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超獣戯画Ⅱ  作者: 纏笛


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第13話 手記5日目① 牡鹿との決着

5日目

今日の朝も一段と深い霧がたちこめている。

私は今日あの獣を狩る事に決めた。

仮に失敗しても、一応まだ明日まで期限があるという精神状態で狩りを行える事が、現状でまだあの獣についてわかっていない部分がいくつかあるというリスクを上回ると判断したからだ。

それに実際の狩りを行って出る失敗の発見は早い方が良い。

普段であればもう少し分析に時間をかけたいが、流石に残り2日ではそんな悠長なことは考えてはいられない状態だった。

今日はかなり早い時間に宿を出て、リクと合流すると今日狩りをすることと、手伝ってほしい事を伝える。そして二人で山の麓の森へと向かった。

縄張りへと着くと、入れ墨をいつもと同様に縄張りに沿うように展開して『広円』を使い、他の獣がまだいないことを確認する。

ファンネルがいつも縄張りに現れる時間までにはかなり余裕があったので、リクを計画通りに縄張りのかなり外側に行かせて、私は反対方向にあるファンネルの常に現れる場所に行き、周りの木にいくつかワイヤーの罠を張る。

罠を張り終えると、その場所から離れて少し大きめな木を見つけ、ファンネルが来る方向から見えない場所に陣取った。

そして、昨日と同じ台を雪の上に設置する。

この台で衝撃波の探知をかいくぐれるとはいえ、近づきすぎてしまえば見られてしまう可能性も大きかったので、私の銃の最大射程が届く精一杯の範囲に私は陣取っていた。

台の設置が終わると今度は荷物を降ろして、その中から銃を取り出して準備を始める。

昨日の両筒の銃の筒の片方を外して、もう一つの筒につなげる。

こうする事でかなり長い射程で弾を当てることができるようになるのだ。

レンドさんの重砲ほどの射程はでないが、その分軽量で自分にとっては充分最適な武器だと私は思っていた。

しばらく時間が経つといつものようにファンネルが現れる。

私は後ろ向きで台に乗って木にもたれ掛かると銃だけ持ってファンネルが罠を仕掛けた木の近くに来るのを待った。

後ろ向きなのでファンネルはこちらからは見えないが、木の位置とファンネルの位置は入れ墨で常に把握することができた。

ファンネルはまた当たりを見渡すと、衝撃波を放つ。

衝撃波が縄張り全体に行き切った後、ファンネルは私と全く違う方向を見始めた。

私が今回、リクに手伝ってもらった事…それは囮になってもらう事だった。

そのために彼をファンネルが現れる場所からかなり離れた位置に配置しておいた。

初めはこの作戦にリクを使うつもりはなかったが、計画を話すとなぜか彼は進んでこの役をやりたがった。

実際の獣との戦いが見れなくなることについても、なぜかあまり気にしていないようだった。

リクのいる方角を入れ墨を使って探ると何匹かの獣達がそちらに現れている。

作戦通りの展開だった。衝撃波が行きわたったのを待ち終えると、ファンネルはリクの方向に一、二歩歩き出す。

その瞬間、私が張っていたワイヤーの一つにファンネルの前足がかかる。

私はそれを感じると入れ墨を瞬時に動かして、木に張っておいた罠のワイヤーの先に入れ墨を移動させる。

私のワイヤーは特注で入れ墨が入った瞬間にワイヤーが切れる仕様になっていた。

他の人間や動物が触れても切れないのが、この罠の特徴である。

ワイヤーは木と木の間にピンと張っていたが、片方が切れてファンネルの右の前足に巻きつく。

ファンネルは驚いてそれをほどこうとするがワイヤーは巻き付いてなかなか離れない。

このワイヤーは罠用の特注性で張ったところから切れると自動的に巻き付く仕掛けになっていた。一度巻き付いたワイヤーは私以外には簡単に解けない。

私は台から降りて木の陰から飛び出すと、逃げようともがくファンネルの後ろ足の後ろにある木を狙って一発撃った。

この弾は特殊でワイヤーがついていて、木に着弾すると木と私の銃はワイヤーでつながった。

その状態で私は、銃に着いたワイヤーをファンネルの後ろ足に巻き付くように少し引き上げながら、別の木を狙ってもう一発撃つ。

すると銃からワイヤーが離れ、打った弾にくっついたまま飛んでいく。

実はこのワイヤーは銃そのものに着いているわけではなく、二つの弾にそれぞれ別に括り付けてあるのだ。

そして私は打った弾が、木に着弾する直前で、弾に元々付帯させていた入れ墨をワイヤー側へずらす。するとワイヤーが切れ、前足と同様に右の後ろ足に切れたワイヤーが絡まり、彼女は完全に身動きが取れなくなる。

