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超獣戯画Ⅱ  作者: 纏笛


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第40話 手記 五日目-六回目⑥

 リクの存在も同様に厄介になる可能性があったので、一旦彼をおいて、町長が特に反応を示していたのは、森の側にある二階建ての家に向かう。

 家の前に着くと、ちょうど帝国の隊服を着た一人の男が中に入るところだった。

 私は警戒しながらも瞬時に刺青を相手に飛ばす。結果は、大方予想していた通りだが、彼からはクロムさんと同じ薄い違和感がした。

『二重の違和感』とも違う『薄い違和感』……。これはおそらく彼が一年後今この瞬間には町にいないことを示している……。

 そのままを様子を見ていると、彼は家に入って扉を閉めた。そこでその男に移してあった刺青をその男の服を伝わせて、部屋の床に移した。そしてそのまま腕の刺青の十字架を人差し指でなぞって調節を行う。

 『動点』を応用して、施設全体の床に触れているものを自分が触れているように感じさせる事ができる状態にした。すると、床には合わせて十二の靴がふれている感覚があった。これで中に六人の人間がいる事がわかる。

 私はもう一つ刺青を自分の体から地面に移すと、それを彼らがいる施設に向かわせた。

 そして、広円で位置関係を探りながら一人ずつ刺青を移して、彼らの触り心地を確認する。

 触り心地からして、彼らは全員男性で、全員が薄い方の違和感だった。

 この結果はある程度予想通りだったので私は満足して、一旦刺青を回収しようとした。しかし、その時ある異変に気がつく。

 六人の靴が一切動かなくなったのだ。今の今まで部屋の中を忙しなく動いていたはずがその動きを全く感じられなくなった。

 何かまずい予感がして急いで刺青を回収してその場を離れようとすると、私の背後で声がした。

「いやいや、驚きましたよ全く」

 私が驚いて振り返ると、そこには男が1人立っていた。男は他の者と同様に、帝国軍の隊服を身に纏っていたが、どこか雰囲気が違った。

「お会いするのは初めて……ですよね?」

 私は身構える。

「あなたは……誰ですか?」

 男はお辞儀する。

「お初にお目にかかります。ラビルと申します。一応帝国の研究者なんですよね。どうかお見知り置きを……」

 男は腰の低い感じを出していたが、言葉の端々からは強い自信が感じられる。私は一旦白を切ることにした。

「ラビルさん。何か御用でしょうか?」

 ラビルと名乗るその男は苦笑した。

「それは……流石に無理があるというか、こちらの台詞ですね。銀の爪ともあろう人が、獣の調査もせず、施設の前で、私たちを嗅ぎ回っている……。この状況で、しらばっくれるのは流石に無理ですよ」

「話が見えないのですが……」

 ラビルは笑う。

「まあそう簡単には認めてはくれませんよね。いいでしょう。そうだ! よかったら僕らの作業部屋に来ませんか? 本当はそこが見たかったのでしょう?」

 思いもかけない提案に私は警戒の表情を露わにしてしまった。

「それは興味深いですが……遠慮しておきます

。いきなりそちらの仕事部屋にお邪魔しても迷惑でしょうし。」

 正直どんな罠が仕掛けられているか、分かったものではなかった。ラビルはニヤッと微笑んだ。

「まあ確かに、調査してる相手がいきなりうちに来ていいよ。と来たら警戒しますよね。

 ではこれならどうですか? うちの仕事部屋に来ていいだければ、この町で起きている『循環』の仕組みについてお話ししましょう」

私はこの提案にかなり驚いた。

「『循環』、というのは『時の遡り』のことですか? この町に私が来てから五日目の今日がなんども繰り返されている。その現象のことをさしている?」

ラビルはうなずく。

「その謎を探りに、私達の施設を調べに来たのでしょう?」

 私は図星をつかれて焦っていた。たしかにラビルの言う通り、帝国が発端だと思っていたが、なぜそれがわかったのか……。ラビルもそこを察して話を続ける。

「なぜそれを……という顔をしていますね。正直私達もなぜ貴女が私達が今回の件に関与しているとわかったのか正直な所はわかってはいないんですよね……そこら辺教えてもらってといいですか? その情報となぜ私達が貴女の行動の内容を知っているかの情報を交換しましょう」

