プロローグ
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死ぬ瞬間って、もっと劇的なものだと思っていた。
走馬灯とか、涙とか、後悔とか。
でも実際は——
「うわ、やば…」
その一言だけだった。
帰り道、イヤホンで音楽を聴きながら歩いていた。信号は青だった。だけど、横から来たトラックには気づかなかった。
視界がぐるっと回る。
音が消える。
そして——暗転。
そのはずだった。
「……ん?」
目を開けると、そこは見知らぬ空間だった。
真っ白でも、真っ暗でもない。不思議な“何もない場所”。
そして目の前には、一人の女の子がいた。
「ようこそ、死後の世界へ」
さらっと言われた。
「いや軽くない!?」
思わずツッコんだ俺に、その少女はくすっと笑った。
「あなた、運がいいよ。転生できるから」
「……テンセイ?」
「うん、異世界にね」
その言葉を聞いた瞬間、頭の中に漫画やアニメの記憶が一気に浮かんだ。
剣と魔法、チート能力、ハーレム、無双——
「マジで!?」
思わずテンションが上がる。
そんな俺を見て、少女は少し困った顔をした。
「ただし、ちょっとだけ条件があるけどね」
「条件?」
「あなたが行く世界には、“ステータス”も“スキル表示”もないの」
「……は?」
「他の転生者は、普通はスキルとかレベルが見えるでしょ?でもあなたは——見えない」
「いやいや、それ一番大事なやつじゃん!?」
「でもちゃんと存在はしてるよ。ただ、見えないだけ」
つまり——
強くなってるのかどうかも、スキルがあるのかも、全部“感覚頼り”。
「めちゃくちゃ不利じゃん…」
そう言うと、少女は少しだけ真面目な顔になった。
「でもね、そういう人の方が“本当に強くなる”こともあるんだよ」
「……どういう意味?」
「それは行ってからのお楽しみ」
にやっと笑う少女。
そして、手をひらっと振った。
「それじゃあ、いってらっしゃい」
「え、ちょ、まだ心の準備——」
次の瞬間、俺の意識は再び暗闇に沈んだ。




