第61話 手記 五日目-八回目①
起きると私は一息ついて、外に向かった。朝の空気が立ち込めていて、少し待つとラフサルさんが現れる。なぜか今回はラフサルさんと話さなくてはならない気がした。
「おはようございます」
ラフサルさんは私を知らないので相変わらず不審な目で見る。
「私は銀の爪のサラと言います。町長さんに依頼されて、獣狩りに来てます。もしよかったら少しお話を聞かせてもらってもいいですか?」
ラフサルさんはそういうことならと、少し警戒を解いた表情になった。
「まさか町長が別の町の獣狩りを雇うとはねぇ」
ラフサルさんと宿屋の近くのベンチに座って話す。
「そんなに珍しいんですか?」
ラフサルさんはうなずく。
「まあないなぁ。知ってるかはわからんがうちの町には元々獣狩りがいる。よっぽどじゃなきゃそっちに片付けてもらうだろうさ」
「王に頼まれたからという話も聞きましたが……」
ラフサルさんは首を横に振る。
「町長は人を頼るのをあまり好かんからな。なるべくなら身内でかたをつけたかったはずなんだがなぁ」
「ファンネルが、それほど強いということなのでしょうか……」
「手を下したくない部分もあるのかもしれんがね。前王と町長は親しかったからなぁ」
「そうなんですか?」
「そうじゃ……前王は人間に比較的協力的だった獣でな。ファンネル共々、町長とは友好的だった。今の王は、良くも悪くも獣側じゃからなぁ。それに、交代も唐突じゃったから、町長も少し落ち込んでいるように見えたもんじゃ」
「そのファンネルが今は人間を襲っているんですね」
ラフサルさんはここで少し考え込む仕草をした。
「ファンネルは人間など襲わん……。ワシは本当は今でもそう思っとる」
「それはなぜですか?」
「それは……よくわからんのだが、あの今皆んなを襲っている鹿がどうしてもファンネルに思えんのだ」
私は襲われた人も同じようなことを言っていたのを思い出した。
「それはなぜです?」
「ワシはファンネルに昔、命を救われたことがある。狼達に襲われそうになったところを救ってもらったんだそれ依頼ワシは山に入る時はこっそりエサになるようなもんを持って行くことにしておった。ファンネルや王にあったときに恩を返せるようにな……」
私は頷きながら聞いていた。
「しかし、ファンネルが人間を襲うようになってから、森へ入ってみると、ファンネルはまるでワシのことを忘れてしまったかのようだった。縄張りに入ろうとすると、威嚇されて襲われかかったくらいだ」
「なるほど……」
「ありゃきっとファンネルじゃあねぇ。見た目も角が生えていたし……だが誰も信じようとはせん。見たもんしか信じねぇ連中だ」
「ファンネルが覚醒、すなわち今の瘴気を纏った姿になる前……何か変わったことはありませんでしたか?」
「うん……。いやあれは確か……」
私は少し反応を待った。
「ファンネルが少し身重になってる気がしたんだ。最後にあったとき……。今の王にイルクがやられる直前だかな……」
身重……。イルクが今の王に負けたのは三年ほど前の話のはず。とすれば……。私はそこまで考えると、今日はファンネルの所に行くことに決めた。
ラフサルさんにお礼を言って一旦宿に戻ると、いつものように全てを忘れているリクにファンネルのところに行くと告げて準備をさせた。
少し難しい立ち回りになりそうだった。おそらくファンネルを殺すという流れは変えずに私の考えを確かめなくてはならない。
繰り返しの一番最初と同じように、ファンネルと戦う準備だけをして、リクと二人で森へと入る。
森の西側、ファンネルの縄張りの近くに着くと、私は前の記憶を頼りに配置につき、ファンネルの出現を待った。初日と同様に身を隠して待っていると、ファンネルが現れる。




