第65話 王殺しの犯人
サラは宿屋のベッドの上で飛び起きた。
体は汗でびっしょりだったのですぐさま、着替えながら状況を整理し始める。
――頭の違和感がない。とすると……。
彼女は荷物を見ると、荷物は初日に到着したばかりの荷解きされていない状態だった。
――繰り返しならばここは荷物があいていないとおかしい……。
彼女はそのまま宿屋の外に出る。辺りは今までのような霧がかった朝と違い、薄暗かったのでそこで繰り返しが終わったことに確信を得た。
そして再度宿に戻って急いで武器の準備を始める。
――おそらくあまり時間はない……。
サラは急いで武器を持ち、宿屋を飛び出た。そして、一目散に町の中をかけていく。
彼女は王殺しの犯人は殺されると予想としていた。
――そうなってしまう前に……やれることをやるしかない。
サラは町の中を走り抜けると、広い牧場にたどり着く。中に入って行くと、牧場の一つの小屋の周りを動物たちが取り囲んでいた。
動物たちの先頭にはロウがいて、隣にはラビルと、女の子がいた。
サラは一旦気づかれないように近くの木の裏に隠れる。ラビルは女の子に話しかけていた。
「メア頼めるかい?」
メアはうなずくと、当たり一体に衝撃波を放つ。
「これで大丈夫なはずです」
ラビルに言われた、ロウはうなずくと小屋に向かって呼びかける。
「出てこい……ここにいることはわかっている」
すると小屋からゆっくりと一人の青年が震えながら現れた。それはマリウスだった。心なしか記憶の時の彼よりやつれて見える。
ロウは問いかける。
「なぜだ。なぜ聖獣隊のお前が王を殺した」
マリウスは動揺していてすぐに答えられそうになかった。ロウは首をふる。
「もういい、時間の無駄だ。大事な事はお前が今我らの王だということだ。だから、お前に決闘を申し込む」
言われてマリウスは愕然とした表情を浮かべる。
「それは僕とあなたで殺し合うということですか?」
ロウは頷く。マリウスは怯えていたが、半ば諦めたように頷いた。だが、その時、後ろに控えている動物達のさらに後ろから声がした。
「待ってください」
ロウはそちらの方向をむく。そこにはデルアートが息を切らせながら立っていた。
「町長か、言いたいことは山ほどあるが今はお前に構っている暇はない」
彼はそのままロウとマリウスの間に入る。
「殺さずとも、あなたが王をすればいい、過去には、殺さずに王の譲渡をした例もあったはずです」
「その場合も決闘が行われないことはない」
「では約束してください。この子を殺さないと」
ロウは苛立ったように首を振る。
「決闘は真剣勝負だ。手を抜くことは許されない。その状況では王の譲渡が正しく行われない可能性もある……」
デルアートは言い返せない。その後ろでマリウスはどこか覚悟を決めたような目をしていた。
ロウが彼にその場をどくよう目で促す。サラはそこで覚悟を決めると飛び出して行った。
「待ってください!」
ロウは驚いたが、すぐ気を取り直した。
「なんだお前か、邪魔をするな、と言ったはずだ。これは俺たちの問題でお前には関係ない」
サラはうなずく。
「問題がその子だけなら、そうでしょう。しかし、これはこの町の民と貴方達との問題になる。そこが壊れてしまうと、私の任務にも支障が出ます」
ロウは首を傾げる。
「むしろ、王の問題を解決すれば、お前は自分の任務に集中できるはずだ」
サラは首を振った。
「おそらくですが、王が殺されたのはこの子だけが原因ではないはずです」
ロウは訝しげな表情を浮かべる。
「どういう意味だ」
「王殺しの件にはまだ、謎が残っています。王はなぜあの状況で、彼に殺されたのか、そこが解決していません」
ロウは首を振る。
「そこはそれほど大事な点じゃない」
サラは食い下がった。
「なぜです? 貴方の尊敬する王は、あの状況であの子に負けるほど弱いと、本気でそう思っているのですか?」
これにロウはピクっと反応する。
「王を侮辱するつもりか?」
「侮辱ではありません。きちんと真相を知らないまま、復讐を果たす事は危険ではないか、と言っているだけです」
聞き覚えのあるその言葉にラビルは一瞬サラの方を見つめた。ロウは一瞬迷ったような表情になる。
周りの獣達は突然出てきたサラに敵意を剥き出しにする。
「こいつの言うことなんてどうでもいい、早くその子供を殺して王の座を我らに戻すのだ」
周りの獣も同調する。しかし、ロウは。
ここに来るまで彼は、王を殺したマリウスへの憎しみに取りつかれていたが、サラとの会話で。
「こいつが殺したことには変わらない……。こいつが……」
それでもなお押し寄せてくる憎しみの感情を抑えられないとばかりにロウはマリウスを睨みつける。
「彼を殺すのは、真相を知ってからでもなんら遅くはないはずです。しかし、今彼を殺してしまえば、なぜ王はあの日死ななければならなかったのか、その真相は闇のままで、なお人間と獣の対立だけが残ります。それはお互い望んでいないでしょう?」
ロウはグッと詰まった。王は生前人間を好いてはいなかったが、決して理由なく対立しようとはしなかった。ロウは尋ねる。
「お前の提案は、こいつの記憶を見ることか?」
サラはうなずく。
「だがどうやって見る? もう瘴気はない」
サラは首を振ってリクを見た。
「お願いできる?」
リクは一瞬キョトンとした顔をしたが、意図を理解して、すぐに頷いた。
彼は皆の中心になるようにマリウスを連れて行くと置いて頭を触って目を閉じた。少ししてから目を開けると、今度はその場にいる全員に目を瞑るように促す。
「面白いですね……」
ラビルはその輪に加わりながらとても興味深そうに呟いた。
「当日の彼の記憶を見せて」
サラの指示にリクはうなずく。目を瞑った全員の脳裏に、記憶が流れ込んでくる。




