3−7 宝の山
シオールにお父さん達が作成したハーブティーを振る舞ったら、すごく喜んでくれて私まで嬉しくなってしまた。シオールさんもお茶の価値観が変わってしまったと、興奮していた。
お父さんがお茶の畑も始めると言っていたし、ハーブを含めてお茶の種などあれば勇者さんに持たせて栽培できるか試してもらってほしい旨の手紙を送っておいた。
泊めてもらうお礼にと手持ちの食材とシオールさんが提供してくれたじゃがいもで肉じゃがを作ったけど、これも美味しいと言ってくれたのがお父さんが誉められているようで嬉しくなった。
「夫がお世話になったお礼と思っていたのに、私がもてなされてしまいました。ありがとうございます」
「泊めてもらうお礼ですから、お風呂まで用意していただいて、こちらこそありがとうございます。あとはそんなに畏まらないでいただけると嬉しいです」
シオールさんが少し困った顔で笑った。
「私達にとってはモモ様は信仰対象、神様のような方ですから、許してください」
「いえいえ、神様って意外に男運がなくて、可愛らしくて、親しみがあるものですよ。ある程度の礼節、普通に友人に接するようにしてくれた方が私は嬉しいです」
なんのことやら、しオールさんは理解ができないように首を傾げていた。
それでも様ではさん付で呼ぶようになってくれたので、少し打ち解けることができたと思う。
「モモさんは夫やショーンに会うためにこちらに? 今はソーズは王坂に出てますし、ショーンも多忙なのと親衛隊の雌が煩いですからね。ソーズが受けではなく絶対に攻めだと解釈不一致なことも言ってきますし」
2人ともやっぱり会えそうにないみたい。
攻めの反対派は守りだと思うのだけど、受けとはどういう解釈なのだろうか?
「2人に会えればというのは、ついでですかね。本命は書物を少し買いたくて」
書物と言った瞬間にシオールさんがにじり寄ってる。どんなジャンル、作者は誰が好き? などの質問攻めあった。
シオールさんの趣味は少し偏っていて、筋肉物であったり男性同士の絡みがある書物が好きらしい。
私自身が見たことないジャンルなのでいまいちイメージが湧かない。
「でしたら、私達夫婦のライブラリを少しご覧になりますか?」
「是非、見てみたいです!」
シオールさんに案内されて地下室へ向かう。なんでも一般家庭にも多くの地下室があり、書物がダメにならないような魔法も発展しているとのことだ。
「やはり魔法も技術もその土地に住み、好きなものが反映されますから、この国で買える紙は品質もよくしかも安いんですよ。古から木を管理する妖精と契約を結んで共存して−−ごめんなさい、これは極秘の内容でした! でもモモさんにならいいですかね」
安易に国家機密を離さないでほしい。私が変な人に命でも狙われたらどうしてくれるんだろうか。
「わぁー! 本が一杯ですね! と、図書館ですか?」
「図書館はもっと凄いですよ。どうぞ、好きにお手に取ってください」
おおお! 気になっていた本の続きの巻がある!
「それは古いですが名作ですよね。読んだことがあるんですか?」
「さくらさんからお借りしているです」
「あの、さくら様が愛読されていたなんて。作者は既に死去していますが、後でその子孫に話をしてもよろしいですか?」
「構わないと思いますけど?」
「さくら様に読まれていたなんて光栄なことですから、その家の者達も喜ぶと思います。それにこれ未完で終わってるんですよね」
「えええええええぇぇ!」
そんな……完結してないだなんて。イケメンのユージンと優しい、サイゲス、そしてルベンダの三角関係がどうなったか結末が見れない? 悲しすぎる。
「申し訳ありません、ネタバレ厳禁でしたね。ただその子供達がリメイク版として完結した物を発行してるんですよ」
リメイク版もしオールさんが所持しているようで、本棚の位置を教えてくれた。
「人はモモさん、エルフの方々と違って寿命が短いですから。でも紡がれ、引き継がれた物もあります。この書物、漫画たちもその一種です」
書物一つ一つにも歴史があるんだ。
「そこのソファなど好きに使ってください」
「ありがとうございます。本、汚さないように綺麗に読まさせていただきますね」
「モモさん、そっちは完結してない方ですが、リメイク版から読まないんですか?」
「完結されてないと知っていても読んでおきたいと思ったんです。どういう風に解釈して新し作品にしたのか知りたくて」
本をソファ側にあるテーブルに積み重ねて、冷えるといけないと膝掛けを借り、ハーブティー、焼き芋を用意して完璧な読書モードへと入る。
「ごゆっくり」
「はい! 少しの間、お邪魔します!」
よーし、眠らないとお父さんに怒られるけど、1日、2日、寝なくても死にはしない。
読んで読んで、読みまくって、気になったのは買って帰ろう。




