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超獣戯画Ⅱ ~『白鹿と霧の町の闇』原版~  作者: 纏笛


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第68話 王の提案

 マリウスは一瞬言われてることの意味が理解できなかった。想像していた王の代償は貢物に見合う何かを持ってくることや、獣に有利になるような何かを手助けするぐらいのことだった。

「何をおっしゃっているんです?」

 王はゆっくりと繰り返す。

「聞こえなかったか。リンカの実をやるかわりに私を殺してほしいと、そう言っている」

「意味はわかるのですが……。なぜです? それをしてあなたに何の得が……」

 王は首を振る。

「その理由を細かくここで話している時間はないが、ざっくり言うと、私は王の力を森の民が持つべきではないとそう思っている。だから人間であるお前に殺してもらい、王の力をお前に奪ってもらうのだ」

 マリウスは言われても王が何を言っているのか理解できなかった。

「待ってください。王の力を人間が持ってしまえば、あなたは良くても他の者が許しません。」

 王は頷いた。

「だろうな。いずれ森の民は王の力を奪い返しに来る。私の狙いの一つは一時的に王の力を森の民から離すことにある。そうすれば彼らは森での以前の生活を取り戻す。そう望んでいる民の方が最近は多いはずなのだ」

 マリウスは未だに意図が掴みきれない。

「一時的にでも王の力が無くなれば、民は自然とそちらを望むと?」

 王はうなずく。マリウスは首を振った。

「そんな……彼らは王を望んでいるのに……。それにそんな理由で、王の力を、しかも人間の手に渡しても納得されません」

 王はうなずく。

「これは狙いの一つだ。私の本当の狙いはお前が王になればわかる……。だがこれを今お前に話す事はできん。わかってくれ……時間がないのだ」

 マリウスはあまりのことに頭が混乱していたが、と同時に王の言葉に今まで感じたことのない焦りを感じていた。

「でも……そんな理由で王を殺せません……」

 王は言葉を荒げた。

「お前の覚悟は所詮そんなものか。母を助けたいと口では言っていたがこ本心では母親を助けるつもりなどないのだろう」

 そう言うと、王は背中を向けてそこから立ち去ろうとした。マリウスは王の言葉にハッとする。自分がなぜここにきたかを思い出していた。

 母親のためなら何でもすると言った自分の言葉に嘘はなかった。マリウスは自分の腰に下げている護身用の剣に手をかける。夜の森は獣が多いので護身用に聖獣隊の剣を身につけていた。

「待ってください」

 王が振り返ると、マリウスは震えながら剣を構えていた。王はうなずく。

「それでいい。当たる瞬間に力をしっかり込めろ。絶対に剣を離すんじゃない」

 マリウスの体は自然と王の言葉に従う。もう聖獣隊の縛りは解けていたが、自然と王のいうことに従うことができた。

「私を刺したら、その小屋から実を持って行くんだ。わかっているな」

 マリウスはうなずく。

「さあ、行くぞ」

 そう言うと王は、マリウスに向かって走った。そして最後の瞬間、フワッと体を捻って自分の急所がマリウスの剣に刺さるようにマリウスに突進した。

 マリウスは突き飛ばされて、後ろに倒れた。彼が恐る恐る王を見ると、王の体には剣が突き刺さっていた。

 しかし、マリウスの力では奥に差し込めなかったのか、王はまだ息があった。マリウスは王に駆け寄る。

「王!」

 王は苦しみながら喋る。

「充分だ。よくやった」

 マリウスの目には涙が浮かんでいた。王は痛みを堪えながら促す。

「早く行け……気づかれる前に。あまり時間はないぞ」

 言われてマリウスは泣きながら小屋へと向かった。持っていた鍵を使って、小屋に入ると、リンカの実をとって小屋を出る。そして、力無く座り込む王を後にして、その場を一目散で走り去った。


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