 私はこの提案に乗るか少し考えたが、秘密を知るには乗るしかなかった。

「わかりました。ここで嘘を言っても仕方ないようですね。

 確かに私はあなた方が、今回の現象の大部分に関わっているのだろうと考えています……。

 それに至った一番の根拠はやはり触り心地ですね」

 ラビルは首をかしげる。

「触り心地……?」

 私はうなずく。

「ええ、正直この世界がどういう作りなのかはわかっていないのですが、おそらく現実と違う場所なのでしょう。その証拠にここにいる人の何人かの触った感覚は生身のものと違っていました」

 ラビルは聞きいっていた。

「実際は三つ種類があり、一つが普通の生身と同じもの、二つ目が薄く、まるで生身の情報とは思えないもの、そして三つ目が、分厚く、まるで二重に重なったような触り心地になる人達です」

 ラビルが質問する。

「なるほど……ちなみに具体的な人を教えてもらってもいいですか?」

「一つ目の生身の情報の人が大多数ですね。二つ目の薄い人は少なく、クロムさんやあなた方帝国の人間、そして三つ目はバンメウさんや反獣王派の人間達ですね」

ラビルは納得したように頷く。

「私の予想と大方一致しています……。しかしまあ触っただけでそこまでの情報がわかるとは……銀の爪とはそういう能力に長けているのですか?」

 私が答えないとラビル少し残念そうな顔をしたが、そのまま続けた。

「良いでしょう。ただ、それだけでは私達が『時間跳躍』を主導しているとまでは判らないはずです」

 私はうなずく。

「そうですね。しかし、三つ目の種類の触り心地になっている人を洗い出すと、自然とあなた方が今回の件を手引きしていると推測するのはそこまで難しい話ではありません」

 ラビルはわからないと言った表情を浮かべる。

「どういう事です?」

「二重の触り心地になっていた人達は皆、行動がそうなる前と後で変わっていたんです。バンメウさんは特に顕著でした。今まで、酒場では特に何も発言していなかったのに、あの触り心地になった途端、クラムさんに王を襲うよう促していた……。私はこのことから二重の触り心地になった人はみんな、『本来の』今日の動きに更新されるのではないかと予想しました」

 ラビルはうなずく。

「なるほど……なんとなく見えてきました。続けてください。」

 私は続けた。

「そもそもこの現象は王を殺した犯人を捕まえるためのもの……。これはあってますよね?」

 ラビルはうなずく。

「であれば、犯人を特定したいる獣側がこの更新を行いたい相手は全て、王を殺した犯人である可能性の高い人、ということになります」

「そうなりますね、今日の本来の行動へと更新することで、その人が王殺しの犯人かどうかわかるということですからね」

 私は続ける。

「そこでその対処者を調べると、面白い事が分かりました。対象者は聖獣隊と反獣王派、そして、薬の取り扱いを行う人間たちが多かった。この人達の共通点は、全て山に出入りする事が多い人達です」

 ラビルは興味深そうに頷く。

「しかし、ここでひとつだけ疑問が生まれました。それはなぜあなた方帝国の人間はその対象になっていないかという事です」

 ラビルはそこまで聞くと、ハッとした表情になってため息をつきそのあとを制した。

「よく分かりました。私達帝国も山に出入りしている確率は多いはずなのに対象には選ばれていない……。その理由は私達帝国側自身が対象者を選んでいるからだ……という結論に結びつくわけですね」

 私はうなずいた。

「町長の可能性も疑いましたが、彼からは違和感を感じなかった……。しかし、あなた達はそれとも違う。全員が薄い違和感でした」

ラビルはうなずく。

「これは私の予想でしかないのですが、薄いさわり心地の人は、記憶だけの人間なのではないですか? つまり、この町に実際はいないけど、その人の記憶のみが、この世界に反映されている状態……」

ラビルは関心したようにうなずく。

「いやはや、銀の爪の皆さんは恐ろしいと思っていましたが、ここまでとは……大変恐れ入りました。お返しとして、一通り、なぜこうなっているのか、その背景も含めてお話ししましょう」


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