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超獣戯画Ⅱ  作者: 纏笛


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第74話 狼の王

 最後に、ロウがなったのがガルムだった。記憶はガルムが憎しみのままに、イルクを噛み殺して王になった所から始まる。当初ガルムはなんとしても、人間達を全て殺すと考えていた。

 しかし、厄介な事に今までの王達の記憶を見たせいで、自分のしていることが間違っているような気がしてしまった。

 極め付けはもっとも憎かったはずのイルクが実は自分を生かそうと懸命に人間側にかけあっていたことを知ってしまったことだった。

 だが、それでも消えぬ人間への憎しみを胸にガルムは迷った。そして王となった最初の集いで、ガルムは人間との関係は一旦変えないと宣言したのだ。

 これにガルムに期待していた人間嫌いの獣達は落胆し、激怒した。そんな中で、エサルは激怒するでも落胆するでもなくただなぜ変わったのか、その理由を知りたがった。

「なぁガルム。どうして、お前は変わってしまったんだ? 人間が憎いのを忘れたのか?」

 だがガルムは答えなかった。歴代王は記憶が引き継がれていくということを意識的に皆に言わないようにしていたので、それを踏襲したという部分も多かったが、ガルムが言わなかったのにはもう一つ理由がある。

 それはエサルへの感情の変化だった。エサルの見た目はただのキツネだが、王のどの記憶を辿っても、かなりの王の記憶に彼は部分部分で登場しては人間を憎むように仕向けている。

 王になる前、エサルの事はただ自分を良く心配してくれる存在くらいにしか思っていなかったが、今となっては別の意図を感じざるを得なかった。

 エサルは人間嫌いの王の記憶にはよく登場して、イルクなど人間と協力するような王の時はまるで息を潜めたように出て来なくなる。他の森の民はエサルが何年も生きているということは知らないようだった。

 ガルムはエサルの正体も少し気になっていたが、実際のところ王として色々な事に対応しなくてはならなくなり、すぐにそのことも忘れていった。

 そして、ガルムが王になってしばらくしたある日、エサルを含めた複数の動物がガルムにあることを直訴しにきた。

「どうしたんだ今日は」

 サルのミガルは重苦しく切り出す。

「前王の妻の件だ。知らぬわけではなかろう」

 ガルムは言われて苦い顔になる。イルクのことは、王になって彼の記憶をしってからなるべく考えないようにしてきた。

 初めはイルクもその家族も全て憎く殺すつもりだったが、全てを知った後でそんなことはガルムにはできなかった。

 結果として彼ははイルクの妻ファンネルに王の土地とは離れた場所に縄張りを与え、他の獣達に『彼女に危害を加えるな』と言う命令を出していた。

 それがガルムにできるイルクへのせめてもの礼儀だった。しかし、最近になってその残された妻が、他の森の民を襲っている噂が流れ出していた。

「奴がどうしたと?」

 ガルムは知らないふりをした。獣達は憤る。

「あくまで知らないふりをするつもりか、もう民たちがかなりやられている。王直々に対処すべきだ」

「そうだ!」

 周りの獣達も同意する。ガルムはフーッと息を吐いた。

「俺が対処する」

 そういうと、ガルムはロウ達を連れてファンネルの縄張りへとむかった。ガルムがファンネルの縄張りへと向かうと近づくにつれ徐々に動物たちの気配がなくなっていった。

 そしてファンネルの縄張りにたどり着くと、その瞬間、衝撃波のようなものが体を通過するのを感じた。

 すると数秒後には、ガルム達の前にファンネルが現れた。白く覚醒したファンネルの姿を見てロウはおどろいた。体が白くなっただけでなく、ツノも生え、完全にファンネルの面影は無くなっていた。唯一相手を貫く視線とその目の色がファンネルのものだった。

 ガルムは構える。周りにいた護衛のロウ達も構えた。ファンネルは視線をゆっくりとガルムに合わせる。

「だいぶ、暴れているそうだな」

 ファンネルは問いかけには答えずただ、怒りの視線をぶつける。

「その怒りは人間や他の民ではなく、俺にぶつけろ。お前が恨むべきは俺だけだ。そうだろう?」

 ファンネルは答えなかった。かわりに、とびはねると、ファンネルはガルムに襲いかかる。ガルムはファンネルの飛びかかる前足を瞬時に交わして、喉元に噛みつこうとした。

 しかし、読まれていたのか、ツノで薙ぎ払われてしまう。その衝撃で、吹き飛ばされながら、ガルムは勝てないかもしれないと感じた。

――覚醒も味方しているのか、余りに力が違いすぎる……。

 ガルムは入れ墨に力をこめた。実は王が持つ入れ墨には能力があった。ガルムはファンネルに入れ墨をこっそり移す。

 すると、ガルムにはファンネルが次にどこを狙っているのかがなんとなくわかるようになった。

 その力を使い、ガルムは次のファンネルの蹴りを直前で交わしながら、後ろ足に噛みつくことに成功する。しかし、ファンネルは痛みを出すこともなく、すぐさまそれを振り解いた。

 その後も攻撃を交わしても、ガルムの攻撃はファンネルに効いている兆しがなかった。

 時折怪我をしたり、痛がるそぶりを見せるが、すぐに回復してしまう。

――これではいずれ、力尽きる。

 そう判断すると、ガルムはロウ達を連れて一度その場を去った。去る中で、ガルムはファンネルをどうすべきかを考えていた。

――あのままにはできないが、今の俺には奴を殺せない。とすると、どうするか……。

 ガルムが、自身の縄張りに戻ると、獣達が首尾を聞くために集まってきた。


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