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超獣戯画Ⅱ  作者: 纏笛


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第18話 六日目②ー役場

 役場につき、部屋に通されると、町長は何やら資料に目を通しながら、応対してくれる。

「ファンネルが倒されたと聞きました。しかし今日私はあの獣に出会いましたが倒してはいません。話を聞くと噂を流したのは町長だそうですね」

 町長は私の言葉にゆっくりと頷いた。

「ええ、その通りです。私がその噂を流しました」

 私は町長が素直に認めるので拍子抜けしたが、いくつか気になることがあったので尋ねてみた。

「私が気になっている点は二つです。一つ目はファンネルは本当に死んでいるのか。そしてもう一つが、もし死んでいるのであれば誰が殺したのか」

 町長は持っている資料を置くと答え始める。

「一点目ですが、まず間違いありません。私も死体を確認しました。そして二点目ですが……。私は貴女にひとつ謝らなくてはならない。実は貴女とは別に獣狩りに今回の狩りを依頼していたのです」

 私は酒場に何人か獣狩りがいたのを知っていたのでこの事に関してもそこまでの驚きはなかった。

「それはいつ頃からでしょうか」

 町長は神妙な面持ちで話し始める。

「貴女に依頼するおよそ一か月ほど前からです。依頼といっても、ただ殺してくれるように口頭で頼んだだけにすぎないのですがね」

 町長の言い方に少し含みがあったことが気になった。

「外部の獣狩りに声をかけた。ということではないのですか?」

 町長は首を振る。

「いえ、実は私たちの街には、代々獣を狩る専門の集団がいるのです」

 私は聞き返した。

「専門の集団?」

 町長は街の歴史も絡めて、その集団について話してくれる。

「私たちの街が特殊なのは知っての通りでしょう。獣達と人間達の生活、そのどちらも共存させなくてはならない。そのために聖獣隊が王との取り継ぎをして、獣に人間を無闇に襲わせないようにしている。

 しかし、貴女も聞いたかもしれませんが、獣の中には単純に人間に憎しみや警戒を抱いているものもいます。それら全てに対して王の支配が行き届くわけではないのです。当然、王を無視して人間を襲う獣達がいる」

 私はラフサルさんに聞いていたことだったのでうなずいた。

「それはお聞きしました。しかし、そのような場合でも、その掟を破った獣は王達に罰せられるのでは?」

 町長は少し顔を歪める。

「それはおそらく酒場で聞いた話でしょう。ですが事実は少しそれとは異なっています。実際のところ、掟を守った獣に対して王がするのは、王の庇護下から外すということだけです」

 庇護下と言う単語が気になった。

「庇護下から外す?」

「ええ、彼らは獣同士で殺し合いをしません。そのかわり、庇護下から外れた獣は、山に縄張りを作ることも許されず、また人間に襲われたとしても、周りの獣は一切助けたり、やり返したりしないという状況におかれます」

 ここでようやく話が見えてきた。

「ということはそのあぶれた獣を殺すのが……」

「私達の街が抱える獣狩り、ということになります」

 私はさらに質問を続けた。

「では私に依頼する必要はなかったのでは? 私たちへの依頼料は決して安くはないはずです」

 町長は自覚があるのかとばかりに苦笑した。

「ええ、そうですね。しかしうちの獣狩りたちが狩ってきてのはあくまで普通の獣が主です。

 今回のような害獣を狩るノウハウが多くあるわけではありません。彼らも日々鍛錬を積んでいて腕は立ちますが、それでも貴女方のような専門家に比べれば、知識も経験も劣ります」

 私がさっきの質問をしたのは依頼の額面の部分もあるがそれ以上に酒場で見た獣狩り達の練度の高さにあった。正直彼らの力であれば、時間さえあれば問題なくファンネルを倒せそうに見えた。

 町長はそこにも言及した。

「実際の所、彼らも時間をかければファンネルを狩れるであろうことは私もわかってはいました。しかし、私は万全を期す必要があったのです。より早く確実に殺せる可能性があるのであればそちらも使っておく必要がある。

 貴女に事前に告知しなかったのは、彼らを使う事を考えてほしくなかったからです。できるのであれば早い段階で貴女が狩ることが望ましかった」

 実際彼の目論み通り私は本来彼らより早く、獣を狩れていたので私は同意した。

 現状は彼らの方が先に殺し、私は何もしていなかったことになるので私は謝罪した。

「大変申し訳ありません。少し確かめたいことがあり時間を要してしまいました」

 これに町長は首を振る。

「いえ、貴女は十分に役立ちました。獣狩り達に聞いたのですが、貴女がファンネルと接触して以降、ファンネルの集中は貴女に分散されたようです。それが今回の狩りの成功につながったと獣狩り達は言っていました」

 私は〈動点〉による探知をしていたが、引っかからなかったところを見るとおそらくその三人は縄張りのさらに外で様子を見ていたということになる。だが、それもファンネルの探知をかいくぐるためには慣れていたと考えれば納得できる。

「そうですか、何にせよファンネルが殺せてよかったです」

 町長は頷いた。

「貴女に支払したお金もそのままで構いません。最もこれは、契約なので、返せと私が主張しても呪いに遭ってしまうのでしょうが」

 町長は苦笑しながらそう言った。

 私は少し罰の悪い気分だった。自分が全く関わらない状態で獣が狩られ、その報奨金をもらうのは銀の爪の狩りとしてはかなり珍しい方に当たる。

 だが私がここにきた本当の目的は別にあった。予想が正しければおそらくこの戦いはこれでは終わらない。今はその準備をする必要がある。

「ちなみにその潜入していた獣狩りの方は何人ですか?」

 町長はなぜそんなことを聞くのかと訝しんだ表情を浮かべたが、今後の参考にしたいと伝えると、教えてくれた。

「私が依頼したのは三人です。彼らは基本的に集団で狩りを行うはずなので、今日も一緒に居たはずです」

 私はうなずくと、お礼を言って役場を去った。その帰り道で少し情報を整理する。

 獣狩りは三人……ということは最初に酒場で見たあの三人が獣狩りでおよそ、間違いはない。そして今回は彼らがファンネルを狩った。

 私自身が手を下さない場合でも五日目にファンネルが死ぬという現状に変わりはない。

 宿に着き、自分の部屋に入ると、明日の準備をしておくことにした。

 まずダガーを取り出すと、宿の自室の机に一本横線を彫った。深く掘り、線を目立つようにしておく。明日確認すべきはまず、この時間の遡りが、起きるのかどうかだった。それにはこの傷がわかりやすい。

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