表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超獣戯画Ⅱ  作者: 纏笛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/77

第26話 手記 五日目-四回目⑤

 クラムはすれ違いざまでもわかるくらい不快感をあらわにしていた。おそらくまたレルベットに言い負かされたのだろうと思い、一旦酒場に入る。そのままマリウスを見つけると、話しかけた。

「サラさん! この度はに本当にありがとうございました」

 私は実際は殺していないため、少しばつの悪い気分になるが、気にせず質問を始める。

「マリウスさん。王って喋れるんですか?」

 この一言にマリウスの顔がサッと強張った。

「王に会ったのですか?」

 見るからに警戒されている事が分かったので一旦嘘を言うことにした。

「いや、噂で聞いたのです。この町にはそういった伝承があると。話す能力がある獣というのは珍しいので少し気になりました」

 マリウスはホッと一息つく。

「そうなんですか。びっくりしました。なるべく王を刺激しないように他の町の人は余り王には会わせないようにしてたんです」

 そこでなぜマリウスが一瞬警戒したのかが分かった。私は質問を続けた。

「では、王はやはりしゃべれるのですか?」

 マリウスはうなずく。

「正確には心に直接語りかける事ができるのです」

 私は驚いてみせる。

「心にですか?」

 マリウスはうなずいた。

「そうです。王は人間にも獣にも直接心に語りかける事で意志を通じ合わせる事ができます。それに王と喋っている者の声を相手に聞かせることも可能なのです」

 私は体験して知ってはいたが、改めて言われると、驚きを隠せなかった。

「そんな力を持っているという事は王は害獣なのですか?」

 マリウスは首を振った。

「いいえ。私は今の王が即位してからずっと一緒にすごしてきましたが、彼が瘴気を纏った事は一度もありません。それに……」

「それに?」

「それに王は白色でも黒色でもなく、立派な銀色です。彼は生まれた頃からずっと王の力を受け継いでも、彼の色は変わりませんでした」

 私はマリウスの使った表現が少し気になった。

「力を受け継ぐ?」

 マリウスはうなずく。

「ご承知の通り、王は初めから王として生まれるわけではありません。戦いに勝ち抜き、認められたものだけが王となれるんです。

 獣は王になると、前の王から力を受け継ぐんだそうです。そうやって心を交わす能力は歴代の王から王へと引き継がれてきだと言われています」

 マリウスの口調が断定的でないのは、実際にそうなった所は見た事がないからだと思われた。

「では王は害獣として瘴気を浴びて能力を得たわけではなく……」

「ただ、王として、前の王から能力を受け継いだのです」

「そんな事があるのですね。にわかには信じがたい話ですが……」

 ここでレルベットさんが話に入ってくる。

「その話は本当ですよ。私は何匹かの王の代替わりを見てきましたが、王になった獣は例外なく最初はそんな能力は持っていませんでした。しかし、決闘に負けた時、新しい王に能力が受け継がれたのです。新しく王となった獣は人と話す事ができるようになりました」

 まさに受け継がれている力という事なのだろうと思われた。私は詳細な内容を聞き出そうとした。

「その力の引き継ぎはどのように行われるのですか?」

 マリウス達は私があまりに詳しく聞いてくるので少し訝しんでいたが、今後似たような獣にあった時の参考にしたいということで押し切った。

「私も詳しくは分からないです……。ですが、何か特別な儀式と言うよりは自動的に移っているのではと思います」

 彼らも詳しい事は知らないらしく、聞いてもそれ以上の情報は得る事は出来なかった。

 帰り際、リクになぜあそこまで能力の詳細にこだわったのか尋ねられる。

「どうして、あんなに引き継ぎの方法にこだわっていたの?」

 私は答えるか少し迷った。

「そうですね。私たちの能力に似ていたので。少し気なりました」

 リクは驚いた表情になる。

「銀の爪の能力にってこと?」

「そう。王の能力の特徴は害獣のものより、完全に私たちの能力に近い気がしたのです」

 リクは首を傾げる。

「銀の爪の能力って人間以外が持つ事もあるの?」

 私も正直そこが気になっていた。

「私は他に例を知らないけど、もしかしたらそうなのかもしれません。一旦長に確認してみます」

 私はそういうと一度宿に戻った。

 宿に着いて手記を書きながら情報を整理する。

 まずは見えない壁、壁は町の周囲及び森の王のいる小屋の周辺から山の入り口にかけてとファンネルのいる西側の地区の周りをぐるっと覆うように立てられている。

 そして、王と周りの獣達。時の遡りも、そして壁についても知っている者が私以外で初めて現れた。

 それに、王には能力があった。害獣には見えなかったが、確かに語りかけられた。

 一応長には報告は入れる予定だが、そもそも、見えない壁もあるし、伝達は現状では厳しそうだった。

 現状の最大の手がかりはやはりあの動物達と王だろう。今回のこの事象は彼らが仕組んだ可能性もある。だがそうなると目的は?

 ファンネルの死の回避ではない事は確認した……。範囲はこの町及び、森の中の王とファンネルの縄張り……。

 あの獣達が他の人間と戦っていた噂は聞かなかった。とすると、彼らの目的は戦い等ではないのかもしれない。

 同じ一日を再度やり直させる目的……。

 そこで私はふと一つの可能性に思い至る。

 これが現実なのではなく、仮想的な現実なのだとするとやはりこの一日で起きる何かを情報として知りたいのかもしれない。

 しかし仮にその仮説が正しいとして何を知りたいのだろう。彼らが知りたい情報……。獣狩りがどうファンネルを殺すかではない……。

 そう考えると一つ重要な観点を私は見逃していることに気づいた。それは今は過去なのか未来なのかということである。

 仮に現実なのであれば、彼らは未来に起こる出来事を確認したい。ということになるがここは現実ではないと考えると、過去と言う可能性が出て来る。

 すなわち、過去にもうすでに何かが起きていて、その一日を時を遡らせて確認したいのではないかと言うことだ。

 だがそうすると、この街に初めて来たはずの私の記憶にかなりの矛盾が生じてしまう……。

 明日はこの部分を改めて確認してもいいような気がした。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