第1章 見えないステータス
「……う、ん……」
目を開けると、そこは森の中だった。
木々が生い茂り、風が葉を揺らしている。
「ここが……異世界?」
体を起こすと、違和感に気づいた。
軽い。
めちゃくちゃ体が軽い。
「なんだこれ…」
ジャンプしてみると——
ドンッ!!
ありえない高さまで飛び上がった。
「は!?!?」
着地も軽い。
「え、ちょっと待って…これって…」
もしかして、もう強くなってる?
でも——
「ステータス…ってどうやって見るんだ?」
手をかざしてみる。
「ステータスオープン!」
……何も起きない。
「ステータス」
「オープン」
「確認」
「見せろ!!」
——何も出ない。
「マジかよ…ほんとに見えないのか…」
プロローグの話が本当だったと理解する。
つまり——
今の自分の強さも、能力も、全部わからない。
「でも…さっきのジャンプ的に、たぶん強いよな?」
その時。
ガサッ
草むらが揺れた。
「……っ!」
振り向くと、そこにいたのは——
大きな狼。
普通じゃない。
目が赤く光っている。
「これ、絶対ヤバいやつだろ…!」
いわゆる“魔物”ってやつだ。
狼は低く唸りながら、ゆっくりと近づいてくる。
逃げるべきか?
戦うべきか?
わからない。
でも——
「やるしかない…!」
覚悟を決めた瞬間、体が自然と動いた。
地面を蹴る。
さっきのジャンプと同じ感覚。
一瞬で間合いを詰める。
「うおおお!!」
拳を振り抜く。
ドゴォッ!!
ありえない音が響いた。
狼は吹き飛び、木に叩きつけられる。
そして——動かなくなった。
「……え?」
自分でも信じられなかった。
「今の…俺がやったの?」
手を見る。
震えている。
怖さと——
少しの興奮。
「……これが、異世界か」
その時、ふと頭の中に“何か”が流れ込んできた。
——経験を得た。
——成長した。
でも、やっぱり数値は見えない。
「……ほんとに感覚しかないのか」
だけど、不思議とわかった。
今、少しだけ強くなった。
「……面白いじゃん」
にやっと笑う。
見えないなら——
感じればいい。
測れないなら——
確かめればいい。
「この世界、攻略してやるよ」
こうして、俺の“見えない最強”への物語が始まった。




