第4話 1歳になりました!
努力のかいあってだいぶ動けるようにようになった1歳のぼくです!
もうベッドの上であうあういっているだけのぼくではないのだ。
言葉だって、言葉だって、もう少し……。
「かか!」
「あら!」
ある日突然、それっぽい音になったら、
お母さんが目を丸くして飛んできた。
「リアム、聞いた!?ミカがお母さんって!」
「聞いた聞いた!すごいよミカくん!!」
(……ようやく言語化できた。長かった)
きゃーきゃー喜ぶお母さんとリアムに、内心少し冷静になるミカだった。
それからはとんとん拍子で、「かか」「とと」と言えるようになった。
そしてとうとう、リアムの名前も。
「アム!」
「ィアム!」(リアム!)
「!お母さん!ミカくんが僕のこと呼んだよ!」
リアムの顔が、じわじわと赤くなっていくのをミカは観察した。
(……ふぅ、やっと呼べた。リアムも喜んでるー!)
それからというもの、ミカのリアム後追いが加速した。
喋り始めたミカが何を言っても(ほぼ「て!」しか言ってないが)、
優しいリアムは言うこと聞いてくれるので嬉しくて仕方がないのだ。
「ィアム!て!」(リアム!手つないで!)
「はいはい手つなごうね」
「ィアム、て!」(リアム!本とって!)
「ミカくん本とってほしいの?これ?」
「ィアム!て!」(リアム!ジュースいれて!)
「ミカくんジュース?はいどうぞ」
「ィアム!て!」(リアム!だっこして!)
「ミカくんだっこ?もー、少しだけだよ」
にこにこ笑いあう兄弟は、お母さんが
(リアムがミカの「て!」を全部理解してるのはすごいけど、兄のリアムがミカくん呼びなのに弟が呼び捨てって…)
と複雑そうな顔をしているのに全く気付いていなかった。
夕方、お父さんが帰ってきて、その話になった。
「ミカがリアムのことを呼び捨てで!?」
お父さんは笑いをこらえるような顔をした。
「はは……まあ、俺たちがそう呼んでるから、真似したんだろうな」
「笑いごとじゃないわ。ミカ、リアムじゃなくてお兄ちゃんよ」
ミカはリアムの顔をじっと見た。
なんだかそわそわ、うれしそうな顔を隠しているようにも見える。
「ィアム」(リアムだよ)
「ダメよ。ミカ、聞いてる?」
気持ち的にはかわいいリアム少年を見守ってるつもりのミカなので、
ついついお兄ちゃん呼びを失念していた。
お母さんがミカの顔を覗き込んだ。
「リアムのことはね、お兄ちゃんって呼ぶのよ。おに、い、ちゃん」
「……にー」
「そうよ、お兄ちゃん!」
「……にーちゃ」
「上手!もう一回!」
「おにーちゃ!」
「ふふっ!おにーちゃんだよ」
隣でリアムが、困ったような、それでいてどこかくすぐったそうな顔で笑っていた。
「おにーちゃ!」
(……おにーちゃん。そうだ。初めて会った時に、リアムがおにーちゃんだよって言ってた…)
「おにーちゃ」
(リアムはぼくのおにーちゃん。……悪くない)
なんだか嬉しくなってミカは言葉を嚙み締めた。




