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超獣戯画Ⅱ  作者: 纏笛


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第24話 手記 五日目-四回目③

 狼は毛が銀色になびき、他の動物達と比べると少し大きいような気がした。狼が歩いてくると周りの獣達はゆっくりと道を開ける。狼は立ち止まるとゆっくりと私を見つめた。

 するとどこからか声が聞こえた。

――ここで何をしている。

 私はどこから声が聞こえてくるのか確認しようとしたが、特定の何処かというよりはまるで私自身の中から声がしたようだった

――声の主は私だ。

 私は耳を疑った。瘴気もない、いわゆる害獣ではない獣が、人間に直接話しかけるということが信じられなかった。恐る恐る尋ねてみる。

「あなたは?」

――私はこの森の王だ。質問に答えろ。

 王が人間と話ができるなんてマリウスからは聞かされていなかった。

 周りの獣達もいきりたっているようだった。

「王に捧げる供物を収める小屋を見にきました。私はこの森に興味があるのです」

――ひとの言葉をつかうな。心で話せ。

 ここで私はようやく、王が実際に話していたわけではなく心に直接語りかけていたことを知った。試しに心の中で呟いてみる。

――心の声であれば人の言葉でもいいのですか?

 王はうなずいた。私は同じ話を今度は心の中でする。

――私は別の街から来たものです。王に捧げるものに興味があったのでここに来ました。

 王がまた語りかけてくる。

――その小屋には選ばれた者しか入れない掟だ。

――すみません中を覗いただけで入る気はありませんでした。

 私がそう答えると、獣達が吠え始めた。すると今度は王の言葉とは違う言葉が聞こえてくる。

――嘘だ! 食べ物を取ろうとしていた! 人間は信用ならない!

 どうやら王に話しかけている獣の声が王を通じて聞こえてきているようだった。

――うるさいぞ。

 王はそう言って周りを一瞥する。周りの獣達は途端に静かになった。王は私に向き直る。

――どのみちお前はここにいるべきではない。自分のいるべき場所に戻ることだ。

 私は王の言っている事の意味が一種わからなかっがなんとなくその視線が西側に向いていた事からファンネルの事を言っているのではないかと直感した。

――わかりました。

 私はついでに壁の事を聞いてみた。

――あなたは森の周りに見えない壁があることを知っていますか?

 王はピクっと反応したが、

――なんのことだ。

 と言い放った。

なんとなく王は知っているのではないかとこの反応から察したが、認めたくはないらしい。

 私は質問を続けた。

――知らないのでしたら構いません。もう一つだけ、この森で起きている時の遡りについてです。

――知らないな。なんの話だ?

 王はまるで知らないように平静を装っていたが周りの獣達が一瞬動揺したようにお互いを見たのが目に入る。と同時に今まで聞こえてきた王の声や周りの動物の心の声が聞こえなくなった。

 そして一呼吸置いてから、

――話はここまでだ。

 と王は言い放ち、獣たちを連れていなくなってしまった。立ち去ってから私はその場を離れられなかった。王は知らぬふりをしたが、周りの獣は心当たりがある……。王はおそらくそれを気取られたくないがために一度心の声を私に聞かせないようにした……。

 おそらく、動物達は知っているのだ。この『時の遡り』を。

 だが、彼らは害獣ではなかった。害獣ではない獣がこれほどの力を?

 それにあの王……。害獣には見えなかったが完全に心の声を私に語りかけていた。あれほどの力は瘴気による物以外ではありえない気がする。

 結局私はその後王の忠告を無視して壁の範囲の探索を続けた。壁にそって山がある北に向かって歩き続けたが、壁は山に入る直前の所までしかなくそこから先の山には入れなかった。

 すなわち、東側は森から山の入り口までが範囲になる。

 今度は西側の検証になるが、西側の街側はファンネルの縄張りだったので慎重に探る必要があった。だが思い出すと私がファンネルと戦っていた時はそんな壁を感じたことはなかった。とすると西側の壁の内側はファンネルの縄張りよりかなり広いことになる。

 その推測のもと、壁を伝って歩き続けていると実際西側の壁はファンネルがいた縄張りよりもかなり広い空間を覆うように建てられていた。

 そこまでわかると街に戻りながら、今日の事を整理する。

 王には相手の心に語りかける能力があり、獣たちは壁の事と時の遡りを知っている。

 森の壁はファンネルのいた縄張りと王のいた小屋の周りどちらも覆っている。

 さっきの反応を考えみても、今回の繰り返しにあの動物達の関わっている事はほぼ確実……であればもう少し王達の事を細かく知る必要がありそうだった。

 街に戻ると、三人の獣狩りがまたファンネルを倒したようで、街の人から称賛の言葉を浴びた。

 今日はリクを置いて行ってしまったので、宿で会うと少し不機嫌だった。一緒に酒場へ向かう傍ら、今日起きた事の一部始終を話すと興味深そうに聞いていた。

 私は彼に一つ確認してみる。

「そんな言い伝えはあるの? 王が人と話せるとか」

 リクは記録の〈検索〉を始めるために目を閉じる。

「たしかに王はしゃべれるみたいだ。王の力を受け継いだ獣は人間と喋れるようになる。とある。でも……」

「でも?」

「この記述は後から付け足されてるんだ。王の伝承自体はもっと古くからあるけど、喋る話ができたのはこの数十年のことみたい」

 王の力が、仮に瘴気による物だったとしても力を引き継ぐ害獣なんて聞いた事がない。力の継承……それについてはむしろ、私達の銀の爪の能力に心当たりがあった。


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