第9話 手記4日目① 切り抜ける方法
4日目
今日も私はリクを連れて森へと向かった。
検証したかったのは、あの衝撃波による探知をどうやったら潜り抜けれるかということだったので、私は木の台を持っていくことにした。
それはリクの足が地面に直接触れないようにするためのものであり、宿屋の主人に相談して、高い棚に置いてあるものを取るときに使っている木の踏み台を貸してもらったのだった。
私はファンネルの縄張りに近づくタイミングでそれをリクに渡すと、リクをファンネルから見えなくなるような少し太い木の後ろに隠して今日はそこにさらに踏み台を敷いてその上に立って待つように告げた。
リクが木の下にそれを置くと、雪に台が少し沈み込んだが、台そのものに高さがあるので雪から0.3イング(約20センチ)ほど飛び出た状態になる。
私はリクをその場に残すと少し離れた木の後に立ってファンネルを待った。
昨日と同じ手順で入れ墨を使って縄張り全体に探知を張ると、ファンネルが同じように森の奥から縄張りへと現れる。
そしてまた前足を地面にたたきつけて衝撃波を放った。
衝撃波は私とリクまで到達して、そのままファンネルの縄張り全体まで伝って行った。
そこで少し待っていると昨日と同じように縄張りの周辺に動物達が集まり出した。
しかし今回は彼らの敵意の対象は明確に私一人だった。
少し離れたところにいるリクには目も暮れず私一人を明確に狙っている。
私はリクとはいったん別方向に逃げると、またワイヤーを利用して、縄張りから一気に縄張りの外の木まで脱出する。
その後追ってくる獣達を巻いた後でこっそり縄張りから逃げて来たリクと打ち合わせていた場所で合流した。
「僕には気づかなかったね」
と彼は言っていた。
これである程度、探知の対象と、探知の精度は測ることができた。
おそらくあの衝撃波は衝撃波自身に地面を介して直接触れた生き物を探知しているのだ。
前回、私たちは草藪の後ろにいたので、正面から直接衝撃波と触れたわけではなかったはずだが
、それでもファンネルは私たちに気づいていた。
そこから導き出せる仮説は地面に触れていることがあの探知の対象になるのではないかということだった
そして結果として今回私は地面に足が直接触れているために衝撃波による探知の対象になったが、反対にリクは木で足が直接地面に触れていないおかげで探知に引っかからなかった。
木の後に隠れても私が気付かれたところを見るとやはり、ほぼすべての地面が対象になってしまうのだろう。
この仮説を元にして木の板を作ってもらうときに、多少高さがないと木の上にいても地面とみなされそうな気がしたのであえて、少し板に高さを持たせていたが、それが功を奏したのかリクは気づかれなかった。
これである程度対策自体の方向性はできたが、少し気になるのが能力の多彩さだった。
本来ただの拡大型の害獣一匹が持ち得る能力は一つのみになることが多い。
しかしあの衝撃波は一つで、探知と誘導の二つを実現できているため、少し一個体が持つ能力としては種類が多い気がしているのだ。
そこで仮説として建てられるのが、もう一体別の獣が潜んでいるのではないかという懸念だ。
ファンネルが探知した人間に対して攻撃の誘導を行っている害獣が別にいるとすると、少し厄介な気がした。
だが仮に探知のみだとすると、拡大型といえど能力値的にはかなり低いと言わざるを得ない。
それに、仮に別々の獣だとするとファンネルが探知した後すぐに他の獣が近くにいて私を指定して誘導しなくてはならないが、その瞬間ファンネルの近くには他の獣はいなかった。
だとすればやはり、探知した敵を誘導で攻撃させるその一連が一つの能力なのだと解釈するほうが自然な気がする。
稀な例だが一つ一つの能力の規模を抑えることで複数の力を持っている害獣も過去に例がないわけではなかった。
だがその場合でも、能力は別々に発揮されるわけではなく、基本的に一連の流れの中で発揮される。
これを私たちの長は『単一能力の拡大解釈』と言っていた。
ファンネルがこれに当てはまるかどうかは正直私の中では微妙な所ではあるが、時間はあまり残されてはいないため、一旦今日やってみた方で探知を避けていく方向で今回は方針を立てることにした。




