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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【失った未来】

作者: 沖田 楽十

「お前なんか、死ねばよかったんだ」


 呪詛じゅそくちにして、心の中はーースッキリするどころか、更にモヤる。私の事を大事にしない処か、自分に攻撃的な人達と一緒になって、傷付けてきたそいつ。こんな奴に同情して、助けようとしなければ、自分はこんなに長い期間、苦しめられる事はなかった。

 だから、呪詛を口にするぐらい、お釣りが出るというものだろう。


 もし、今の現状げんじょうを記憶した状態で、あの時の出来事を回避かいひしていたら、如何どうなっていたのだろうか?と、考える事がある。

 フィクションの世界みたいに、“過去にもどって、やり直す”事が出来たら…と。

 そのぶん、現在()に出来ているモノを失ってしまうが……それでも、変えたい未来だ。そう、強く…願っていたからだろうか?




 これはフィクションの世界ではなく、現実の話だ。だから、“過去に戻ってやり直す”といった事は出来ない。……出来るはずがない、のだ。

 でも、見覚えるのあるやり取り、スマホの画面にうつされた今日の日付ひづけに、嫌でも突き付けられる。

 自分は、過去に戻ってきたのだと。そして、あのやり取りの際の、決断の時が、迫っていた事も。



「…。」



 あの未来の出来事を知っているのは、自分だけ。つまり、此処で選択を見誤みあやまらなければ、今回の苦しみを味わう事はない。そして、それぞれのチャンスや運命というヤツの影響も、本来の軌道きどうに乗る筈だ。


 全てが元通り…元通り……自分だけを、のぞいて…。


 記憶というのは、かなり厄介なモノだ。情が湧いたりするのも、今迄の経験や記憶から。そして、心が動いたり、別のモノに関心を抱いたりするのも、出逢いの数やチャンスから。

 自分は…この苦しみを味わった事で、出逢いやチャンスを失った。元々なかったモノが、更に失った。それでも、自分一人だけで楽しめるモノがあって、自分だけが知っていればそれで好かったモノが沢山ある。目立ちたいという願望だけ強くたって、それで嫉妬したりするぐらいが、なんだかんだ幸せだった。ないものねだりなのかもしれないが…それでも好かった。

 だから、この記憶は自分の中にだけ留めて、今回は助ける選択をしなかった。見て見ぬフリ……助けを求める者を見殺しにするのは心苦しかったが、自分が誰かに助けを求めた時、誰も助けてくれなかったから、それを理由に目を逸らす事が出来た。

 それから一年も経たず、そいつは死んだ。自殺との事だ。そいつが死んで以降、なにかが変わったかというと、それだけだった。もし変化があったとしたら、本来結ばれる筈だった者同士がくっ付いた事だろうか?

 胸がチクリと痛む。と同時に、こんなに泣きたくなるなら、やっぱり同じ未来を辿った方がイイんじゃないかな?って。でも…コレは自分だけの問題じゃないから、結局は、そもそも関わらない選択を取った方が正しいのだ。自分だけが知っていればイイ。自分だけが…。


「欲しいなら、決着がつくまでは戦え」と、誰かが言った。敗北を味わう苦しさより、戦ってきた証を残す事、それが後悔を減らす一つだと。たとえ、相手の立場を考えず、自分さえ好かった事だとしても、だ。

 例えば、既婚者だと判明している相手に対して、「ずっと前から好きでした♡」と、想いを伝える事等である。

「人生は一度っきりだから、好きな様に生きろ」という言葉はあるが、それを縦に、相手を傷付けても自分の欲しいモノを、手段選ばずで手に入れようとする馬鹿もいる。後先考える暇があったら、行動に移せ、と。

 物はいい様とは言うが、自分の都合で、綺麗な事を並べ立て、相手に有無を言わせない。

 まともに会話をする事が出来ない……そんな者達と、関わってしまった。


 後悔するなら、欲しいものに対して、全力で当たって砕けろ方式がイイのかもしれない。でも……何処かで、足が竦んでしまう。関わってしまったから、相手を傷付けた、と。相手に直接言われたわけではないが、現状から考えて、そうなのだと。

 傷付けた相手に対して、「好きだ」と、「自分の事を好きになって欲しい」と、行動に移す事は、自分のあの“選択の罪”を受け入れず、逃れようとしているのではないのか?と。

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