第42話 説得
「私が考えている方法はものすごく簡単に言うと、王が殺した日の再現です。あなた方の纏う瘴気の能力を使って、王が殺された日を再現させます」
ロウはイラついたように土を蹴った。
「再現だと? 何を言っている?」
ラビルは顎をかく。
「私はあなた方の纏っている瘴気に詳しいのです。これをうまく使うと、町の人々に幻を見せる事ができる……。まるで一年前のあの町や森に戻ったような、幻をね」
ロウが尋ねる。
「それだけか? それは所詮幻だろう?」
ラビルはうなずく。
「確かに、その幻だけでは皆を騙せません……しかし、全員の一年分の記憶を消せば、今日を一年前と勘違いするでしょう。そこであの日王に何が起きたのかを見ればいい」
ロウは考えていた。
「しかし、王はもういないだろう」
ラビルはうなずく。
「みんなにあなたが王に見えるような幻を見せればいい……そうして貴方はただ誰が殺しに来るかを待っていればいいのです。」
ロウは考えていた。
「わかった。それでなぜ俺たちの協力がいる」
ラビルは一息つくと話し始める。
「実は今回の計画には何体か覚醒した動物の力が必要です。幻覚を見せる能力。彼らの記憶を一時的に一年前にする能力。その他にもいくつか幻覚の精度を高めるために協力してもらう必要があります」
ロウは首を振った。
「俺たちの中に幻覚を見せる能力を持つ物などいないぞ」
ラビルは頷いた。
「ええ、そんな都合よくは行きません。ですがその能力を変えられるとしたら?」
ラビルはロウたちが驚いたところを見て満足げな表情を浮かべた。
「実は私は覚醒した動物の能力を変更することができるのです。もちろん制限はありますが、幻覚を見せる程度であれば改変は可能です。」
ロウは不快感をあらわにした。
「信じられんな。証拠は?」
ラビルはニヤッと笑って、メアを見た。
「まさか、こいつがそうだと?」
ラビルは頷く。
「この子は最初覚醒した時は動物達と話す能力ではなくて、ただ火を操る能力を持っているだけだったのですよ」
ロウは首を振った。
「お前が嘘を言っている可能性もある」
するとラビルは鞄から金属の箱のような装置を取り出して弄り始めた。ロウは尋ねる。
「何をしている?」
ラビルは装置から出た線をメアに繋げながら喋る。
「そう言われると思っていました。おそらくメアの能力を変える所をお見せするのが一番いいかと」
そう言うと装置のボタンを押した。するとメアから瘴気が溢れ出し、しばらくすると収まった。
ラビルが「見せておやり」と促すと、メアはロウから少し離れた木に向かって口から火を放った。木の枝が少し燃えたが、勢いが弱かったのか、すぐ火は消えた。
ロウは驚いた。覚醒した獣が持てる能力は一つであることは自分も身をもって体験していたので、それを踏まえると、メアの能力が本当に変わったことを意味していた。その後、ラビルは同じ手順でメアの能力を元に戻す。ロウはその後ろ姿に喋りかけた。
「それをすることで、我等の体に影響はないのか」
ラビルはやはり、この馬は鋭いと感じていた。
―まあ確かに、一番気になる所であるか……。
ラビルは振り返ると笑顔で返す。
「一度や二度では特に問題はないはずです。むしろ問題なのは、体に見合わないほど多くの瘴気を力に変えてしまうと、体が消耗に耐えられなくなります……幻覚を見せる程度の変更であればそこまで多く瘴気を必要とはしません」
ロウは頷いた。しかし、他の動物達は嫌がった。
「人間なんぞに、体を預けられん! こいつに操られる可能性だってある!」
ラビルは頷いた。
「そう言われると思っていました。なので一応これを用意しておきました」
ラビルはそう言って服から契約書とレイスの印を取り出した。
「これに見覚えはありますよね?」
ロウは王のお付きの獣なので、王と町長が最初にする契約の際にこれを使うことを知っていた。
「これで王を突き止める以外の目的で、あなた方の体を変更しないことを約束しましょう」
そう言われると動物達は押し黙った。ラビルは畳み掛ける。
「私たちとあなた達の目的は一つ、なるべく多くの犠牲を出さずに王を殺した者を突き止めることです。少し手間ですが、こうすればあなた方自身も何があの日にあったのかわかるはずです。どうでしょう協力してもらえませんか?」
動物達はお互い押し黙った。ロウが動物達の代表として返事をする。
「わかった、協力しよう」
ラビルは頷いた。




