さんはニヤリと笑って
「……あン? ヤバかったの、あのデブだけだろォ? アタシゃ、なんだか物足りないねェ……」
そう言って煙を吐き出した由美さんの横顔は、武装天女のそれだった。
こうして、ナーちゃんの長い長い一日は終わった。
葵さんの救出、そしてブルーフィッシュ区域総督府をぶっ潰すという大きな成果と共に。
――ちなみに。
あのイワシャールは発見されなかったのか?
いることはいた。
片っ端から牢屋をぶっ壊していた際、不覚にも俺達は気がつかなかったのだが、その一画にヤツは入れられていたらしい。
このクソイワシはナーちゃんと俺に知らんぷりをこき、自分だけとっとと逃げ出してやがったのだ。トビタローやジンベエさんが進んで協力してくれたにも関わらず、である。
全てが片付いた後、のこのことアホヅラ下げて現れたイワシャール。
ヤツは悪びれもせずに
「ま、戦略的撤退の必要性ってものですよ。私が逃げるフリをしてオトリになることで、達郎どのが行動しやすくなると計算していたのです。この私の協力があったればこそ、葵どのの救出に成功できたのですぞ。少しは感謝していただきたいものですよ」
ほざきやがった。
何が「戦略的撤退の必要性」だ。
セイゾーの手下どものほとんどは由美さんとマサが潰した。このバカイワシが解放された頃には、アザラシトリオ以外に敵なんか一匹たりともいなかったのだ。初対面の由美さんとマサ、あまりのイワシャールの厚顔無恥ぶりに唖然としている。
「葵どのも、お礼くらいしたらどうでしょう? 私がいなければ、今ごろあなたは南氷洋に――」
イワシャールはまだ何か言い掛けたが、
「……南氷洋にはお前が行け!」
「あーれー……」
渾身の回し蹴りでブルーフィッシュの遥か彼方までぶっ飛ばしておいた。
――あんな取るに足らない雑魚をわずかでも心配してやった俺がバカだった。