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超獣戯画Ⅱ  作者: 纏笛


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第45話 手記 五日目-六回目⑧

 話の全貌がわかってくると同時に全てを企てた目の前の男を脅威に感じた。

「なぜそこまでして、獣に協力するのです? あまりあなたに利点があるとは思えないのですが……」

 ラビルは苦笑して頭をかいた。

「損得なしで動かないように見えますかね。まあそりゃそうか……。

 確かに、今回のことに、私が積極的に関わっている理由は犯人探しとは別のところにあります。主なのはやはり研究ですかね。大量の人間を一度に覚醒状態に持っていくことはずっとやってみたかったんです。ですがそれ以外で一つだけ理由を挙げるとすれば、やはり真実ですかね」

 彼の意図するところが見えなかった。

「犯人には興味がないけど真実には興味があると言うことですか?」

 ラビルは腕を組む。

「少し違いますね。私はね……。復讐をする上で一番大事なのは真実の把握だと思うんです」

 私がわかっていない表情をしていたのを読み取って彼は続ける。

「動物達は今回根拠なく人間に王が殺されたと思い込んで、復讐をしようとしている。それは私からするとあまりいい方法とは思えないんです。

 仮に人間が本当に王を殺していたとしても、なぜそうなったかの真実を把握しないまま殺し合いを始める事ほど愚かな行為はありません」

 私は彼の考え方にはあまり共感出来ないことが多かったがこれには共感できている自分がいることに少し驚いた。

「まあ、それでも私に害がなければ復讐を止めるなんて基本的にはしませんがね……。今回はそういう意味でも例外です。

 それにこの方法ならたとえ最終的に復讐になったとしても人間も動物も真実を知って納得した上で次に進める。そう思いませんか?」

 確かにその理論は納得できたが、私は彼が何か別の理由を隠している気がした。

「もう一つ聞いてもいいですか?」

 ラビルはうなずく。

「どうぞ」

「記憶をとっている相手に偏りが見えるのですが、これはやはり怪しそうな人を狙って記憶の収集をしているのですか?」

「ええ、町全員の人間を調べると時間がかかりますからね、山に出入りする人達を優先して集めていますよ」

 私はうなずく。

「ではなぜ、聖獣隊が変に少ないのですか?」

 ラビルは少し驚いた表情を浮かべたが、すぐまたニヤッとした表情に変わる。

「流石ですね……。ですがその理由はおそらく聖獣隊の人間に直接聞いた方がいいでしょう。酒場でレルベットさん達にでも聞いて見てください」

 私は正直この男が今回なぜここまで私に情報を渡してきているのかがよくわからなかった。

「なぜ私にここまで情報を? 帝国にとっては不利になる情報もたくさんあったはずです。」

 ラビルはうなずく。

「正直、当分はあなた方銀の爪に私たちの一切の情報を渡すつもりはありませんでした。ですがあの人……リマさんに接触したのでしょ?」

 リマというのは前にレンドさんが接触した、〈製作者〉と呼ばれる人のことを指していた。

「リマさん、もう一人の製作者ですよね。子供の害獣を率いている」

 ラビルはうなずく。

「今は害獣を連れてるそうですね。私も他の人から聞きました。すでにあの人はあなた達に帝国が獣を作っていることを教えてしまっているでしょう?」

 図星だった。実際にその話を直接リマから聞いたのは銀の爪の一員であるゴルドだったが、確かにリマは自分が害獣を作っているのではなく、帝国が主導していると教えてくれた。そしてその主導者は自分の義弟だとも。

「ということはあなたが彼の義弟?」

 ラビルは笑う。だがその笑い声はいつものニヤけたものではなく、乾いた悲しそうな笑い声だった。

「あんな腰抜け、兄でもなんでもないですよ。まあでも、彼の言っている人は確かに私です。私と彼がいなければ害獣はここまで進化しなかったでしょう」

 私は一歩引いた。

「一体なぜそんなことを……?」

 ラビルは私から目をそらすと後ろ側を向いて喋り始める。彼の視線の先には研究施設があった。

「研究のためですよ。始まりは純粋にそれだけでした。おそらく帝国の目的は違いますがね」

 ラビルはそこで一度言葉を区切ると、私に向き直る。

「話を戻しましょう……。私があなたに全てを話しているのは、追求を交わすためです」

 私は疑問を呈す。

「追求をかわす?」

「今のように中途半端に情報が広まってしまうと、あなた方の次の一手は私の特定とそこから情報を引き出すことになる。つまり標的が私になってしまうんです。それは私にとっては望ましくはない」

 私は尋ねる。

「だからあえて情報を開示して、標的じゃなくすると? しかし、今の情報以外にも知りたいことはたくさんあるのですが……」

 ラビルはうなずく。

「ええ、おそらく伝承型の仕組みであったりその倒し方でしょう。しかし、今その知恵は全て帝国が管理しています。

 そして何より、なぜ帝国がそうまでして獣を作りたがるのか、その理由自体は帝国の上層部、ひいては皇帝しか知らない部分なのですよ」

 この男の狙いがなんとなくわかった気がした。要は自分ではなく帝国を相手にしろ。と言いたいのだ。

「私はもう知っている部分や今お話しできることは共有しました。それをどう使うか、そして次に何をするのかはあなた方にお任せします。しかし、その際の標的は帝国上層部にしてください。

 私はただ研究を続けていくだけです。あなた方のような手練れの標的になるのはごめん被りたい。もし私を狙わないのであれば、今後も出来うる限りの情報を共有しましょう」

 この提案は悪くない話だとは思ったが情報を引き出すためにあえて踏み込んでみる。

「仮に、それでも私達があなたを狙う場合、その時はどうするのですか?」

「その時は私はあなた方を殺すためだけの獣を作らなくてはならなくなります。お互いそうならない道を探した方が良いでしょう?」

 そう言ってラビルは最後にまたニヤッと笑った。


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