そのタイミングで私は一気にファンネルの方へと走り出した。

そしてある程度、近づくと立ち止まって銃を構えて1発ファンネルに打ち込む。

少し間があって、弾がファンネルの腹部に突き刺さる。

私の弾は普通の物とは違い、内側に銀が詰められている。

表面が薄い鉄のため、着弾後に瘴気によって表面が溶かされて銀が獣の体に蓄積する仕組みになっていた。

ファンネルは打たれてから数秒して苦しみ始め、打たれた場所から白い瘴気が溢れ出す。

私はそこからもう3発ファンネルの腹部にうちこむと、さらにファンネルとの距離を詰める。

ファンネルは、ワイヤーからは逃げ出せなさそうだったが、もがき続けていた。

私は走りながら長筒を変形させて両筒のショットガンへと銃の形状を変えて、両筒用の弾を装填する。

そして走ってファンネルに近づくと、近距離からもう一発ファンネルの腹部に打ち込んだ。

ファンネルは苦しんではいるがまだ、息がある状態だった。

私はおそらく弾がファンネルの心臓部分に達していないと判断して、入れ墨を利用して心臓部分の場所を探ることにした。

近くの地面に手を付けると、右腕に入っている刺青のおよそ半分程度を地面へと移動させる。

星や十字架、丸の入れ墨が地面に移動したのを見ると、それらの入れ墨を一気に細かくしていく。

入れ墨達は細かい赤い点となっていく、それをそのままファンネルの体に移動させて、一気に彼女の体を探る。

触覚と味覚には他の五感にはない点がある。それは対象と直接触れ合うことで、感じる感覚だという点だった。

なので当然、銀の爪としての技も他の五感にはない技がある。

これがその一つ、『集散』だった。

技の内容自体は単純で、小さな入れ墨を散り散りにさせ、対象物に余すことなく入れ墨をめぐらすことにより、入れ墨が接触した部分の情報を触覚を通じて入手できるというものだった。

細かい赤い点になった入れ墨がファンネルの体をなぞっていく。

足から頭まで入れ墨が通過すると、今度は逆に頭から足へ向けて入れ墨は戻っていく。

私は入れ墨から得られる感覚に集中していたが、心臓部の拍動が本来であれば強く感じられるはずの腹部からはそこまで感じられず、逆に頭部に近い部分で強くなっていることが分かった。

私は銃をファンネルの頭に狙いを変えて打ち込んでみる。

すると、今までとはファンネルの苦しみ方が違った。いままではもがいていたが、今回は動けなくなるようなダメージを受けたように見えた。

そして私の方を今までの敵意に満ちた表情とは違い、おびえた表情で見るようになる。

私はもう一度、ファンネルの頭部にショットガンを撃ち込む。

すると、ファンネルの青い目からは光が失われて、動かなくなった。

息絶えたファンネルの体からしばらくすると白い瘴気が抜けきり、後にはもとになった獣の亡骸が残っていた。。

だが、近づいて亡骸を確認すると少し違和感がある。

亡骸には角がそのままあり、また体の各部位についても明確に牡鹿の特徴を表しているのだ。

ファンネルは牝鹿だったはず。

この謎が何か面倒なことになる引き金になる予感がして、いったんその亡骸の特徴を事細かに記録しておく。

一通り記録を済ませると、今度はリクを探しに縄張りの端へと向かう。

リクはさほど離れたところにはおらず、割とすぐ見つかった。

獣たちはファンネルが息絶えてからは普通の状態に戻ったそうで、もうリクを追いかけている様子はなかった。

その後、報告のために街に戻り、役場へと向かうと町長が私を出迎えてくれた。

町長は少し複雑な表情をしていたが、何度も私にお礼を告げていた。

基本的に私は狩りが終わった街に長居をすることはないが、今日は狩りが夕方までかかり、

報告を済ませて宿に戻った時はもう夜になっていたので、一旦この街に留まることにした。

夜ご飯を食べるために、この街に来てからほとんど毎日のように通っている酒場にリクを連れて足を運ぶ。


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