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超獣戯画Ⅱ  作者: 纏笛


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第四章 霧の世界 第41話 作戦

 サラがヒメルの町に来るちょうど十日ほど前、ラビルは女の子を一人携え、山に入っていた。

 貢物用の小屋の前まで来ると、女の子に喋りかける。

「メア、変われるか?」

 メアと呼ばれた少女はうなずくと、ゆっくりと白い瘴気をあたりに溢れ出させ、次の瞬間、一匹の白い鳥に変わった。

「呼びかけてみてくれ。運が良ければ現れてくれるかもしれない」

 白い鳥になったメアは頷くと、翼を広げて、衝撃派を周りに拡散した。

「さて、来てくれるかな……」

 すると、森の奥から白い馬が現れた。馬の頭には一本まっすぐな尖った角があり、矢のような鋭い視線をラビル達に投げかけていた。

「メア、ここら一帯に『言語の世界』を頼む」

 メアはうなずくと翼で当たりを仰いで衝撃派を拡散させる。馬は一瞬身構えたが、特に何も起きない事が分かると、警戒を解いた。ラビルは馬に喋りかけ始める。

「すいません。無礼をゆるしてください。彼女の力であなたと喋れるようにしたかったのです」

 馬はラビルの言葉がわかるようで驚いたような表情をした。

「なぜ言葉が話せる。まさか王を殺したのか?」

 ラビルは首を振る。

「いえいえ、そんな事はあり得ません。これは彼女の能力なのです。あなたみたいな動物と会話を交わせるようになる能力をこのメアは持っているのです。」

 ラビルは優しい視線を彼女に投げかける。

「王との能力の違いは王は心に直接話していたはずです。しかし今あなたは私の声を聞いて言葉を発しているでしょう? これが違いなのです。」

 馬は一瞬考えてからうなずいた。

「わかった。しかしもしお前達が王を殺していたとわかれば……」

 ラビルはうなずいた。

「私が来たのも、まさにその件でのお話です。

 結論から言います。あなた方は町を襲うつもりですね? 王殺しの犯人探しのために……。できればそれをやめていただきたい」

 馬はまた鋭い視線をラビルに投げかける。

「何を根拠に私達が町を襲うなどと?」

「私達の仲間が森の様子を教えてくれていましてね。ここ二、三日不自然に動物達が群れて行動していると教えてくれました……。そんなことは私がここにきてから今まで初めてだったもので。おそらく、何か組織的な動きが今後あると思ったんです。それも、わりとすぐにね」

 馬はゆっくりと、歩きながら答えた。

「なるほど察しがいい。確かに私達は近々町を襲うつもりだ……。しかしもうそれは私では止められん。貴様なら知っているかもしれないが、王の能力がない今、森の民はお互いに意思疎通が図れない……。ただ……」

 ラビルはそのあとを告げた。

「あなたのように覚醒した、瘴気を纏う者同士ならば意思の疎通が図れた……ですか?」

 馬は驚いた表情をする。

「覚醒……というのかこれは」

 ラビルはうなずく。

「ええ、覚醒した者同士であれば意思の疎通が可能なことはもう確認済みです。でもあなたが見たところ現在もっとも森の中で強いのでしょう? ではあなたが嫌だと言えば止められるのでは?」

 馬は一言鋭く返した。

「ロウだ」

 ラビルは聞き返す。

「はい?」

「ロウと呼べ、私の名だ。確かに私は他の覚醒した獣に比べて強いのかもしれない。しかし王が死んだ時覚醒した獣はおよそ十もいる。しかも彼らの大半は人間を殺すという意見で一致している。これを私の一存のみではね返すことはできない」

 ラビルは顎をかきながら返す。

「では、王を殺す犯人がわかるかもしれないと言ったらどうでしょう」

 ロウが反応する。

「何? どういうことだ。まさか犯人を知っているのか?」

 ラビルは首を振る。

「いえ。残念な事に私達も犯人は知りません……。ですが犯人を特定する手段があります」

 ロウは食いつく。

「どんな手段だ」

 ラビルは微笑む。

「それをお話しするには……できれば五体ほど覚醒している獣の協力が必要なのです。なのでその方達を集めてもらっても良いですか?」

 ラビルは当たりを見渡す。

「おそらく近くにいらっしゃるのでしょう?」

 ロウはため息をつくと角を一振りした。すると四匹の白と黒それぞれの瘴気を纏った獣達が現れる。彼らも、メアが発した衝撃波の範囲に入ると、言葉が通じるようになった。

 まず、白いキツネが口を開く。

「おい、ロウ。大丈夫なのかこいつ」

 黒い瘴気を纏うクマも同調する。

「町の人間ではない……帝国と呼ばれるよその国の人間だ。信用ならない」

 黒い瘴気を纏うカモシカはみんなを宥めていた。

「まあ、話だけでも聞こう。それからでも遅くない。こいつを殺すのは」

 最後に白い猿が口を開いた。

「俺はロウの意見に任せるぜ。どっちでもいいや」

 ロウはフッと息を吐く。

「こいつらも俺も町の人間達を積極的に襲いたいわけではない。歴代王達が守ってきた、歴史がある……。しかし王を殺した相手がわからぬうちは、町の人間を襲って確かめるしか手段はない」

 ラビルはうなずく。

「でしょうね……だからこそ争いを好まないあなた方にとって、一番大事な情報は誰が王を殺したか……なんですよね? それさえわかればそれ以外の人間を襲わずにすむ……」

 ロウはうなずく。

「そうだ。だから早くその方法とやらを話せ。もし嘘をついているようなら容赦はしない」

 ラビルは頷いた。


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