第55話 職員の女の記憶②
ミコトとグレアムは顔を見合わせる。グレアムが話し出した。
「何か分かったのかもな……。あの人の頭ん中はほんとにわからん……」
ミコトも同意したが、実際は少し違う感想を持っていた。
「でもいつもだったらもっと早くわかってもおかしくないですよ……。この前だって、キリトが無くした帳簿の場所話聞いただけで当てちゃったんだから」
キリトが赤面しながら反論する。
「それと王殺しは流石に一緒じゃないだろ」
ミコトは笑った。その後、ミコトはとりあえず自分がつけた記録の見直しをした。町長は間違いなくこの記録を何度も見ることがわかっていたので誤字脱字がないかや、内容に誤りがなかったかを何度も見直す必要があった。
内容の校閲が終わったところでそろそろミコトも業務を終える時間が近づいていた。
ミコトは最後に一応リンカの実の在庫を確認しに行くことにした。普段は記録をつける前に確認するだけで終わるが、今日の王殺しのこともあり、この緊迫した状況で獣達への貢物の数に間違いがあると余計な問題を生みかねない。
役所には、リンカの実を保存している保管庫がある。ミコトはキリトより先に役所を出ると、真っ直ぐに保管庫へと向かった。
保管庫といってもそこまで大層なものではなく、鍵がかけられた小屋で、森にある納品用の小屋とつくり自体は似通っていた。
ミコトがそこに着くと、おかしなことになぜか鍵がかかっていなかった。恐る恐る扉を開けてみる、中には町長がいた。
町長は扉の音に驚いて振り返る。ミコトも驚いたがデルアートの顔を見て安心した。
「ビックリした……何やってるんですか?」
「すまない……。在庫が気になってね」
ミコトは恐らく町長も自分と同じ考えになったのだろうとそこで思った。
「数はどうでした?」
「問題なかったよ」
そういってデルアートが小屋を出ようとした時、ミコトはある異変に気がついた。デルアートの手がかすかに青いのだ。
リンカの実は鮮やかな青い色をしている。そしてもし、リンカの実に触れると、その表面が皮膚に付着して、付着した箇所が青くなるのだ。
小屋のリンカの実は数が分かり安いように仕切りに区切られて保管されている。なのでもし仮に、デルアートがリンカの実様子を見にきただけなのであれば彼の手に青がつくことはあり得ない。
ミコトはそれを尋ねるべきか迷った。しかし、町長はその視線には気づかず、外に出て行く。
このわずかな疑念をどうするべきか、ミコトは町長について行きながら、考えていた。そして、そのまま何も言えずに、一緒に小屋を出て外で鍵をかけた。
そしてそのまま帰路につこうとすると、デルアートは切ない表情でミコトに
「ありがとう」
と声をかけた。




