第5話 はじめての魔法
無事におにーちゃん呼びを習得したぼくですが、「て!(して!)」の一言でなんでもしてくれる超優しいお兄ちゃんのおかげで、語彙が増えないことに危機感を覚えはじめた今日この頃。
「おにーちゃ!て!」
「はいはい手つなごうね」
「おにーちゃ、て!」
「ミカくん本とってほしいの?これ?」
「おにーちゃ!て!」
「ミカくんジュース?はいどうぞ」
「おにーちゃ!て!」
「ミカくんだっこ?もー、少しだけだよ」
ううむ…これが甘やかされてる弊害か…。
ある日そんな平和な毎日に波紋を落とすできごとがおきた。
ぼくと遊んでる時以外はいつも本を読んでいたリアムだが、どうやら読んでいたのが子供用の絵本だけでは無かったらしい。寝起きにぼーっとしながらぶつぶつ「…いちにぃさん…ほぅΠぇぉとΦぅは熱い、つまりお湯?…」という謎の言葉を呟いたリアム。
「?!ぅあちっっ!!」
お父さんの飲もうとしていたコップのお茶が沸騰したことで家の中は騒然とした。
難しい本を読んでいっぱい勉強して使えるようになるまで何度も練習が必要なはずの魔法をいきなり行使してしまったのだ。
さすがぼくのおにーちゃん、すごい!
お母さんがたまに指振ってカーテンしめてたからもしかして魔法とか普通な世界なのかなーって薄々思ってたけど。(お母さんは、ちょっと動かすくらいしかできないのよ、お湯沸かせるのすごく便利ね!って言ってた。)
ちなみにお父さんは脳筋だから全然魔法使えないけど困ってないらしい。
「リアムを町の学び舎に?」
家族はもちろん村には魔法を教えられる人もいないし、お父さんが町の偉い人に相談したら、リアムはまだちょっと小さいけれど、今のうちから学び舎に通ってきちんと勉強した方が良いということになり。
「リアム、どうする。学び舎に行って勉強するかい?」
「……ぼく、もっと勉強したい!」
急なできごとにとまどっていたリアムだったが、少し考えて力強く頷いた。
学び舎はちょっと遠いので、まだ小さいリアムはお母さんと一緒に馬車で行くんだって。お父さんにだっこされて上機嫌で馬車乗り場まで行ったぼくは、当然一緒に行くつもりだった。
「リアム気をつけてな。ほらミカ、いってらっしゃいだよ」
「?!」
「ミカはお留守番よ」
(ガーン)
「…ミカもいく!」
「ミカくん、いってくるよ」
「いや!ミカも!」
「ミカくん、夕方には帰ってくるから」
「ミカも行くーーー!!!!」
ぼくだって勉強わかるもん(たぶん)!
顔中涙と鼻水まみれの大号泣である。
引き付けを起こす勢いで泣いていたらお父さんに持ち上げられた。
「ほらミカ!高い高ーい!!」
お父さん力持ちすぎ!本当に空に放り投げられてるんですけど!!
「きゃっきゃっ!!」
びっくりして涙が引っ込んで、うっかり喜んでしまった。
もうっ!そんな子供だましは通用しないんだからね!




