第58話 新たな記憶
ラビル達がいた施設に着くと、ドアをノックする。
「はい」
と研究員の一人が顔を出すと、私を一瞥して、
「少々お待ちください」
と言って中に引っ込んでいった。そして数分経つとラビルが現れた。
「これはこれは……。何かわかりました?」
私はうなずく。
「町長の居場所です……。おそらく、リラさんと呼ばれる人の牧場にいるかと」
ラビルは微笑んだ。
「なるほど、役所にも家にもいないのでどこに行ったのかと思っていましたが、特定の人間の家に行っているのですね」
そういうと、ラビルは研究員を呼びつけて何やら指示をした。
「町長の記憶を取りに行くんですか?」
ラビルはうなずく。
「やはりあなたに事情を話しておいて正解でした……。あなたみたいなタイプは自分の立場と関係なく、最善のために動ける。銀の爪はやはり敵に回したくないですね」
私は苦笑いをしてしまった。おそらく銀の爪のメンバーの中ではそういう感覚は鈍い方だろう。レンドさんやグルインさんの方がよほど目標を達成するためだけに動ける。
「私達はそこまで帝国を敵対視しているわけではありません。あなたに会いたかったのも、秘密を知りたいからです。うちの長もそれで帝国をおとしめるつもりはありません」
ラビルは笑った。
「その秘密を知ることこそ、おそらく帝国が最も嫌がることなのですよ」
これ以上この話題を掘り下げる必要はなさそうだった。
「そういえば、今日は新たな記憶の更新はあるのですか?」
「いえ、どちらかというと、今日は町長の居場所の手がかり探しでしたね。正直言うとあなたに期待していましたが……期待以上でした」
「ということは、結局今のままでは、再現はされないままなわけですね」
「ええ……正直私もどの部分が補強されれば犯人がわかるのかいまいち手詰まりですね。足りないものがなんなのか……」
私は瞬間色々なことを考えた。この世界に足りなくて、それが王殺しの動機となり得る何か……。ぐるっと今まで起きたことを考えてみる中で、一つの可能性を思いつく。
「死んだ人……。死んだ人はどうしているのですか?」
ラビルは言われて一瞬なんのことかわからないといった表情を浮かべる。
「死んだ人です。一年前にはいて、今はいないとすれば、死んだ人がそれに当てはまりませんか?」
ラビルは考え込む。
「なるほど。どうして思いつかなかったんだろう……。たしかにそれはどんな形であれ王殺しの要因になり得る……。」
私は頷いた。しかしラビルは途中で首を振る。
「ですが、この一年で、どれだけの人が死んだのかは私たちもわかりません……」
私はチラッとリクを見る。
「もしその人が分かれば更新できますか?」
ラビルは少し考えてからうなずく。
「ええ、その場合いはその人に近しい人の記憶が必要にはなりますがね」
私はリクの肩をそっと掴む。
「頼める?」
リクは意図を察して楽しそうにうなずいた。




